2013年度テーマプロジェクト発表会 金賞チームインタビュー

2014年1月4日(土)、神戸大学社会科学系アカデミア館504教室で行われたテーマプロジェクト発表会において、激戦の末、見事優勝を勝ち取られたチームにインタビューを行いました。

金賞

メンバー:小林祐子、庄巧郎、杉浦慎治、隅田伸治、田島繁、橋本裕
(※五十音順、敬称略)

Q1. 準備にはどれくらいかかりましたか?

(小林) 期間としては約5か月間です。インタビューやフィールド調査をたくさん行ったのが特徴だと思いますが、それ以外は基本的に土曜の授業後と金曜の授業後がメインでした。最終発表前の年末年始は、どこのチームもそうかと思いますが、3日間くらい集まって終日作業をしました。最終的には130枚以上もあったスライドを80枚弱にまとめる必要がありましたが、優秀なメンバーのおかげで乗り切ることができました。発表の練習は時間内に収めてちゃんと伝わるよう、直前まで何回も行いました。

(庄) 最初のテーマ設定に相当な期間(1か月以上)をかけました。 最初は、私たちの問題意識は、組織内での活用が難しいと思われている人材、特に発達障害などの困難さを持つ人たちや退職後の高齢者の力をいかに生かすこと ができるか、にありました。
しかし、指導教官の松尾博文教授からその社会的意義を認めていただく一方で、この巨大なテーマについて、経営学からのアプローチで十分な答えが見つけられるかどうかの疑問もあり、最終的には多様な人材をいかに活かすか…という切り口で、オタクの人たち、あるいはオタク文化をどう活用するか、に目を向けることにしました。
このテーマの設定までに紆余曲折があり、だいぶ悩みましたが、これが大事だったようです。松尾博文教授の言われる通り、「この問題を解かないと死んでも死にきれない」ような課題で、しかも解決の糸口が見つかりそうな、興味深いテーマを見つけ出すことが決定的に重要だったらしい、と学びました。ここで、複数のメンバーがオタクアニメを使った商品展開に興味を持っていたというのは一つの運命でした。
結果的には、メンバー全員で論理の道筋(ストーリー)を綿密に確認する中で多くの学びがあり、多様な人材を活かすという点で、当初の問題意識につながりそうなヒントが見えた気がしており、これがとても嬉しいです。

(杉浦) 8月初めのチーム結成から、毎週土曜の昼休みと講義終了後に集まり、リサーチクエスチョンや仮説の議論を進めてきました。9月に市場調査を実施し、10月に専門家にインタビューを実施した後、10月~12月で企業訪問を実施しました。12月に入ってからは、平日の夜も集まるようになり、インタビューの内容を共有したり、進め方を議論したりしました。12月中頃には、インタビューを終えて、最終レポートの作成を開始しました。
中間発表でテーマを変更しました。「本当に自分達が解決しないといけない課題なのか?」という問いに行き詰まり、テーマを変更することになりました。テーマ変更で時間をロスしてしまい、3社以上という企業訪問数をクリアできるか心配しましたが、最終発表までには15社以上の企業にインタビューができ、インタビューを通じて仮説の立証に多くのヒントを頂きました。

(隅田) 約5か月です。私はケースプロジェクト直後、まだぼうっとしていたところに、メンバーの一人からお声掛けをいただき、参加した次第です。もともとスポーツビジネスやコンテンツビジネスに興味を持って入学したので、結成当初から、人材活用とそれらを絡ませられないかといった提案はさせていただきました。概ねテーマ、リサーチクエスチョン、仮説が定まってからも、議論で展開されるホワイトボード全体を眺めては「精緻なプレゼンテーションに仕上がっていっているだろうか」と自問自答しておりましたが、幸い、中間発表で2位に食い込めたところで多少自信が持てたと共に、「どうせやるなら金賞が取れないかなあ」と思うようになりました。最後のインタビューを終えたのが12月20日ごろと遅かったのですが、年末年始はチームで集中することができたと思っています。

(田島) 8月初めにチームを結成後、準備のために、毎週土曜日の授業終了後はほぼ毎回、不定期に平日の夜にメンバーと集まりました。当初、テーマをなににするかを相談しましたが、なかなかまとまらず、一旦テーマは決定したものの、最終的には変更しました。中間発表前から取材を開始し、12月中旬までに十数件取材先を訪問しました。12月末に、スライドはほぼ完成しましたが、年末・年初で最終調整をおこないました。

(橋本) テーマが固まるまでに1か月以上かかってしまいました。最初に想定していたテーマを担当教官の松尾教授から”あまり面白くない。やっても満足の得られる結論はでないと思う“と言われてしまって、そこから、みんなで新しいテーマ探しに悩んでしまいました。結局お互いがやりたいテーマを出し合った結果私が押し切る感じで何とかテーマが決まりました。あとはインタビューを12月中旬までやっていましたが、私はほとんどお役に立てなくて申し訳なかった。インタビューと並行しながらストーリーを固める作業をしましたが、おおまかなストーリーはおもいついても、それを肉付けするのにとても苦労しました。あとは、クリスマスもお正月も返上で資料を作ってプレゼン練習って感じで発表当日まで準備していました。

Q2. 入学から4ヶ月を振り返って、実際のMBAの授業はいかがですか?

(小林) 授業ごとに事前課題、事後課題、最終レポート、とつぎつぎ追われるので、参考資料にまで目を通しておくというような学習はなかなかできていないのが現状です。ですが、MBAならではの考え方やフレームワーク等、何度も出てくるものもあるので、入学前と比較すれば多くのことが身についていると感じます。日常では出会うことのないまったく異なるバックグラウンドを持つクラスメイトが、それぞれに情熱を傾けて仕事や学習に励んでいるので大変刺激になります。また、学んだことが仕事と直結するような内容であることも非常に多く、「働きながら学ぶこと」の価値を大いに感じています。

(庄) 授業は興味深く業務に役立つものが多いです。特に、ケースプロジェクトとテーマプロジェクトは、あらゆる意味で、最も学びが大きいものです。研究対象だけが学びではありません。チームの中の自分の役割や、自分の性格への気づきまで、様々な学びがあります。
また、「考え抜く」ということを先生方は繰り返し強調されますが、このような考える姿勢についても、学びが大きいです。さらに、仲間と切磋琢磨しながら(創発しながら)学びあえることはとても有意義です。一人でできることは本当に限られています。
なお、入学以来一番苦労したのは、テーマプロジェクト終了後の1月です。1月はレポートが14本あり、途中で子供がインフルエンザになったり、最後は私自身が体力的に持たなくなってきたりと、大変でした。実際に最後はあきらめざるを得なくなり、これが今でも残念です。

(杉浦) MBAの授業は、実践で適用できるものが多く、今まで感覚的に感じていた事象に対して、明確な裏づけを与えてくれます。フレームワークの使い方をご教授いただけるのではなく、講義課題の中で必要に応じてフレームワークで説明するという実践的な課題が多いのも特徴的に感じています。カリキュラムが絶妙で、常にぎりぎりの苦しさをキープしています。レポートが提出期限の数分前に出来上がるということもざらで、仕事とMBAを両立するための時間管理を日々鍛えられています。

(隅田) 噂どおり濃厚ですね。毎週、鍛えられている感じがします。日本ではまだまだMBAホルダーとキャリアアップが結び付かない状況かもしれませんが、某教授から「ここで学ぶのは質の高い仕事をするためでもある」旨の話があり、目から鱗の思いがしました。私自身、MBAの授業が日々の様々な業務に好影響を与えてくれていると感じており、むしろ神戸大学の授業が終わるのが怖いくらいです。

(田島) 充実したカリキュラムのもと、一流の教授陣に指導を受け、毎回の授業は刺激的です。グループワークや毎回の授業でMBA生の意見等で気づきもあります。働きながらの通学(朝が早いのも)やレポート等で睡眠不足になり、想像以上にハードですが、学んだことを職場で実践できる機会もあり、自分の「財産」になると感じました。

(橋本) 事前情報なしでMBAに飛び込んでしまったので、入学当時は予習もハードだし、参考図書は山のようにあるしで正直、入学したことをものすごく後悔しました。会議以外でディスカッションも得意ではないので、これもつらかったです。でも、業務と密接している講義が非常に多いし、チームビルディングなどの実践も、職場ですぐに活用できたりすることに気づいてからは中々楽しくなりました。また、普段の業務や身の回りで起こっている企業の動向について、これまでほとんど“裏”を読んで考えることがなかったのですが、MBAに入ってから、なんとなく現象を引き起こす原因みたいなのが少しずつ分かるようになった気がしております。今は、刺激的で意義深い週末の授業がとても充実しております。これから、論文作成が中心で講義が少なくなっていくのがさみしく思えます。

Q3. 発表会の準備で大変だったことは何ですか?優勝の感想と併せてお答え下さい。

(小林) 結論をどうするか、わかったことをどうまとめるか、というところで大いに悩みました。特に、考え方の異なるメンバーが集まり、抽象的なことについてきちんと共通言語で話をするというのは大変難しく、テーマの決まっていたケースプロジェクトと比較しても難度が高いチャレンジであったと感じました。もともとは「人材」や「キャリア」に関するテーマに関心があるメンバーの集まりでしたが、途中で試行錯誤して「オタクアニメ」という、一見キワモノと思われるテーマに変更しました。途中で煮詰まることもありましたが、取材途中で発見した共通点にみんなでワクワクして、このテーマのおかげで最後は楽しみながらやれたと感じています。発表の時、みなさんが熱を持って聞いていただけた空気が今でも忘れられません。優勝は本当にうれしかったですが、発表後、クラスメイトから「良かった、面白かった」と声をかけてもらったのが特にうれしかったです。

(庄) いろいろと苦労もあり、それこそが私たちの成長でもあると思っていますが、「楽しみながら問題を追及していけた」という思いも強く持っています。私たちの研究では、「オタクアニメを使って商品を開発すると組織のモチベーションやクリエイティビティが向上するらしい」とわかりましたが、私たちのチーム自体がそのような状況にありました。いつもと比べて妙に力が湧き出たし、やたらと色んなことを思いついてしまうような気がしました。普段の勉強や仕事では経験したことのない体験でした。
また、私たちの研究ではオタクの力が組織にブレイクスルーをもたらすことがわかりましたが、私たちのチームにも1人オタクの人がいて、この人の発案は最後のブレイクスルーのきっかけとなりました。
このように、私たち自身が身をもって、内発的動機/クリエイティビティ/ブレイクスルーといったオタクパワーの威力を感じました。「いまやオタクはあなどれない」 これは「ダイバーシティ」にも関係しており、今後の組織の在り方について考える上での一つのヒントとなりそうです。

(杉浦) 11月~12月でリサーチクエスチョンや仮説の議論が念入りにできたため、発表会の準備はスムーズに進んだと感じています。当初は、発表会前日は徹夜を覚悟していましたが、夕方くらいには発表資料も完成して、解散することができました。チーム結成当初から、目指せ、金賞!を合言葉にして進めてきましたが、内心は入賞できるかも懐疑的に思っていました。しかし、メンバーと議論を深めて行くうちに入賞も可能ではないかもと思えるようになってきました。発表会の前日に行った発表練習を見ていると、もしかしたら上位も狙えるかもと思えるようになってきました。

(隅田) 大変だったこととしては、探究には終わりがない一方、期限は設定されている中で、各メンバーが追い求めたいベクトルのチームとしての収束化や、モチベーションの継続などでしょうか。私がチームに貢献できることと言えば、過去の営業業務経験による多少の人脈のほか、神戸大学との単位互換制度で後期に入らせていただいた京都大学経営管理大学院における多少の人脈くらいかと思い、そこからも手繰って、いくつかインタビュー先は創らせていただきました。あと毎回、松尾先生が講義中におっしゃるキーワードの中にヒントがあると考え、とりわけ「ケースを大切に」(理論だけに頼ることなく、調査対象数社から何が見えたかをじっくりと考えるという意で捉えておりました)とおっしゃっていた言葉は、研究期間中、ずっと脳裏にあったと思います。 金賞はもちろん大変嬉しいものでしたが、プレゼンテーション終了後に入学同期から共感の声をたくさん頂いたことが何より嬉しく感じました。

(田島) ある取材先でこちらの予想に反する回答をいただき、取材後当惑し、知らない街をさまよい歩いていたことを思い出します。これについて、グループで検討しましたが、他の取材先でも同じようなことが言われており、今回の発表における起承転結の「転」のきっかけとなったことで、このような反対意見の取材も必要であると思いました。
グループでのディスカッションは、土曜日の授業終了後は毎回9時30分くらいまで、平日の夜は11時くらいまでおこなっていました。グループのメンバーと自由に賛成意見、反対意見を発言し、それを毎回少しずつですが、まとめていったことがよかったと思います。ディスカッションにおいてグループメンバーのいろんな意見やインタビューでいろんな教えを聞けたことは、非常に貴重でした。年末、年始でスライドをまとめましたが、スライドの枚数が多く、発表時間切れになるかと思いましたが、お二人の発表がうまく、時間内に終えることができました。

(橋本) みなさん資料準備やら調査やらとても大変そうでしたが、私は申し訳ないぐらい大変なことはなかったです。メンバーで集まる度に私の好みのテーマでずーっとオタ話…ではなくディスカッションできたので、毎回大満足でした。企業訪問は全然協力できなくて、大変というより心残りです。メンバーのみなさんにはご迷惑をおかけしました。大変だったといえば、皆さんが一生懸命企業訪問に回っていただいたので、そこから適当な企業を取捨選択しなくてはいけなかったことでしょうか。十数社の中から4つ程度選ぶ必要があったので、この時はみんなで喧々諤々でした。当然自分が訪問した企業には愛着もありますし。贅沢な苦労ですが。あとは、周囲の期待を裏切らないスライドづくりは少しプレッシャーでした。でも結局自分の好みだけで作ってしまいましたけど。それでもお陰様でプレゼンも評価は悪くなかったみたいで一安心でした。今回本当に苦労もあまりなく楽しんでテーマプロジェクトができた上に優勝までさせてもらって最高にしあわせでした。余り構えずに取り組むことで、色々な部分で余裕ができたことが勝因と言えるかもしれません。

Q4. 今後の抱負をお聞かせ下さい。

(小林) 研究の進め方や論理構築等、大枠についてはだいぶ理解できてきましたので、今後は自分の研究テーマについてとにかくまっすぐに取り組みたいと思います。何か社会に貢献できるような提案が説得力を持ってできるようになることが今後の目標です。

(庄) これから論文に専念しますが、私は、テーマプロジェクトで最初にテーマにしようとした「経営学から見た福祉」に近いことをテーマにするつもりです。社会的意義の大きい研究を深めていきたいです。
一方、オタクに関する研究も私の中ではまだ終わっていません。なぜアニメのようなものが、オタクに限らず組織全体の内発的動機やクリエイティビティ、ひいてはブレイクスルーの源泉となったのか、今も強い関心を抱いています。これを通じた洞察が、ボランティア組織やその他の組織の運営にも関わってくるかもしれません。この点も追求したいと思います。
何とかここまで来ることができたことについて、妻に深く感謝しています。これからも迷惑をかけるかもしれませんが、その分、仕事でも研究でも、意義深いことを追求し、私と家族の人生を輝かせたいです。

(隅田) いよいよ修士論文に入っていきます。テーマプロジェクト、ケースプロジェクトで学んだ見立てや、立証方法をここからは一人で具現化していかなければなりませんが、根気強く頑張ることができたらと思っております。

(田島) テーマプロジェクトでは、いろんなこと、特にリサーチクエスチョン、仮説の設定の仕方、インプリケーションの流れ等について学びました。このテーマプロジェクトで学んだことを今後実務や修士論文の作成に活かしていきたいと考えています。

(橋本) テーマプロジェクトやケースプロジェクトを通じて、インタビューの手法や論理を詰めていく方法など様々なことを学ぶことができました。これをまずは修士論文作成にフルに活かしていこうと考えております。今回のテーマについては、せっかく金賞までとったのでオタクの活用法を実践でもなんとか使えないかは、これからの会社生活で常に頭の片隅に置きつつ業務をこなそうと思っています。

 

優勝チームの皆様、ご協力ありがとうございました。そして、おめでとうございました!