研究科長・学部長挨拶

神戸大学経営学部は,1902年に創立された神戸高等商業学校を起源とし,1949年にわが国最初の経営学部として設置され,1999年には経営学分野でわが国で初めて大学院重点化が完成し,神戸大学大学院経営学研究科となりました。MBAも全国に先駆けて国立大学で初めて1989年に誕生し,2003年に専門職大学院(現代経営学専攻)として再編成され,2019年には30周年を迎えることができました。神戸の地に「学理と実際の融合」を目指して官立の学校が創設されてから,約50年後に経営学部が誕生し,その50年後にMBAが創設され,約100年後に大学院が重点化されたことになります。

過去120年の歴史の中で,神戸大学大学院経営学研究科は日本における経営学研究の最先端を走ってきました。経営学研究および教育に数々のイノベーションをもたらしてきたと自負しておりますが,その中でも最大の成果の一つがMBAの設置とその後の展開です。 神戸大学MBAは,神戸方式とも呼ばれる独自の教育方式を開発し,数多くの社会人を教育し,多くの人材を育成してきました。その3本の柱は,「研究に基礎をおく教育」と「働きながら学ぶ」というコンセプト,そして両者を統合した「プロジェクト方式」という教育方法です。これらを総称して,われわれは「神戸方式」と名付けています。MBA教育の支柱である神戸方式は,30年の歴史を経てさらに洗練進化しつつあります。

神戸大学MBAは,その教育成果を2つの著書にまとめています。ひとつは,25周年を記念にまとめられた『人生を変えるMBA』(有斐閣)で,もうひとつは30周年を記念してまとめられた『プレMBAの知的武装』(中央経済社)です。どちらも神戸大学MBAの長年の教育のエッセンスが詰まっています。 是非,皆さんも,六甲台の地で最先端MBA教育を受けて,日本そして世界の経済界の発展のために尽くしてください。私たち教員はそれを一丸となって支援いたします。

2024年4月1日
神戸大学大学院経営学研究科長・学部長 國部 克彦

MBA専攻長のメッセージ

私が神戸大学MBAに入学したのは2005年4月のことでした。ワクワクと少しの不安とを感じながらガイダンスを受けていたことを、今でも思い出せます。ただ、そのときは、まさか自分がMBA専攻長としてメッセージを書くことになるとは思ってもいませんでした。

当時とくらべると、神戸大学MBAのカリキュラムは大きく変わりました。コア科目とプロジェクトが体系化され、全体的な学習の見通しが立てやすくなっています。しかし、当時からまったく変わっていないこともあります。それは、リサーチベースド・エデュケーションという理念です。

MBAプログラムは企業などで働く人のためのものであり、皆さんは研究するためではなく職場の問題を解決するためにここに来ています。なのに、なぜ私たちは「リサーチ」を強調するのでしょう。それは、リサーチという言葉に象徴される科学的なアプローチを適用すれば、それぞれの学生の個別具体的な問題が、科学コミュニティ全体の問題になるからです。居酒屋トークが研究テーマに化けます。

ですから、神戸大学MBAのプログラムは皆さんがリサーチできるようになることを目指します。コア科目と専門科目で体系的な知識を学び、プロジェクトでその知識を実践することでリサーチの方法を身につけます。教授陣から学ぶだけでなく、MBA生が相互に学びあうことも重要です。もちろん、職場の問題は深刻ですし、授業も過酷です。しかし、学位記を受け取る際には、間違いなく楽しかったと思ってもらえるはずです。ぜひ、リサーチの世界に飛び込んで、全力でそれを楽しんでもらえればと思います。

2024年4月1日
神戸大学大学院MBA専攻長 宮尾 学

MBA教務委員のメッセージ

私自身は2013年度以来、2回目のMBA教務委員です。
11年前も神戸大学のMBAは高い評価を受けていました。その一方で、リサーチベーストエジュケーションが強調されるあまり、「神戸に行くと、エセ学者になる」と批判されることもありました。と言うのも、典型的には修士論文の審査ですが、発表者に対して副査は「先行研究は読んでいるのか?」「仮説導出や研究方法は適切か?」という厳しい質問をしていることが多くありました。そして、それにディフェンスするためにMBA生たちは技術の習得にかなりの努力を投入していました。その後に学者になる訳でもなく、実務で活躍しようとする人たちにとって、これらの技術はあまり有用とは言えません。

そこで、私たちは修士論文について評価基準を変えることにしました。まず、以前の審査基準を紹介すると

  • テーマ選択の妥当性
  • 該当領域に関する既存研究の把握
  • データ及び分析方法の妥当性
  • 論理的で明瞭な記述
  • 理論的もしくは実務的インプリケーション

というものでした。
それを

  • 論文に対して誠実かつ真摯に取り組んでいること。
  • 仕事で抱いた問題意識に関連したテーマを設定していること。
  • 現実に対して意味のある結果と含意を導出していること。
  • その結果と含意を導くプロセスが信頼に足り、説得力があること

に変更しました。

その後の修士論文は、分析の緻密さや、先行研究レビューを多少、犠牲にしても、実務に対してしっかり提言をするような研究が増えています。明白に自社のトップに対する「建議書」というスタイルの論文も出てきました。ビフォーアフターで、論文のクオリティが上がったかどうかまでは言いきれませんが、修了後の実務で、より役立つMBAにはなってきているのではないかと思っています。

さて、これから一年間、教務委員として、神戸大学のMBAが社会のニーズに合ったものになっているか、どうやればもっとよくなるかを考えて参ります。多くの方のご意見を聞きたいので、何かアイデアがある方は、遠慮なく私までお知らせください。

2024年4月1日
神戸大学大学院MBA教務委員 三矢 裕