亀元 護さん
株式会社三菱東京UFJ銀行 勤務
1 . プロフィールをお聞かせ下さい。
2011年度入学の亀元です。私は1999年に大学(経済学部)を卒業後、三菱東京UFJ銀行に入行しました。入行時より一貫して法人部門に所属し、中小企業から大企業の取引担当者、営業企画、本部企画等、法人のお客さまに対して多岐に亘る業務を行ってきました。今は大阪営業本部で大企業のお客様を担当し、日々、お客さまの企業価値向上に向けた活動を継続しています。
2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?
主に3つの動機から神戸大学のMBAを選択しました。
第一の動機はお客様の企業価値向上に向けた活動を行う、正に「言うは易し、行うは難し」です。銀行が得意とする財務やファイナンスの提案だけでは企業価値向上にはどうしても限界があります。そして、自分自身の経験から得た業界知見を活用した提案だけでも不十分です。このような「限界感」を打破するために神戸大学MBAの門を叩き、「経営学発祥の地」である六甲で自分自身を鍛えなおそうと思ったことが入学の第一の動機です。
第二の動機は「働きながら学ぶ」です。どうしても座学では学んだ理論が自分自身に身に付かないと感じていました。学んだことをすぐに活かすことのできることは非常に魅力的でした。入学後、学んだことを実践に活かすと本当によく身に付きます。私自身もあまりにもジャックウェルチの思想を自分自身に投影しすぎたために、同級生から「和製ジャック」と呼ばれるほどになりました。
そして、第三の動機は純粋に「理想の経営」とは何かを知りたいという欲求です。数多の企業が生まれ、消えていく、その中で本当に良い経営とはなにか、その領域に少しでも近づきたいという欲求は偽らざる選択の理由です。
3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。
非常に充実した日々、その一言です。睡眠時間は確かに減ります。しかし、睡眠欲を吹き飛ばす刺激を受けます。私自身は履修に拘りなく、基本的には様々な分野を学んでいます。
さてカリキュラムですが、三品教授の「ゼネラルマネジメント応用研究」でMBA開始の鐘が鳴り始めます。この授業はまさに脳を揺さぶられるという感覚を持ちます。自分の知らない世界がこんなに広く世の中に存在するということを知らしめてくれる授業です。そして、前期は基本理論の授業が多く用意されています。その中でも忽那教授の「アントレプレナーファイナンス」、砂川教授の「ファイナンス」は実務家を招きつつ、金融を活発な議論で身近に感じさせてくれるものです。そして1年次前期の総決算が「コジケン(尊敬の念をこめて)」こと、小島健二教授の「経営戦略応用研究」です。これは正に戦いです。授業で小島教授や同級生と有意義な議論を行うために、事前レポートを書き、授業に臨む必要があります。授業での議論はいつも気付きの連続、自分自身の分析の甘さを思い知らされるものですが、その悔しさが次回のレポートに活きてきます。授業を終え、1回目と最終レポートを見比べると分析の視野が本当に広がったと自分ながらに感じています。
後期も興味深い授業が並びます。松尾(博)教授の「オペレーションズマネジメント応用研究」はケーススタディを通じて数字に反映されたSymptoms(症状、事実)を掴むことの重要性、モノの考え方、ロジックについて授業を通じてご教示いただけます。そして、黄教授の「国際経営」、南教授の「マーケティング応用研究」は顧客との関係構築、価値創造という自分自身の苦手意識持つ分野に対して、その意識を十分に払拭してくれる授業です。また、金井教授の「コーチング」や「ネゴシエーション」といった正に実践型の授業もあり、様々な確度から経営について学ぶことが出来ます。
カリキュラムは非常に体系立って作られています(正に経営を学ぶためのシナリオが用意されているかのように自然と経営全般の知識が身に付きます)。何かをつかめば新たな課題が出てきて、経営を分析していく、そのプロセスで様々な視点を養っていきます。
外部環境を通じた経営戦略立案(ポジショニング)、自社資源をベースに経営戦略を検討するResource-based viewと外部や内部視点をはじめ複眼が身についていきます。独立して学んだことが様々なにリンクしていくダイナミズムで勉強が活きた「知」に昇華していくように感じます。
そしてカリキュラムの最大の特徴はプロジェクト方式です。チームを組んで研究を進めていきます。まず、1年次前期に「ケースプロジェクト応用研究」、1年次後期に「テーマプロジェクト応用研究」が用意されています。半年間をかけて課題に対してチームメンバーで取組む。これまでのメンバーのキャリアの違いから様々な論点が出てくる。そして、議論により弁証法的に高めていく。このダイナミズムは本当にエキサイティングなものです。時にはぶつかりながらも熱い議論を継続していく。自分自身のキャリアから培ったものを搾り出し、融合させていく過程は本当に素晴らしいものです。今はテーマプロジェクトで顧客創発イノベーションを追求しています。その中で理想の経営の一端を垣間見える瞬間があります。本当に良い方式をとっていると思います。また、各授業でもディスカッションやチームプレゼンテーションを行います。個人の「知」には限界があります。「知」を集合させることにより新たな領域を発見させてくれます。このように神戸大MBA全体で教授、同級生全員で「知」を向上させるカリキュラムと言えるでしょう。
4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?
與三野ゼミに所属しています。我々のゼミは極めてダイバーシティに富む陣容です(同級生からは私を含めて「濃いメンバー」と揶揄されております)。金融関係者、弁護士、弁理士、広告代理店、メーカー、本当に様々な人材が集まっています。與三野准教授の専門分野が知財やファイナンス等、多岐に亘ることが主因です。
「制度と文化-組織を動かす見えない力」(佐藤郁也、山田真茂留 日本経済新聞社 2004年9月)を軸に様々な論文について議論を行っています。その中で與三野准教授に導かれながらゼミではまさに「熱い場」。が形成されます。自分自身の問題意識は正しいのか、それは確りと問題を捉えているのかを議論を通じて洗い出してくれます。
私自身はまだまだ、我々は問題意識を高める段階にあり、修士論文の作成はこれからです。良い論文にするためにも様々な視点を今のうちに議論を通じて得ていきたいと考えています。修士論文のテーマですが、入学当初とは全く異なる内容になりそうです。問題意識は入学後の授業や議論を通じてより深くなっていき、修士論文のテーマも変わっていきます。私は仕事柄、ファイナンス中心の研究を志向していましたが、様々な方との議論によりファイナンスに様々な要素を加えて銀行等の金融機関が求められる今後の役割について深く検討を行いたいと考えています。そのために様々な分野の本や論文を読み耽る毎日を今は過ごしています。
5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。
このように非常に充実感のある毎日を送れる要因は同級生との関係にあります。仲が良いだけではなく、時にはプロジェクト研究のライバル、時にはよき共同チームメイトのように「競争」と「協調」の関係を持ちます。お互いに切磋琢磨しながら、日本を代表する教授陣と活気ある講義の「場」を創り出しています。授業は事前学習がなくても入れますが、得るものが極端に減ってしまいます。また、同級生に価値のないプレゼンテーションは出来ないため、皆で知恵を出し合い、議論を尽くします。そのようなダイナミズムの中で自分自身の成長が実現できる、貴重な「場」を同級生と共に醸成しています。
仕事との両立も大事です。働きながら学ぶ(By the Job Training)ですので仕事に活きるようにしなければなりません。絶えず、学んだことを自分に置き換えて考えることの出来る環境は非常に有意義です。しかし、働きながら学ぶことは苦しいことも事実です。その苦しさの中でタイムマネジメント、効率的な業務を実践する技を磨くことも出来ました。人間、厳しい状況に入れば勝手に成長するものだと、前向きに捉えています。
尚、金曜日は梅田、土曜日は六甲での授業となります。梅田は職場から近いこともあり、非常に有難いです。そして、六甲は深く思考するのに非常に良い場所だと思います。朝、学校への坂道を歩きながら、本日の議論を想定し一日に備えます。夜、神戸の夜景を臨みながら、授業の振り返りと今後の活かし方を議論し、同級生と坂道を下る。思考するには最適な場所と言えるでしょう。
6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。
私自身は神戸大学MBAで学んだ全てをキャリアに活かしたいと考えています。短期的には今の職場でお客さまに対して如何に企業価値を向上させるかということを様々な切り口で提案していきたい。そして、お客さまと共に成長をしていきたい。そして中長期的には銀行という組織の中で様々な人たちと価値提供に向けてイノベーションを起こしていきたいと考えています。銀行に求められている役割はまだまだ大きい。その役割を十分に全うできるだけの組織にすべく、自分自身が牽引、貢献していきたいと考えています。
7.残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。
神戸大学MBAの授業も折返し地点を迎えようとしています。引続き、勉強に没頭し、同級生と熱い議論を行い、成長をしていきたいと考えています。そして、修士論文はとことん、自分自身と戦い、究めて行きたいと考えています。この充実した日々を無駄にすることなく、努力を継続していきます。
神戸大MBAでの日々は一人の努力では決して送れません。教授陣の温かくも厳しいご指導、同級生との切磋琢磨は勿論ですが、職場の皆さんの協力は非常に重要になります。金曜日の夜に快く送り出してくれる上司、同僚、部下には本当に感謝しています。
最後に、家族のバックアップなくしては語れません。5歳と1歳の娘を確り面倒見てくれる妻の献身には本当に頭が下がります。私自身には決して出来ないことを彼女は何の不平も言わずにやってくれます。また、5歳の娘は土曜日の通学前に「頑張ってきて!」の一言で送り出してくれます。家族の支えが学生生活の源です。
今後も職場、家族の協力に恥じぬよう、引続き精一杯走り続けます。