岡本 哲也さん

三井住友銀行 勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

2011年度に入学しました岡本哲也と申します。1989年に大学を卒業し、三井住友銀行(当時は三井銀行)に入行。人事企画部で一時期、新人の採用業務に携わった他は、ほぼ一貫して法人営業部門で中小企業から大企業まで幅広く融資取引を担当してきました。新規の融資はもちろん、資金の運用、貿易取引の資金決済、海外進出の支援、事業承継など、顧客企業からは幅広いご相談があり、これらに対応する日々を過ごしています。23年間の勤務で、合計8回の転勤を経験しましたが、行く先々で業種も企業規模も違う様々なお客様と深くお付き合いできるのが、銀行員の醍醐味だと思います。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

まずMBAを志したのは、顧客企業へのコンサルテーション能力を高めたい、という思いからでした。景気低迷が長引く中、経営上の課題・問題を抱える企業は少なくありません。少しでも顧客企業のお手伝いをしたいという思いで顧客企業と接するうちに、中期経営計画に対する助言や、検証に携わる機会も増えてきました。しかし資金繰りなどに関する財務なアドバイスは得意でも、販売戦略や生産管理、組織や人事なども知らなければ、トータル的な絵は描けません。ヒト・モノ・カネのうち、カネの部分しか知らないようでは、全体最適を実現できる計画を語れないことを痛感しました。また自身も組織の運営や、若い部下や後輩を指導・育成していくことに携わる年齢になり、マネジメント能力の向上が必要になってきました。

そこで経営・マネジメントについて働きながら学ぶ場所がないかと考え、神戸大学のMBAを選択しました。神戸大学の経営学部は歴史と伝統があり、日本のMBA教育の草分け的存在です。実務家でも知っている高名な先生方がたくさんいらっしゃいますし、数多くの卒業生が各業界で活躍しています。時間割も金曜日の夜と土曜日の終日の講義で、平日の昼間は仕事を休めない身としては、魅力的でした。また卒業の要件に専門職学位論文を課しているということも、単にビジネススキルやノウハウの切り売りをしているところとは違う、と感じました。逆に負荷が高く覚悟も必要なわけですが、自分の実務の経験や持論をアカデミックな研究の世界に持ち込むことで、何か化学反応のようなものを起こして自らに還元できる抜群の環境ではないか、と思いました。

受験を検討していたある日、仕事帰りの電車の中で、偶然にも金井壽宏教授が神戸大学のMBAの学生らしき社会人の方2名とモチベーションについて議論をしながら座っておられるのと向かい合わせになったことがありました。その時の社会人の方の活き活きとした姿や金井教授の熱心なご指導の様子を目の当たりにして、私もかくありたいと受験の決意を固くしました。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

とにかくタフの一言です。働きながらなので当たり前ですが。卒業まで1年半の間で終了できるということは、それだけ密なカリキュラムになっているということです。

通常、金曜日に2コマ(18:20~21:30)、土曜日は5-6コマ(8:50~20:20)の講義があります。講義は座学に終わらず、ほとんどが双方向でグループ討議もあります。提出が必要な事前・事後の課題があり、事前に読んでおくべきたくさんの本がシラバスに指定されています。平日は仕事が終わってから、帰り道のファーストフードなどで、その週の金曜・土曜の講義に向けて教科書を読んだり課題レポートを書いたりしています。日曜日はたいてい、大きめの課題レポートを作成したり、後述するプロジェクト研究の発表に備えてグループで集まって準備(ケース対象企業への取材や、発表原稿の作成)をしたりしています。

前期までのところで印象深い講義を挙げるとすると、入学と同時に始まった三品和広教授の「ゼネラルマネジメント応用研究」は大変印象深いものでした。ハーバードビジネススクールでも教壇に立っておられた先生は、私たちに次々と質問のシャワーを浴びせ、発言を促します。その過程で私たちは自然と、マネジメントにおいて自分の頭で考え決断を下すことがいかに重要であるか、に気づかされます。講義の内容は毎年様々なようですが、今年は「戦略暴走」というケースブックを使用して、過去の様々な失敗事例を題材に、それらを評論家的に語るのではなく、なぜそうなったのか、自分ならどうするか、いかに暴走を回避するのか、他に代替案は無かったのかを、教室全体で考え、議論を深めました。

その他、砂川伸幸教授の「ファイナンス応用研究」や、音川和久教授の「会計制度応用研究」などは、銀行員として大変示唆に富む内容でした。もっとも、他のどの講義も非常に興味深いものばかりで、一瞬も気が抜けません。現在は後期に入り、松尾博文教授の「オペレーションマネジメント応用研究」、三矢裕教授の「マネジメントコントロール応用研究」などを勉強しています。

神戸大学には通常の講義以外に、「プロジェクト方式」という独自の必修科目があります。前期には「ケースプロジェクト応用研究」、後期には「テーマプロジェクト応用研究」という2科目があり、今年の場合、前期の「ケースプロジェクト応用研究」は「displacement(置き換え)」という題目が与えられ、69名の同級生が13のグループに分かれ、「ゲームのルールを変えて、トンビが油揚げをさらうように、いつの間にかライバルを追い抜いてトップに躍り出た企業」を見つけ出して、研究発表する、というものでした。ケース対象企業を探し出すセンス、対象企業の経営者へのインタビューを含めた調査、なぜそのようなことが可能となったのかの存在証明のための多角的な分析、などを行い、審査員の教授陣の前でプレゼンを行いました。8月に行われた発表の前日は、深夜までメンバーの自宅にお邪魔し、パワーポイント資料の最終仕上げとプレゼンの練習を行いました。

4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

現在、國部克彦教授のゼミに所属しています。先生のご専門は環境会計やCSR(企業の社会的責任)です。私の関心はこれからのメインバンクが果たすべき使命や役割にあり、これを掘り下げて研究テーマにしたいと考え、準備を進めているところです。銀行は一時期、貸し渋りや貸し剥がしの批判を浴びましたが、これからも経済活動の黒子として世の中の役に立つ存在であり続けたいと考えながら、日々業務に邁進しており、そのことがこれから研究につながっていけばと思っています。

ゼミは8月から始まったばかりですが、博識かつ教養豊かでユーモアに満ちた先生の楽しいご指導のもと、若い2人のティーチング・アシスタントの方から様々なサジェスチョンも頂きながら、他の13名の同級生とともに、毎回、各自の発表とそれに対する知的刺激に溢れるディスカッションを繰り返しています。先生からは毎回、「研究は単に個人の興味にとどまらず、社会に役立つ意義のあるものでなくてはならない」、「その分野のフロント(最前線)に立て」との叱咤激励を受け、果たして自分がどのような学位論文を書けるのか、まだ模索の状態ですが、1年後を展望して、今からわくわくしています。来年3月には論文のプレリサーチ発表を、ゼミ合宿(比叡山を予定)で行う計画もしています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

入学後、業界・職種・年齢・性別を超えた69名の同級生と苦楽をともに過ごす日々は、単なる異業種交流会や勉強会などでは決して味わえない濃密なものです。優秀でタフ、かつモチベーションが高い方ばかりなので、普段の業務のお話などを聞くと本当に勉強させられる気づきがたくさんあります。例えば普段はライバル関係にある他の金融機関の人たちとも、同じ学び舎の同級生として業務を離れてフランクに様々な意見交換ができることは大変貴重です。また時として講義前夜は、レポートが重なると徹夜に近い状態になりますが、深夜のチャットなどで、みんなで励まし合いながら乗り切っています。

他大学のMBAのお話を聞いていると神戸大学はやや年齢層が高いのではないかと思いますが、その分キャリアを積んだ経験豊かな大人のMBAなのだと感じます。例えばイノベーションや技術経営(MOT)、オペレーションマネジメントのような講義ではメーカーの方が、ファイナンスや財務会計系の講義では金融機関の方が、それぞれ議論をリードしながら、他の人たちにも知識を還元していくことで、お互いに助け合って勉強を進めていくことができるのも、経験豊富な人の多い神戸大学のMBAならではだと思います。

その我々に応えてくださる先生方も猛者が多く、例えば小島健司教授の「経営戦略応用研究」は、レポート分量の多さが圧倒的で、1回のレポートが優に100ページくらいになります。10月下旬の個人レポート提出に向けて、今日もあまり寝ていない人がいるのではないでしょうか(私もその一人ですが・・・)。
仕事との両立は本当に大変で、タイムマネジメント能力が問われます。隙間時間にも教科書や先行研究を読む習慣がついていきます。電車の中でもレポートのアイデアを考えて駅を乗り過ごすことも。自らが選んだことなので最後までやり切る覚悟です。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

現在MBAで学んでいることを職場での業務に活かすことで、実務と理論のバランス感覚を持ったリーダーとして、組織を統括していく中核人材になりたいと思っています。

具体的な活用としては、第一に、コンサルティング業務の立場から、取引先企業が抱えている経営上の様々な課題の解決に活かすこと。第二に、左記を通じて銀行の収益向上、新資本規制に耐え得る財務体質の構築に貢献すること。第三に、自身の経験やノウハウを、若手行員に日常業務を通じて還元し、それにより次代を担う中核人材の育成に活かすこと、と考えています。特に20代の若手の即戦力化が喫緊の課題となっており、現場の実践教育に役立てたいと思います。

7.残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

1年半の学生生活のうち、早くも3分の1が過ぎましたが、嵐の中を駆け抜けているようでした。このあとは通常の講義以外に、テーマプロジェクト応用研究、論文の執筆と、大きな山がまだまだ続きます。同級生たちと助け合い、励まし合って、先生方のご指導のもと、少しでも高いレベルを目指して充実した日々を過ごせるよう、頑張りたいと思います。

またワーク・ライフ・スタディ・バランスの維持には家族の協力が欠かせません。何の文句も言わずに毎週末、学校へ送り出してくれる妻や子供に対する感謝の念を忘れないようにしたいといつも思っています。