木村 亘志さん

日本新薬株式会社  勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

2010年度入学の木村亘志です。1999年に大学院修了後(工学系)、日本新薬株式会社に入社しました。当初は研究員として医薬品の開発に携わりましたが、4年前から事業企画部の一員として海外企業との提携の企画とその推進に携わっています。現在は、アジアや中東の企業との提携プロジェクトを担当しています。

医薬品に関する法律や規制は国ごとに異なります。信頼関係を築きコミュニケーションを行うには、文化の違いを理解することも必要です。それらの違いを乗り越え、自社の医薬品がそれぞれの国で一日でも早く上市し、一人でも多くの患者さんの役に立つにはどうすればよいか、そのような気持ちで業務に取り組んでいます。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

業務において海外企業との提携を企画する際、市場の検討や事業価値の評価が必要になります。同時に、プロジェクトの成功に向けて海外企業と交渉し、契約を締結する必要があります。これらの業務をスムーズに、そして確実に進めるためには、社内各部門の方々に相談しながら、一緒になってプロジェクトを進めることになります。その過程で、業務に必要な知識やスキルを身につけ、また人間関係を構築していくことが大切だと考えています。

いくつかのプロジェクトを経験させてもらった頃、担当しているプロジェクトを実務レベルでしか捉えられていないことに気づき、自分の担当しているプロジェクトの企業戦略における位置づけを明確にし、その成功が自社にとってどのような成長をもたらすのかを理解したいと思うようになりました。そのためには、ビジネス全体を学ぶ必要があるのではないかと思いMBAへの進学を考えはじめました。業務との両立ができるか迷っていたとき、上司に背中を押してもらい進学を決断しました。今でも上司や周囲の方々に応援して頂いていることは、業務と勉強を両立する上でとても励みになっているとともに、大変感謝しています。

さて、神戸大学のMBAに進学した理由は、自宅から通学が可能であること、金曜日(夜)と土曜日の通学のみで修了が可能であり業務への影響が少ないと考えたこと等があげられます。中でも、プロジェクト方式での教育に魅力を感じました。この教育は、入学してすぐに「ケースプロジェクト研究」として始まり8月まで続きます。その後、新たに「テーマプロジェクト研究」が始まり翌年の1月まで続きます。いずれも数人でグループを構成し、半年近く一緒に研究活動を行います。企業や団体を訪問してインタビューを行い研究を進めるのですが、私を含めメンバーの多くは「経営学」に触れたことがなく、経営学の研究といってもよくわかりませんでした。それでもチームビルディングを通して、力をあわせていくつかのマイルストーンをクリアし、最後に研究成果を発表します。そうする中で、経営学における研究とは何か、どのように取り組めば良いのか、少しずつではありますが、体を通して学ぶことができたように思います。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

神戸大学のMBAコースは1年半で修了できるように、また最後の半年は修士論文の研究に注力できるように設計されています。1年目は、授業の課題やケースプロジェクト研究やテーマプロジェクト研究に追われます。正月以外の土曜日に休みはありませんので、課題がない週はほとんどありません。2年目に入り、授業の課題に追われることはなくなりましたが、その分、修士論文の完成に向けて自己管理が必要になります。毎週目標を決めて、修士論文に取り組まなければ提出に間に合わなくなりますので、今は、土曜日に行われるゼミをペースメーカーにしながら、修士論文の研究や作成に重点をおいています。

1週間のスケジュールですが、業務については、入学前とほとんど変わることなく取り組めています。就業後に可能な限り時間をとり、修士論文のため、先行研究を読んだり、データの収集・解析をしたり、またインタビューの依頼や実施をしたり、といった作業をすすめています。その過程で、何か自分の研究につかえる切り口はないかと、1年目の授業の教科書を読み返すことも多くありますし、また、得られた知見を業務に反映させることができるかについても考えています。

4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

私は原田ゼミに所属し、14名のゼミ生と共に原田教授に師事しています。原田教授は、MBAの授業では現代経営学演習(戦略マネジメント)を担当されており、ゼミ生の多くは、経営戦略や組織・技術マネジメントに興味を持っているように思います。

ゼミでは、自らの問題意識を明確にし、その問題意識に関連する理論(いわゆるフレームワークやモデル)を調査・選択することをまず学びます。その後、自分の選んだ理論に基づいて仮説を立て、データを収集・統計解析を行い仮説を検証します。最後に、得られた結果から経営学的に意味のあるインプリケーション(含意)を導き出すことになります。研究の基本姿勢として「理論なき計測は、意味がない」という原田教授の言葉が印象に残っています。

ゼミで大切なことは、同じゼミ生の発表を聞き、互いにコメントを出し合いながら、研究を高め合っていくことです。これは当たり前のように聞こえるのですが、異なる業種のゼミ生の研究は難しく、発表を理解するのが精一杯で、なかなかコメントにまで至りません。しかし、ゼミ生の発表で、仮説とは逆の結果が得られて教室が爆笑に包まれたり、既存の研究を超える結果が発表されて拍手が起きたりと、全員が積極的に参加しています。

私は、「企業間の提携戦略」をテーマとした研究を行っており、修士論文には、提携実績を数多く積んだ社内外の方々へのインタビューも組み込む予定です。ここで役に立っているのが、テーマプロジェクト研究での経験です。原田教授から指導頂いた方針に則ってインタビューを行うのですが、一見ばらばらに見えるインタビュー結果を分析する作業は、テーマプロジェクト研究で行った作業と同じです。その時になって改めて、神戸大学のMBAプログラムはよく設計されていると感じました。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

1年目は金曜日(夜)と土曜日の授業を履修しました。経営学は企業活動と直結していますので、自分の所属する業界・会社・組織を頭におきながら授業に臨みました。そのため、経営学を学ぶとともに、自分や自社、それを取り巻く環境についても理解を深めることができたように思います。

無駄な授業は一つもなく、全ての授業が自分の経験を経営学の観点から振り返る良い機会になりました。ここでは、神戸大学MBAの特徴の一つであるグループワークに焦点をあて、特に印象に残っているグループワークとなった、小島教授の「経営戦略応用研究」と松尾(博)教授の「テーマプロジェクト研究」を紹介をしたいと思います。

まず、小島教授の経営戦略応用研究では、2週間に一度、50枚以上のレポートを、計5本提出します。寝不足になりながら締め切りに追われる、身心ともに厳しい授業です。授業では小島教授が、いくつかの企業の公表されている中期経営計画を分析し、「この企業の戦略資産は何か?」「この経営計画は成長投資となっているか?」と厳しく学生に問われます。授業終了後はグループでレポート課題に取り組みます。はじめの頃は企業分析が中心ですが、中盤以降は企業分析を前提に、買収戦略の立案が中心になります。土曜日とメールだけでは意見がまとまらず、何度か就業後に大阪駅に集まりディスカッションを行いました。最後は各自でレポートを作成するのですが、真夜中にも関わらず、メールで激励し合いました。全員で必死に取り組んだことによって、乗り越えられたと思います。

松尾(博)教授のテーマプロジェクト研究では、3つ以上のケースを選定し、インタビューを含む調査を行います。私たちはNPO法人に焦点をあて、組織の在り方と成功要因について研究を行いました。クリスマスイブにもかかわらず、就業後にNPO法人を訪問、インタビューを行い、次の日も大阪駅に集まってディスカッションを行いました。それでも、最終発表の直前まで意見がまとまらず、結局スカイプを利用して朝の4時までかかって発表資料を完成させたのを覚えています。松尾(博)教授の「ケースに語らせる」という言葉にしがみつき、インタビューの詳細を表現することを心がけました。中間発表の結果があまり良くありませんでしたので、最終発表ではなんとか上位に食い込みたいと、全員が全力で取り組んだのを覚えています。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

MBAへの進学を考えたのは、自分の携わっているプロジェクトを企業戦略の視点から振り返りたいと考えたことでした。この気持ちは今も変わっておらず、修士論文においても、業務と関係のある「企業間の提携戦略」について研究を行っています。今後は、大学で学んだことを最大限活かすべく、今まで同様、海外企業との提携を中心とする業務に携わるとともに、より広い視野と多角的な視点をもってプロジェクトに取り組んでいきたいと思います。

7.残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

先日、修士論文の提出期限が発表されました。残りの学生生活は、原田教授の指導を受けながら、自らの研究をまとめていくことに専念したいと思います。また、学生生活が終わると大学で知り合った多くの友人とも簡単には会えなくなりますので、お互いの研究の話や将来の夢を大いに語り合いたいと思います。

最後になりますが、仕事をしながらも大学で学ぶことができるのは、会社の方々と家族の支援があってのことです。この場を借りて感謝申し上げます。