岡原 貞一郎さん

株式会社竹中工務店勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

2010年度入学の岡原貞一郎です。1997年大学卒業後、株式会社竹中工務店へ入社。事務系社員として、新社員研修後、資材購買担当、作業所事務担当を経て、現在、大阪本店人事部能力開発グループに所属しております。主な仕事内容は若手社員の人材育成や研修企画・運営、人材情報把握システムの運用や評価業務を担当しております。人事経験は4年目となります。

特に職能部門からの教育ニーズのヒアリングや部門内教育の支援を行い、若手社員(建築施工系・事務系・設備系社員)の職能別研修の企画・運営や教育体系の見直しを行っています。建築の知識は幅広くかつ奥深いため、技術の伝承を確実に行い、今後の竹中工務店を支える若手社員が早く一人立ちできるよう、今後の成長へのきっかけづくりができればと想い、日々取り組んでいます。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

MBAを目指したきっかけは、建設業界は激変の時期を迎え、危機感を感じる中、その環境に適応できる変革の必要性を感じ、まず自分が会社を変革できる能力を持つ必要性があると感じたからです。そこで、社員の人材育成の背景にある理論的な知識を身につけ、実務面で活かすことでより効果的な人材育成を行いたいと考え、その想いとさらなる自己研鑽のため、自費通学を決意しました。また、神戸大学MBA金井ゼミの卒業生だった他社の人材開発担当者から、勧められたことも大きなきっかけとなりました。

神戸大学のMBAの選択理由については、3つあります。一つめは、働きながら通学できること。二つめは、経営学や人事・組織で著名な教授陣が多数在籍されていたことです。特に今後の建設業のあり方、ビジネスモデルに不安がある中、その環境に適応できる経営組織や人的資源管理、人材育成についての課題を抱えていたため、建設業界で勝ち残るためのキャリア形成や人材育成について研究したいと考えていました。

三つめは、次に、BJL「By the Job Learning」と「プロジェクト方式」をベースとした、実践型研究のカリキュラムとなっていたためです。「BJL」は、知識や理論を伝達されるのみの授業ではなく、実際の仕事で現実抱えている課題と結びつけ考えさせる授業となっています。そして、「プロジェクト方式」は、研究に基礎をおいた「research-based education」の一環で、社会人学生の経験や意見を交換し合いながら、テーマを設定し、各企業へリサーチも行い、自ら問題解決を図るプロセスを踏み、追及できるカリキュラムとなっています。
後から感じたことですが、MBAのカリキュラムでは修士論文の作成も非常に重要だと感じています。MBAの授業で理論を学び、教授指導の下、実務経験を持った他の社会人学生と議論し合うことで、理論と実践を組み合わせ、それを修士論文として体系立てることで、会社へ持ち帰り、実践できるのではと考えています。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

私は、金曜日の夜と土曜日の授業を現在履修しています。金曜日の夜は新しく移転された神戸大学梅田インテリジェントラボラトリにて、18時20分から21時30分まで講義、土曜日は8時50分から18時30分、6限まである場合は20時20分まで講義に出席しています。昼休みの時間や授業終了後の時間を利用して、「テーマプロジェクト研究」でのチームグループ討議のため、自ら設定したテーマに関する仮説やリサーチクエスチョン、課題などについて活発な意見交換を行っています。平日の夜も、常にメールが飛び交っている状態で、メールでのやりとりでも活発な議論を繰り広げています。特にレポート作成のため、深夜まで勉強していると、心が折れてしまいがちですが、仲間からのメールでたくさん勇気づけられました。

金曜日の夜や土曜日が一日授業となるため、できる限り業務に支障がないように工夫しています。平日は夜あるいは朝にできる限り時間をとり、講義での必読図書を読み、事前課題などをこなして、次の授業に備えています。ただ、業務が忙しくなり、残業が続くと時間が取れなくなることもありました。特にシラバスにもあるように各講義の必読図書、事前課題にはかなりの時間を費やします。
日曜日はできる限り家族の時間がとれるよう努力していますが、仕事が忙しくなると、平日の夜に勉強時間が取れなくなり、日曜日も課題をこなす勉強時間にあてているのが現状です。家族にも協力・理解してもらい、本当に感謝しています。

特に前期において印象に残った授業は、三品和広教授のゼネラルマネジメント応用研究です。ハーバードビジネススクールで教鞭をとられた三品教授が、本場のMBAでの授業方法で進められます。受講者一人ひとりの名前と会社名、経歴など頭にインプットされ、講義内容に合わせ、機知に富んだ質問が鋭く飛んできます。自信のない時は顔が伏せがちとなり、緊張してしまいますが、経営者しての視点や感性について多くのことを学ぶことができました。

あと、プロジェクト方式の一つであるケースプロジェクト研究です。一つのテーマが与えられ、自らテーマに沿った企業を設定し、テーマに沿った仮説を立案し、検証しながら、チームの総合力で解決し、最終発表へとつなげていくカリキュラムです。入学時点のオリエンテーションでチーム分けがされますが、そのチームは今後のMBA生活や卒業後も続く貴重な人脈が築けたと思っています。そのチームメンバーは業界や職種、年齢も全く異なり、メンバーの背景が異なる中、議論していくため、時にはぶつかることもありますが、チームが一つとなって取り組み、最終発表を終えた時の充実感は格別です。自分でいうのも何ですが、知識や視野が広がり成長できたと実感しています。

4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

私が所属しているのは、平野(光)ゼミです。ゼミはまだスタートしたばかりですが、修士論文作成に向けて自身の研究したいテーマと問題意識について報告し、設定されたテーマに基づき平野教授から指定された参照すべき論文を全員で輪読し、批判的なコメントを整理したレポートを元に議論しています。

平野ゼミでは「知的体育会系」と「理論と実践の融合」をゼミのモットーとして掲げられ、レポート報告についての平野教授やTA(Teaching Assistant)からの議論やアドバイスは、フォーマルな理論と現実のマネジメントの実践のかけ橋をかけるように、理論と実践的なケースを行き来しながら進められ、頭でも理解しやすく、ゼミ生の発言も活発になっています。

私は、民間企業で人事部長のご経験のある平野光俊教授に戦略連動型の人的資源管理や人材育成についてご指導頂き、他社や他業界の事例なども研究し、激変する環境変化に対応できるキャリア形成やコア人材育成について研究したいと考えています。同じゼミの他のメンバーは自律型人材、ダイバーシティー、モチベーション、経営幹部育成などをテーマにされています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

入学してから振返った感想としては、まわりの同級生の意識レベル・質の高さです。同級生にはすでに経営者だったり、世界や日本を代表する企業に在席する方もたくさんいて、最前線での生の声を聞くことができます。そして様々な授業で、グループ討議や発表、グループ課題で議論・発言をする機会が多々あり、個人の強みを生かした発言やプレゼン能力の高さ、視野の広さなど毎回の授業の中で新たな気づきや驚きがたくさんあります。神戸大学MBA以外でこの刺激の中で自身を磨けることはないと自分を奮い立たせ、積極的に取り組むようにしています。

また、各業界において将来活躍される同級生と苦学を共にすることで、大きく人脈を広げられたと思っています。特に小島健司教授の経営戦略応用研究(通称:コジケン)のレポート作成では、毎日、ほとんど寝ていない状態でまとめ、完成させました。メール送信日時を見た、他のメンバーからは、いつ寝ているのか、大丈夫かと心配をされるほどでした。同級生も同様に苦労した経験を通じて授業が終わると、打ち上げでは大学の話のみならず、個人的な話や仕事の話も相談できるほど、信頼関係が自然と生まれたとひしひしと感じています。このチームでの活動は助け支え合うことの大切さを身を持って感じました。

その他の授業でも課題、レポート、必読図書の読み込みの大波を乗り越えたと思っても、すぐ次の大波が押し寄せてきて、毎回それを必死に何とか乗り越えている状態です。もしかしたら、卒業までプロサーファーのように難なく乗り越えられる事はないかもしれません。

このMBAで自分自身で何を学ぶべきかは、自身の持つ環境や背景からも大きく異なります。その中で、自分自身が研究計画書に最初に掲げた「MBAで何を学びたいのか」「何故MBAで学ぶのか」という目標を明確にしないと途中で流されてしまいます。このチャンスを活かすも殺すも自分次第ではないでしょうか?目的を明確にした上でやりきるという強い使命感を持ち続けることが重要だと感じました。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

私の人生での大きな目標は、社内外を問わず、何事にも影響力のある人間になりたいと考えています。今後のキャリアプランは、短期的には、人材マネジメントに関する理論を深め、より高いレベルでの人材育成担当者となり、人事部門全体を把握できる人材へと成長したいと考えていますが、将来的には、竹中工務店において最前線である作業所と人材戦略を熟知した経営専門性を有する人材育成のプロフェッショナルとして経営の中枢を担う人材となり、竹中工務店の事業拡大に貢献したいと考えています。

授業の中でいろんな教授もおっしゃっていますが、同級生では、神戸大学のMBAの方は学位を取得して、転職を考えているケースは少ないように感じています。それよりも現状の仕事における課題をMBAで学んだ理論を現業に活かし、解決の道を探ることで、自社に持ち帰り、貢献したいというキャリアプランを持たれている方が多いと感じています。

7.残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

あっという間に、半年が過ぎてしまいましたが、今までの人生の中でも一番充実した半年だったと感じています。これからゼミでの討論でもどんどん積極的に発言して貢献したいと考えていますし、ゼミ合宿・懇親会などを企画し、より議論しやすい環境作りにも心がけ、サーバントリーダーとして貢献したいと考えています。

残りの1年間においても会社と大学の授業とのバランスを取りながら、後悔することなく、最後のゴールまで駆け抜けていきたいと思います。

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