坪井 淳さん

トーマツコンサルティング株式会社勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

大学卒業後、化学メーカーに入社しました。本社で販売管理および人事業務を、工場で経理、総務、企画業務を各々経験した後、人事領域での専門性を磨きたいと考え、現在の会社に転職しました。

現在はクライアント企業の人事制度の設計支援、コーポレート・ガバナンス体制の構築支援、各種研修やセミナー講師等のコンサルティング業務に従事しています。神戸大MBAコースには、昨年(2006年)の春に入学しました。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

現在の会社に転職した直後、周囲の同僚の能力レベルの高さと向上心の強さに驚かされました。好奇心旺盛で勉強熱心、成長欲求が高く自己投資を惜しまない同僚との出会いは、これまで経験したことのないカルチャーショックでした。「今までの社会人人生で自分は何一つ勉強してこなかった。このままの人生が続くと、数年後には大変なことになる。」という強い危機感を持ったことを今でもよく覚えています。今から思うと、このときのショックが「もっと勉強したい」という気持ちに火を点けてくれたのだと思います。「自己の専門性を高めるには、同時に経営全般に精通する必要がある」「経営について体系的に整理して勉強したい」「実践の場で知り得たことを理論的に整理したい」と考え、MBAの取得を決心しました。

数ある大学院の中で、神戸大学の社会人MBAコースを選択した理由は3点あります。1つ目は私が求めていた「理論と実践のバランス」の取れた大学院であったことです。私の場合は、仕事柄、実務的な経営のセオリーに触れる機会は多いのですが、そこで得たものはあくまでも経験知に過ぎません。それを理論的に整理したいという思いがありました。理論と実践の融合を目指す神戸大MBAは絶好の環境だと考えました。2点目は平日夜の授業を淀屋橋のサテライト・キャンパスで受講できる点です。たまたまオフィスが淀屋橋にある私にとっては、徒歩5分で授業に参加できる環境はこの上なく魅力的なものでした。そして3点目は修士論文が義務付けられている点です。修士論文の執筆は実践の場で知りえたことを理論的に整理する格好の機会だと考えたからです。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

1年目には平日夜や土曜日の授業を履修しましたが、2年目に入った現在は、履修している授業は毎週土曜日のゼミナールのみです。この様に書くと授業の負担はたいしたことないかのように思われるかもしれませんが、1年目、2年目とも日々の生活は入学前の想像を絶するハードなものです。

この原稿を執筆している6月上旬は、修士論文の作成の真只中にあります。朝夕の通勤時間では眠い目をこすり研究に関する先行文献を読み漁り、自宅に戻ってからは論文の構成や論理展開を思考して寝不足に陥る日々が続いています。私の場合はまもなく実証研究のためのインタビューやアンケートが始まりますので、調査にご協力いただく企業の方々へのコンタクトや調査の準備も同時並行で進めています。仕事柄出張が多く、移動が多いので、「思うようにいかない時間をコントロールしつつ、いかに細切れ時間を上手く使いながらその日にこなすべきことをやり遂げるか」がMBA生活を上手く過すためのポイントになっています。

ハードシップという点では、1年目の前期は2年目の現在に負けず劣らず過酷な日々を過しました。中でも、神戸大MBAの名物授業である小島健司教授の経営戦略応用研究Ⅰ・Ⅱは、2週間に一度、数十頁にわたるレポートを書き続けるという過酷な授業です。この時期には、同じく神戸大MBAの特徴であるプロジェクト方式によるプロジェクト実習(通称「ミニプロ」)も同時並行で進みます。加えて、平日夜の授業のレポートや期末試験も重なるため、信じられないほど時間がなく、今までの人生でこれほど勉強に時間を費やしたことがないほどの時間を勉強に費やしました。今振り返ると、毎晩のようにグループワークに参加し、わずかな時間を見つけてはレポートを書く日々は、最も苦しく、そして最も充実した時期だったと感じます。

4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

人的資源管理と経営組織がご専門の上林憲雄教授のゼミに所属しており、入学以前から疑問に感じていたコア人材の育成に関するテーマについて研究を進めています。毎週のゼミは、組織や人材マネジメントに関心のある学生20名とTAの方々、そして神戸大MBAの先輩であるMBAフェローの方々、時には他大学の先生をゲストに迎えながら、原則として毎週数名ずつ、各人の研究の進捗状況について報告する形式で進められています。社会人大学院らしく、毎週のゼミでは実務的経験に裏打ちされた活発な議論が展開されます。しかし、これだけでは単なる経験知の共有にしか過ぎません。学生の実務的な視点の議論に対して上林教授からアカデミックで論理的な鋭いコメントが加わると、それまでの議論が密度の濃い理論的視点での議論に一気にシフトし、私達学生は本質を追究することの重要性に気付かされます。正に「理論と実践の融合」を体感する瞬間です。上林教授からは、専門領域での知識もさることながら、私達社会人がなかなか持つことのできない「多角的かつ理論に裏打ちされた視点から物事を捉え本質を追究する姿勢」を教わっています。他大学のゲストの先生方、MBAフェローの方々、そしてTAの方々からのアドバイスもとても的確で、研究を進める上での心の支えになっています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

神戸大MBAコースでの1年2ヶ月の学生生活を振り返ってみて、「神戸大学は恵まれた環境と、素晴らしい先生方や仲間からの知的な刺激に溢れた場である」と痛感しています。経営学研究科には経営学の世界で著名な超一流の先生が数多くいらっしゃいますし、図書館や自習室も充実しており、キャンパスからの眺望も最高です。学生にとっては申し分ない研究環境だと言えるでしょう。また、共に学ぶ学生は、学習意欲が高く目的が明確な人が多く、各自のキャリアも多様で、これまでの人生で触れることがなかった様々な価値観に触れることができます。先生方や仲間と話をするだけで、ワクワクする様な刺激を得ることができる環境が神戸大学にはあります。

個別のカリキュラムの面では、神戸大MBAコースの履修科目数は他大学に比べ極端に少なく、MBA取得に要する期間も最短1年半と短いのですが、その密度は間違いなくどの大学にも劣らないものです。各授業には必ずといってよいほどグループ学習の機会があり、多くの学友との交流機会があります。与えられたテーマを真剣に検討・議論するのが辛く苦しいときもありますが、「これが神戸大のMBA生活なのだなあ」と実感する瞬間でもあります。授業以外でも、グループメンバーとの勉強会や授業の後の飲み会、OB会組織であるMBA cafeのイベントを通じた先輩方との交流の場等、普段の会社生活では味わうことの少ない刺激を受けることができる機会が数多くあります。心地よい知的な刺激を持つことができるのは本当に幸せなことだと感じます。

この様に、学生生活は刺激に富んだ魅力的なものですが、その一方で、この場から何を得るかは自分次第です。社会人学生には仕事も家庭もありますから、その気になれば「手を抜ける」場面や、「手を抜かざるを得ない」場面に直面します。この様な場面で、どの様なスタンスで授業に臨むかによって、恵まれた環境から学べるものは大きく変わることでしょう。ハードであると同時に、自己選択が可能な環境であるだけに、充実した学生生活を送るためには、「MBA生活を通じて何を得たいのか」「入学する目的は何か」を常に見失わない強い心が必要でしょう。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

これまでのキャリア上のテーマは自己の専門性向上でしたが、神戸大での学生生活を経て、今は経営全般に関する知識の習得と自分なりの整理ができてきたと感じています。今後は、学生生活で得たものを自己の仕事に活用していきたいと思っています。いずれ機会があれば、事業を動かす中心的立場で仕事ができればいいと思っています。

また、学生生活を共に過した仲間との関係を大切にしていきたいと思っています。中でも、グループ学習を共にした仲間は、辛く苦しい瞬間を共有した「戦友」であり、一生の友でありたいと願っています。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

残りわずか数ヶ月しかありませんが、恵まれた環境で勉強できる時間を楽しみたいですね。残された最大の課題は修士論文の作成・提出ですが、これが中途半端に終わってしまうとこれまでの充実した学生生活の価値が半減してしまうように感じています。残された時間は限られていますが、自ら現場に足を運んで調べ、考え、論文に纏め上げるプロセスを楽しみながら、自分なりに納得できる論文に仕上げることが出来れば最高だと思っています。最後まで手を抜かず、努力を惜しまず、有終の美を飾るべく頑張りたいと思います。