田中 彰さん

朝日放送株式会社勤務

1. プロフィールをお聞かせ下さい。

1993年に大阪大学経済学部を卒業し、朝日放送株式会社に入社しました。新人研修後はスポーツ局スポーツ部へ配属されて12年間在籍、その後2005年4月からテレビ編成部に所属しています。スポーツ部時代には「ゴルフ中継」や、「プロ野球 阪神VS巨人」、「熱闘甲子園」のチーフディレクターを担当しました。また長野オリンピックやアメリカからの全米オープンゴルフ中継のスタッフとしてインターナショナルなスポーツ番組の制作にも関わった経験があります。現在はテレビ編成部の制作番組担当者として、番組編成案の作成や新規番組の起案、制作現場と営業スタッフとのコーディネートや系列局間のコーディネート等を行っています。

2. なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

きっかけは04年に起きた関西のプロ野球老舗球団の消滅でした。入社以来8年間にわたり担当記者の経験があったため、心から愛着を持っていた球団の危機に際して自分の事のように将来を案じていました。ところが球団関係者に数多くの提案を行っても、私達番組スタッフの作った活性化案は「素人の思いつき」としか評価していただけず、悶々としている間に球団消滅の日を迎えたわけです。今から思いますと、おそらく放送局の制作現場に勤めるからこそ身に付いた文化・アイディア・手法が、実は企業経営という立場から見た価値基準・ビジネスプランとは大きく乖離していたのではないでしょうか。ですから30歳台後半を迎えるにあたって自分に足りないものを探すために、他業種を含めての日本企業の戦略や組織行動・文化について多くの考え方を知りたいと切望するようになったわけです。

神戸大学のMBAを選択した理由はたくさんあります。第一に前述の老舗球団の元広報部の方で、大変お世話になった方が神戸MBAの先輩として充実した毎日を送られた様子がHPに載っていたこと、第二に大学の先輩や同級生が推薦してくれたこと、第三に働きながら国内最高峰の教官のもとで学べる環境があるからです。

3. 神戸大学MBAコースのカリキュラムの素晴らしい点を挙げるとすればどのようなところですか?

素晴らしい所ばかりなのですが、しいてまとめれば3点です。まずは講義形式だけでなくグループワークを重視しているところです。続いて自分と比べるのは失礼なくらい、驚くほど優秀でバイタリティに溢れたクラスメイトがいることです。最後に一流の先生方が最高に熱い講義をされること。これら3つが多くのシナジー効果を出して、非常にうまくリンクしていると思います。

例えば個人で習得するには不可能な量の課題であっても、素晴らしい仲間がいるからこそリタイアせずに努力を継続できるという、今まで味わったことがない環境には驚きました。これまでは放送業という経営学とは全く縁がない生活をしていたわけですし、日々の業務が多忙なため落ちこぼれ寸前でしがみついている状況にも関わらず、神戸MBAの環境は強烈なモチベーションを与えてくれます。学ぶ喜びを常に提供してくださる各先生をはじめ、各グループのメンバーには感謝の気持ちでいっぱいです。

そのような中で前期の三品先生の「プロジェクト実習」では5人のグループで企業リバイタリゼーションを研究したわけですが、研究企業の選定や情報収集、企業訪問をグループの仲間と一緒に行いました。自分の所属する会社内では納得してもらえる私のロジックも、MBAのグループでは納得してもらえない。それでも熱い議論を真剣に進めると何らか解決の糸口が見えてくるプロセスはとても知的好奇心を刺激され、全く別のキャリアを持つ5人から学ぶ発想の違いには目から鱗が落ちる連続でした。(ミニプロジェクト発表会で幸いにも私達の研究「千葉ロッテマリーンズ」が金賞に選ばれていますので是非ご覧ください。体育会の試合で優勝したときよりも感激して泣きそうになったのは本当に良い思い出です。)

4. 神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか?

高校・大学とボート部に所属していましたから、恥ずかしながら学生時代に勉強した記憶はありません。ですから入学からの9ケ月間で、これまでの生涯勉強量を軽く超えたのではないかという状況です。ただこれ程までに仲間から刺激を受けて、アカデミックな理論を学び楽しさを感じ、多くの価値観に触れられる毎日は想像以上の充実です。クラブ活動に明け暮れた学生時代には学校に通うのはつらいことと記憶しておりましたが、社会人の立場で学校に向かうことがこんなにも楽しいとは思いもしませんでした。本当に入学できて良かったと感じています。

5. MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

土曜日に終日の講義、日曜日にプロジェクト研究(ゼミ)またはグループワークというように、土日は完全にMBA中心の生活です。また後期は週に1日ですが平日講義も受けています。もともと私は組織行動(チームワークやモチベーション)と、マーケティングの市場創造に興味がありました。ですから金井先生・高橋先生の「組織行動応用研究」、上林先生・平野先生の「人材マネジメント応用研究」は興味を持って受講しました。そして現在は栗木ゼミに所属してマーケティングについて基礎知識から幅広く学ばせていただいています。

その中でも神戸MBA名物なのでしょうか?事前に聞いてはいましたが、レポートの量には想像を絶するものがあります。特に小島先生の「経営戦略応用研究I・II」はハードで、2週間に1度40?50ページのレポートを提出する4ケ月でした。グループに分かれて分析研究を進めてレポートを仕上げていくのですが、この夏も私は高校野球関連の仕事をしていたため、仕事のピークと講義のピークが重なり生活はパニックとなりました。毎日終電まで仕事をして帰宅し、深夜1時から少しずつ課題をやって、講義前日の毎週金曜日は必ず徹夜となる完全な時間不足。財務分析もおぼつかない私の基礎学力なさが招いた状況ですが、グループのメンバーが最高に素晴らしい人たちでした。日曜日の自主的なミーティングでは分析方法を議論したり、業界知識を共有したりと本当に支えあって切磋琢磨する喜びを与えてもらいました。メンバーとは一生のお付き合いをさせていただきたいと思う結束力を感じた素晴らしい経験となっています。

6. ゼミではどのような事を学びたいと考えていらっしゃいますか?

私は栗木ゼミに所属してマーケティングを学び始めている段階です。お恥ずかしい話なのですが、初学者の喜びと言いますか、興味のわく分野が多すぎるあまり未だ修士論文のテーマを決め切れていない状況です。ですが問題点として、今までの放送局のように法律や免許に守られながら番組を作れば企業価値の創造につながっていく時代が変化してきている流れに対して、これからの時代に対応するためには新たな市場創造が必要だと感じております。市場創造に関する数多くの先行研究や、各企業の取り組みを学び、自分の会社での業務につなげるマーケティング知識を多く身に付けたいと考えています。

7. 今後の学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか?

入学前の自分と比べて、かつて創造できなかったぐらい視野が広がり、数多くの価値観を学べたと感じております。心から尊敬するような素晴らしい仲間にも囲まれて、毎日が新しい発見の連続です。1日たりともMBA生活を無駄にしないように心がけて、少々オーバーワークですが最後まで楽しみたいと思います。

一方で支えてくれる職場の上司・同僚や、家族(特に妻)には多大な負担をかけています。また今年から小学生になった息子には父親らしいことを全然してやれないのも悩みです。周囲には感謝の気持ちを忘れずに、これら状況を克服することも重要なテーマです。

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