福本 真士さん

未来電子テクノロジー株式会社 勤務

1 .プロフィールをお聞かせ下さい。

2021年度入学の福本真士です。2010年に起業して会社経営をしています。人生でいろいろ試したいことがありすぎるので、誰もやっていない実験を自由に行うためには、お金と時間を稼ぐことが必要で、それを実現するために起業しました。起業前にプログラマーをしていた時代からずっとWebの世界で生きてきました。しかしコロナ禍以降、組織が完全にバーチャルなつながりに変化し、従来の方法では上手くいかなくなり、Webだけですべてを解決することへの課題を実感。そんな折、自身の実体験であるゲームの強いコミュニティから仮想空間に興味がでてきました。この領域を上手く活用すれば、当社の課題も解決できるのではないかと考え、現在は仮想空間領域に新規プロジェクトで実験を繰り返し、投資を続けています。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

いま自身が関わっているプロジェクトを深めるためには、事業について、お金について、人について、そしてそれらをダイナミックに組み合わせた「深め方」を学ぶ必要性を感じました。それまでは会社経営について疑問を持ったことはなかったのですが、そのときに「そもそも経営って何?」という問いが降ってきました。善は急げと経営を学ぶために大学院を探し、見つけたのが神戸大学です。

神戸大学を選んだ理由は、「うまい、はやい、やすい」です。まず私が入学前に「うまそうだ」と感じた部分は、アカデミックの観点から学ぶことができることです。実践を重視するMBAはよく耳にしますが、正直まったくそそられなかったです。実践なんて学んだ内容を勝手に解釈して、自分でやるからほっといてくれという感じ。それよりも神戸大学に「うまそうだ」と感じた部分は、理論をもとに因果関係を明らかにし、正しいお作法で論文を書くことができる、それに耐えうる調査分析方法を学ぶことができることです。ずっとより原理的なこと、根っこにあるものを学びたいと強く感じていました。この点は私にとっておいしそうにみえましたね。

次に、「はやい」と感じたのは、土曜のみの集中講義で1年半にて修了ということ。このプログラムの仕組みを見た時に、飽き性の自分にも1年半くらいならできそうだ!と、「はやい」の魅力がしっかりと伝わってきました。最後に、「やすい」について。言わずもがな、神戸大学は国立大学なので学費が圧倒的に安い。この金額なら在学中に学んだことを活用して回収できるので文句なしの条件です。実際、回収も完了しました。したがって、私が神戸大学を選んだ理由は、「うまい、はやい、やすい」の私にとっての好条件が整っていたからです。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

現在講義は受講しておらず、専門職学位論文のための調査分析も一段落したことから、執筆に集中しております。もとより、所属組織での業務と一致する問題意識をテーマに選択していたので、専門職学位論文のために時間を使っているというよりは、業務として行っていた調査研究に対して、先生や先輩方にアドバイスをいただきながらプロジェクトを進めているという状況に近いです。よって、月曜日から金曜日の日中は自身のテーマの研究、週に一度整理し、土曜日にゼミに参加。そして自身の進捗発表の順番が回ってくれば資料を作成して報告。日曜日が休日という生活です。

M1のときは受講しているクラスのレポートがありましたので、上述した日中の活動に、レポート作成のための文献の読み込みや、レポートの作成の時間が入ってきていました。早い段階で自身のMBAのルーティンが固まったので特に辛さを感じることもなかったです。また、毎週のレポート課題は、ゲーム感覚で楽しんで取り組むことができました。社会人になり起業して、グレードで評価されることもなくなったので、自身をアップデートさせるための良い機会となりました。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか? また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

私は、小川進先生のゼミに所属しています。ゼミの構成は、小川先生の「物事の背骨から理解しろ」という言葉をそのまま体現する構成になっていました。具体的には、経営戦略とマーケティングをテーマに、ゼミ開始当初から指定された課題図書を期日までに読了、学びや気づきをシェアすると、小川先生が一人ひとり丁寧にコメントを返答され、足りていない視点を引き上げていただくことができました。特に印象に残っているのは、あらゆる書籍で語られていることの、共通点ばかりに無意識に目を向けがちであった私たちに、「共通点ではなく、違いを見極めろ」とおっしゃっていただいたことです。時間がない中で同じことを学ぶためにわざわざ違う書籍を課題にしない、というのはその通りです。無意識に共通点ばかりをみてテンプレート発想に陥っていた思考を打ち壊して頂いたことは忘れられません。

また課題図書は読むだけでなく、ほぼすべての課題図書の著者の方をお招きいただき、ゲストQ&A会を開催していただけました。事前に読んだ書籍の内容から、ご本人に直接質問をぶつけることで、なぜの部分をより解像度を高めて理解することができます。つまり、物事の背骨から理解する機会をご提供し続けていただけたということです。さらに、ゲストでお越しになる方は当該分野で第一人者と呼ばれる方や、入学前から書籍を拝見したことがある各分野の経営者や著名人の方々ばかり。日常で生活していると絶対に直接質問をすることはあり得なかったので、それだけでもMBAに入学した価値はあったといっても過言ではありません。

次に専門職学位論文では、私は「メタバース」をテーマに執筆しています。所属している会社の事業として数年間、新規プロジェクトとして「ゲーム」と「仮想空間」の開発を行っていました。そこに、2021年10月末、Facebook社がMeta社へと社名変更し、メタバースへ1兆ドルを超える投資の発表があり、以降の世界では「メタバース」という言葉を聞かない日がないほどにバズワード化してしまっています。私たちの会社にとって市場に投資が増えるので突如やってきた追い風ともいえますが、一方で、トレンドに乗っかっただけの全く価値のない仮想空間まで、雨後の筍のように登場し「メタバース」として取り扱われるようになっています。このままではキーワードを汚されて、自社共々業界が廃れてしまうリスクがあります。そこで、バズワードに飲み込まれないように「メタバース」の研究を行い、自社のポジションを明確にすることが自社にとっても自身にとっても意味があると判断しました。具体的には、「メタバース」をコミュニケーション手段として利用する場合、従来のコミュニケーション手段や、同じ「メタバース」でもその特性によってどのようなコミュニケーション効果の違いがあるのか、について明らかにする実証研究を進めております。自社の新規プロジェクトを、自身の専門職学位論文に絡めることで、多様な視点からアドバイスを頂けることは本当に価値が高いことだと感じています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

正直、合格してから入学前までは1年半も続けられるかどうか、しんどい想像ばかりしていました。しかし、いざ入ってみると多少は面倒に感じる部分もありましたが、特に精神的にも時間的にもしんどいと思うことは一切なく、総じて面白いゲームをプレイし終えた感覚に近いです。たとえば、毎週のレポートは先生に自身の考えを評価してもらえるので、評価を高めるために他の人が気づいていないであろう、どの切り口から、どんな新たな手を次は繰り出そうかと頭を使う楽しさや、土曜日の授業やゼミで学んだことを使いどうやって現場で稼ぐことができるのかを考え、次の月曜日からそのまま仕事で試すこと。また自身の研究テーマに興味を持っていただけた先生との出会いや、友達がいない自分にも同じ興味のテーマで話すことができる友達ができたことなどなど。クリアまでに1年半かかる大作RPGをプレイしていた感じですね。ひとりで家に閉じこもって書籍を読んでいても、決して実現し得なかった経験をさせてもらえました。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

成り行きの人生でここまできましたので、キャリアについては深く考えたことがありません。よって、いま集中してやりたいことくらいしかないのですが、強いて言えばそれは2つあります。1つ目に、所属企業での新規プロジェクトを成長させること。2つ目に、自身の専門領域としてテーマをさらに深めることです。

1つ目の新規プロジェクトを成功させる上での自身の役割は、チームにビジョンを共有し続け、優秀なメンバーを採用、そして投資を継続することのために既存事業の営業利益を高めることが考えられます。これはすでに日々実践していますので、今後も継続する予定です。2つ目の自身の専門領域としてテーマを深めるためには、現在専門職学位論文の調査分析で行っているように、論理を突き詰めて考え、文章でアウトプットする必要があると考えています。専門職学位論文の作成過程でドラフトをチームにも共有していますが、自分たちのポジションがより明確になったと好反応をもらえていますし、価値が抽象化してわかりにくいからこそ、今後はさらに論理を言葉にすることの重要性が高まると考えています。よって、キャリアの観点で考えるのであれば、今後もやりたいことを追求するための環境として、博士課程に進んでさらに研究することも視野に入れています。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

修了までに終わらせなければならないことを早めに終わらせ、上記の集中してやりたいことに対してすぐに動き出すこと、また学生生活でまだ得られるものが残っていないか最後まで試行回数を高めていきたいと考えています。