髙尾 忠男さん

JFEスチール株式会社 勤務

1 .プロフィールをお聞かせ下さい。

2022年度入学の髙尾忠男と申します。私立大学社会学部を卒業し、数社経験した後、2011年に、鉄鋼メーカーであるJFEスチール株式会社に入社し、現在に至ります。
業務については、住宅建材を製造する工場に所属し、入社当初から一貫して、主に工程管理を担当しております。
過去を振り返ると、きっかけをくれた祖父母の影響で野球少年となり、野球に明け暮れ甲子園を目指した高校時代。そして野球に区切りをつけ、国内・海外と雪を求め、スノーボードの競技者、インストラクターとして雪山を滑り倒した20代。スノーボードに没頭しすぎて、同級生より数年遅れて大学を卒業し、その後は会社を転々とし、現在の会社に勤めております。スポーツばかりしてきた、人より多く回り道をしてきましたが、今、こうして神戸大学MBAで学ぶことができています。なので、どんな方でもチャンスがあるのが神戸大学MBAと言えると思います。

本当に優秀で、素敵な、尊敬できる同期の仲間や先輩方を含めたMBA生、そして、経験・実績豊富な先生方のもとで学べる事、そして、こうしてこの文章を執筆させて頂ける事を、本当に有難く、光栄に思います。拙文ではございますが、最後までおつきあい頂ければ幸いです。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

以下の3点と考えます。
大きな理由となる1点目は、神戸大学MBAのカリキュラムが私にとって非常に魅力的であったからです。カリキュラムを見て、仕事における自分の中での課題に対して、解決できると思われる手段が神戸大学MBAにあるのではないか、と思いました。工程管理という仕事をする中で、以前から行き詰まりを感じており、仕事に対して漠然と課題を感じるけれど、それが具体的に何か、なぜそうなっているのか、そして、それを解決するためにはどうすればいいのかわからない状態でした。知識や、対応する引き出しがなく、自分の能力に限界を感じ、何かが足りない、何かを身に付ける必要があると、悶々としていました。その何かをもう少し掘り下げると、それは私の中では、本質的な要因を見極める分析力、知識、そして説得力ある論理的な思考力と実行力であることに気づきました。これらがなぜ経営学と繋がるのか、と思われる方も多いでしょう。工程管理とは、ヒト、モノ、情報を、如何に効率的に流れるようにするかを考える仕事と、私は捉えています。そして、そのヒト、モノ、情報、(カネも入りますが)とは経営資源と言われるものであるため、私が携わる業務と経営学が結び付き、経営学を学ぶことに繋がったのだと思います。
そして、これらを身に付けるにはどうしたらいいのか調べていたところ、神戸大学MBAのHPに出会い、私が学びたいのはこれだ!と思いました。“これ”とは神戸大学MBAのカリキュラムにある5つのコア科目と、神戸大学特有のプロジェクト方式という、チームを編成し、メンバーで議論をしながら課題に対して研究を進める教育システムでした。つまり、インプットの学びに加え、チームで進め、発表するというアウトプットがある事です。それは、私が求めていた、理論と実践の両立であり、分析力や知識、そして、思考力や実行力を、実践によって身に付ける事ができると感じました。

2点目は、自宅と勤務地の間に神戸大学が位置するため、非常に通学に便利であること、 そして、3点目が、小学生の子どもがいる二児のパパとして、子どもたちに頑張れという前に、自分が頑張ろうと、自分自身をアップデートし、挑戦する父親でありたいと思いました。今はわからなくても、子どもたちが成長して、いつの日か、あの時、お父さんなんか忙しそうにMBA行っていたなぁと、何か思ってくれたらいいかなと。

こうした理由から、自分にとっては、かなりハードルが高い事はわかっていましたが、人生一度きりなので、挑戦しようと思い受験を決意しました。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

今執筆している2023年6月の状況で申しますと、私はM2であり、論文の執筆、そして興味ある講義を受講しています。その前提での1週間のスケジュールを、まず説明します。月曜日から金曜日は、基本的には、仕事が終わった夕方から夜まで、リサーチ、自学をしています。その中で、火曜日の夜には、(5)で後述するJBCCに参加した仲間と輪読会を行っています。また、ゼミで悩んだときは、不定期ですが、ゼミや同期の仲間とディスカッションを行っています。金曜日の夜は、講義があるタームでは、オンラインでの講義があります。そして、土曜日は、午前は講義、それが無ければ神戸大学図書館にて自学、午後はゼミです。日曜日は、(なかなかとれない時もありますが、)家族との時間としています。

1年前のM1のこの時期は、コア科目のレポート、選択科目の課題、そしてケースプロジェクトでの研究やミーティングなど、休まることなく激動の1週間を過ごしていました。本当にあっという間の1週間でした。
M1の時と比較すると、M2の今は時間ができたように思いますが、M1の時にはなかった専門職学位論文へ向けてのプレッシャーを感じながら、過ごしています。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか? また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

私は、経営戦略を専門とされている三品和広先生のゼミに所属しています。三品先生のゼミでは、他のゼミと違って、専門職学位論文が建議書となります。建議書とはゼミ生自身の経営層や上司に経営戦略を提言するものです。従って、ゼミでの内容は、経営戦略を立てるための議論の場となります。ゼミには、様々な業種のメンバー13名が在籍しています。それぞれの経営課題、経営戦略をプレゼンし、いわば教科書にはない、各自が自社で直面する課題、問題意識を持ち寄った、生きた題材を元に議論や講義が進みます。発表毎に、メンバーの会社の経営戦略会議に参加しているような、そんなゼミです。そこにハーバード大学で教鞭をとられ、膨大な数の企業を研究され、そして、複数の企業の社外取締役に就かれている三品先生からの、指摘やアドバイスが加わるわけです。こんな魅力的な講義があるでしょうか?とても刺激的で、毎回が学びであり、みんな常に真剣です。

この文章を執筆しているちょうど今は、自事業所の経営戦略を立てるために、関連企業の経営計画等から、各社の経営戦略を読み取り、自社のターゲット、市場がどうなるかのリサーチを終えたところです。そして、ではどうするか?という建議の重要なところを、「時機読解」を行い、「事業立地」をどうするのか、模索しております。自分の中で湧き出る自事業所に対しての危機感を感じ、その想いを持って、ロジカルに建議書を執筆していく、そうした作業を繰り返し、作り上げている最中です。

また、上記(3)でも触れましたが、ゼミや同期の仲間の存在の大きさを感じています。専門職学位論文は当然個人で執筆していくものですが、行き詰まった時、その仲間たちに、相談させてもらうと、仲間たちは真剣に考えアドバイスや意見をしてくれます。そこで突破口が見えたり、一歩踏み出せたりできる場面があります。自分にはない、様々なバックグランドを持つ仲間からの多様な視点を得る事ができる、本当に幸せな環境であると、つくづく感じます。

そして、最終的には、一工場の一工程管理だからこそ書ける、専門職学位論文を目指したいと思います。メーカーといいつつ、非常に小さな規模の工場ですので、全国の中小規模の工場の皆さんにも参考になるような工場の事業戦略を執筆できればと考えます。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

今、MBA生活を振り返るために、これまでの資料や、記録を見返しています。あれもこれも、どれもいい思い出ですね。こんなに素敵な出会いと時間を、改めて有難い環境だと感じています。
感想と言えば、想像を超える刺激的な成長できる環境、プロジェクト研究の楽しさ、そして、JBCC、これらのキーワードが頭に浮かびます。具体的には、以下です。

➀想像以上に刺激的な成長できる環境
最初のオリエンテーションやその後の講義などで、同期の皆さんと名刺交換するたびに、あまりに凄い方たちに驚き、とんでもない場所に来てしまった!?一工場の一工程担当がくるような場所ではない!と、興奮と不安を強烈に感じたのを昨日の事のように思い出します。そんな私の目に映る、その後に出会う同期の仲間・OBの方々は、とんでもなく優秀な方ばかりで、ついていくのに必死でした。そんな優秀な人たちが、謙虚にひたむきに、努力をされ、また悩みもがく姿と、それを克服していく姿を目の当たりします。普段の講義に加え、そうした姿から学ぶ事も多くあり、想像していた以上に刺激的で、様々なことを学ぶ事ができる、成長する事ができるすごい環境!これが最初の感想でした。

➁神戸大学MBA名物 ケースプロジェクト研究・テーマプロジェクト研究
神戸大学MBAには、ケースプロジェクト研究、そして、テーマプロジェクト研究という必須科目があります。このプロジェクト研究の、講義の構成、それを仕上げていくプロセス、発表、メンバーすべてが、最高の学びでした。これらのプロジェクト研究では、5~7名でチームを組み、それぞれ約5か月間取り組み、テーマに対しての研究成果を発表します。プロジェクト研究では、チームメンバーとのオンライン、オフラインでの深夜に及ぶ討議、普段なら絶対に出会えることができないであろう様々な企業の方へのインタビュー、発表ギリギリまでの議論・資料作りと、とにかく必死に駆け抜けました。そして何よりチームのメンバーと過ごした時間が、私にとってはかけがえのない経験となりました。私たちのチームは、ケースとテーマ共に同じメンバーで臨みました。グローバルメーカーの常務取締役、大企業で部下400人以上を抱える製造部長、海外で複数の会社を設立し活躍されている経営者、メーカーで主要事業である国家プロジェクトを担うエンジニア、と多様なメンバー構成でした。(こうして書くと改めてすごい場所だと感じます。)そうしたメンバーの方々と議論を交わし、絆を深めていきました。苦しい時もありましたが、チームで乗り切れたことの方が大きく思い出として残っており、私の中では楽しさが勝りました。良い結果は残せませんでしたが、もう一度プロジェクト研究をやりたいくらいです。
ちなみに、神戸大学MBAのHPでも、ケース・テーマの各プロジェクトで金賞を獲ったチームの、プロセス、背景、当時のMBA生活の状況など、より詳細な情報が、インタビュー・レポートとして掲載されているので、是非見て頂きたいと思います。(2023年6月時点 神戸大学MBA HPの“在校生の方へ”→“プロジェクト発表会”で御覧になれます。)

➂JBCC グランドファイナル進出
前述したJBCCも忘れる事ができない思い出です。JBCCとは、日本ビジネススクール・ケース・コンペティションの略で、全国の経営系大学院の学生に参加資格が与えられ、日本企業が抱える課題をテーマにしたビジネスケースに対して経営戦略を立案し競い合う国内最大級のビジネスケースのコンペティションです。このJBCCは、神戸大学MBAのカリキュラムではなく、言わば部活のようなものでしょうか。なので、これを部活とするならば、JBCCはMBAの甲子園と言えるかもしれません。私は有志で集まった仲間と、5名で参加しました。そして、チームの力、OBの方の力、同期の仲間の協力のおかげで、初出場でしたが、最終決戦となるグランドファイナルに進出することができました。振り返ると、9月から始まり、12月の本戦までの約3カ月は、仕事、MBAのコア科目、プロジェクト、そして、JBCC本戦へ向けての準備と、本当によくできたなと思うくらい、必死に駆け抜けました。結果は決して、満足できるものではありませんでしたが、あの状況でやりきれたこと、グランドファイナルに進出できたこと、誰もあきらめず、その時できるベストを尽くしあったメンバーとの3カ月は、本当にいい思い出です。もちろんリベンジを今年に誓い、そのための(3)で上述した輪読会を実施しています。

以上の3点です。
自分自身の取り組み方次第で、本当にいくらでも成長できる環境が、神戸大学MBAにはあると思います。もしも受験を悩まれている方がいらっしゃれば、素敵な出会い、環境が待っていますので、是非、一歩踏み出してほしいと思います。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

まずは、学んだことを、仕事に持ち帰り、実践する。経営学は学んだことをしっかり実践してこそ、本当の意味があると私は考えます。これを愚直に行っていくことかと思います。そして、この先、どんな状況、環境になったとしても、学んだことを、その状況に応じて、しっかり実践できる人間になりたいと考えます。私は工場の一工程管理担当です。直接経営に携わる地位かといえばそうではありませんが、神戸大学で学んだ経営戦略を描く経営の視点とこれまで培った現場の視点の両方を併せ持ち、双方から信頼してもらえる人材となることを目指したいと思います。そして、今の職場がしっかり収益を確保し、存続し社会に必要とされる職場となれるように貢献していきたいと思います。
また、修了後も学ぶ姿勢を持ち続けようと思います。神戸大学MBAでは、学んだことは当然ですが、常に学び続けることの大切さも、同時に教わりました。経営学を1年半の間、学んだとは言え、それはほんの一部にすぎません。また、学ぶだけではなく実践によって、学んだことに磨きがかかるものと思います。よって、学んだことを実践し、結果に結びつけるよう、常に学び続ける気持ち・姿勢を持ち続け、いつからでも、どこからでも学べる、ということを肝に銘じて、常に自分をアップデートし、未来を切り拓いていきたいと思います。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

MBA生活が楽しくて仕方がありません。この経験は、出会いも含めて、かけがえのない財産です。ですので、”残りの学生生活”、と聞くと、なんだか寂しいですね。入学前に想像していたよりも、もう何倍も楽しくて、刺激的で、充実して、この時間がずっと続いてほしいと思っており、本当に寂しい限りです。
どのような希望か?そうですね。これまでの講義の課題や、プロジェクト研究、そして今、少しずつ形になる専門職学位論文を見ていると、最初は遠く大きく立ちはだかる壁と思える困難も、あきらめず、自ら考え、調べ、そして、何より多くの方の力を借りて乗り越えることができたと思うので、仲間との繋がりと、この神戸大学MBAという学べる環境が、私にとっての希望と言えます。
とは言いつつも、足元の専門職学位論文の進捗は決して順調ではなく、苦しいのも事実です。しかし、なかなか経験できないこの苦しさが、必ず自分の糧となることと信じて、何より先生の教え、MBAで学んだこと、そして、学びあえる素敵な仲間とともに歩むこの時間、これらすべてが、私には有意義です。限られたこの時間を、引き続き楽しみながら、もがきながら、悩みながら、仲間の力を借りながら、残りのMBA生活を存分に楽しみたいと思います。

まだ、残りの学生生活は続きますが、こうした素晴らしい環境で学ばせてもらえている事に、この場をお借りして、同期の仲間、先生方、教務の方、TAの方、研究でお世話になったすべての方々に感謝申し上げます。そして、私事で恐縮ではございますが、遊ぶ時間を辛抱してくれた子どもたち、私たち家族を支えてくれる両家の両親に感謝したいと思います。そして、何より、妻の支えなしには成し得なかったことに感謝したいと思います。ありがとうございました。

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