菅野太介 さん

西日本旅客鉄道株式会社 勤務 2018年度修了生 原ゼミ

1. プロフィールをお聞かせ下さい。

菅野太介です。大阪生まれ、大阪育ちで工学系の大学院(マテリアルサイエンス専攻)を卒業後にJR西日本に入社しました。入社してからは、新幹線運転士や列車の運行管理を行う指令所の指令長など現業機関の経験を経て、本社の鉄道部門で仕事をしています。神戸大学MBA入学当時は、山陽・北陸新幹線の輸送計画を担当しており、2022年に控える敦賀開業時の新幹線輸送体系や必要車両の投資などを精査する仕事をしていました。現在は、西日本全エリアの車掌指導業務と中長期運用に関する業務に従事しています。

2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?

鉄道を取り巻く環境は、総人口の減少、インバウンドの増加およびICT技術の発展と大きく変化していくことは必至であり、当社が鉄道事業者という使命を果たしつつ持続的な発展を継続するには経営戦略・戦術も多種多様になり、決断も慎重かつ大胆に実施していかなければ未来が危ないという危機意識はありました。そんな中、社内の研修などで経営学のエッセンスを学びましたが、それらを払拭することはできずにモヤモヤしていたところ、神戸大学MBA卒業生である入社同期に神戸大MBAのカリキュラムや卒業後の成長の話をきいて、「ここで経営学を体系的に学びたい!」と思ったのがきっかけです。また、働きながら学ぶというスタイルと異業種の仲間と一緒に行うプロジェクトを通して学ぶという方式は入社して凝り固まってしまった価値観を新しく変えることができるのではないかと思い神戸大学MBAを選択しました。

3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?

「経営学を体系的に学ぶ」という点では、後述するカリキュラムや働きながら学ぶという神戸大学MBAのスタイルのおかげで、モヤモヤしていたものは非常に整理されました。しかし、それは単に以前よりも知識がついただけでしかありません。学んだ「知識」を「知識力」として、リーダーシップを持って課題設定・課題解決を繰り返して当社の持続的発展に寄与することができたと心から感じることができた時に「目標が達成できた」と胸を張って言います。

4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。

とにかく時間との闘いでした。毎週毎週課題に勤しみながら、並行してプロジェクトメンバーとプロジェクトの打ち合わせをする。そして神戸大MBAの同期とビジネスコンペにも多く参加していました。仕事の特性上、大きな事故や災害が発生すると業務が錯綜するので、常に1週間先の課題まで終わっている状態をキープしました。そのために、仕事の合間の休憩時間や通勤時間なども課題をしていたこともあります。また、夜は時間がなく、時間確保の点で不安定要素が高いので、早朝に起きて仕事に行く前に必死で勉強していました。このように勉強を進めることができたのは、もちろん家族や仕事の同僚の協力があったからこそであり、彼らには非常に感謝しております。

5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。

2017年から5つのコア科目(マーケティング、オペレーション、ヒト、カネ、戦略)が設定されました。この5つのコア科目で自分の頭の中にブレない杭が立ち(イメージです)、それによりその他の選択科目による周辺の知識も効率的に固めることができたと思います。また授業やプロジェクトでは、納得するまで皆と意見をぶつけ合い、自分の意見と相手の意見を融合していく楽しさを学びました。さらに議論を通して積極的傾聴やチームワークの重要性というものを体感しながら学ぶことができ(必死にモガいていました)、自分の足りない部分を見つめなおすことができました。そして、何より他業種の優秀な仲間たちと一緒に過ごす濃密な時間はとにかく楽しい!自分が今まで当たり前と思っていた考えは自会社でしか通用しない事だったり、逆に自社のいいところが見つかったりして新しい自分や自会社について気付くこともできました。

また何といっても「働きながら学ぶ」というスタイルに意味があると思います。仕事にもこれまでのように多くの時間を費やすことはできないので、限られた仕事時間の中で最高のアウトプットを出すにはどうすればよいかということを意識するようになり、タイムマネジメント力が大幅に上がります。また、学んだ理論をすぐに仕事で試すことができます。日々理論と実践を繰り返し、それにより思考が深まり、仕事が深まるという好循環を創り出すことができます。そして約70名の仲間たちも同様に「働きながら学ぶ」を実践しているのであり、そんな彼らとの授業やプロジェクトでの議論は、それぞれの発言がリアルビジネスの裏付けがある話で説得力があり、他では聞けないようなケースであり、とても刺激的でした。

6.在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?

MBA同期とチームを組んで出場した『JBCC(JAPAN BUSINESS SCHOOL CACE COMPETTION)』で優勝して日本一になったことは非常に印象に残っています。JBCCは全国のMBAスクール(2018年度は33校、161チームが参加)の強者達との真剣バトルです。5月上旬にケースが配布されて、書類による予選審査があり、それをクリアすると7月に慶応大のキャンパスで、プレゼンと質疑応答でのセミファイナルがあります。そこでの最上位通過者のみがファイナル(この時点で5チーム)に出場して、最終的にはプレゼンと審査員からの質疑応答とで優勝者が決定されます。私は、M1の時もJBCCに参加しました。何とかセミファイナルまではいきましたが、周りのレベルに圧倒され、ただただ不甲斐なさを覚えて帰ってきたのを覚えています。M2の時は修士論文の準備で皆忙しい時期でしたが、MBA集大成としてチャレンジしてみようということで同期と参加をしました。この時、メンバー間のコミュニケーションや資料作成においてもカリキュラムの「コア科目」という共通言語が非常に役立ちました。課題を整理するときにコア科目で整理してみたり、戦略提案するときにコア科目で点検してみたりと、局面を網羅的に整理するフレームワークとして利用できることを実感しました。審査員の先生方からの評価も「全体的に網羅的に整理できている」と言われたので、自信を持ってリアルビジネスの場面でも有効活用していきたいと思っています。

また、原ゼミも神戸MBA生活の中で、貴重な時間の一つです。ゼミが始まった当初は、修士論文の内容の中の自分の問題意識、課題設定さえもうまく自分の言葉で伝えることができませんでしたが、原先生の優しくもあり、的確かつ厳しいリードにより何とか論文を書き上げることができました。毎回のゼミにおいては、自分にも厳しく他人にはもっと厳しい同期から、温かくもあり、厳しい指摘も貰いながら協同で切磋琢磨している感覚が強かったです。

さらに、2017年度から設定された「優秀MBA」を受賞できたことも貴重な財産です。修了式の場で、家族を目の前にして表彰状を受け取った時は、一年半におよび無我夢中でやってきたことが走馬燈のように蘇り、非常に感激したのを覚えています。2017年度は4名受賞しましたが、皆が必至で勉強しているなかでこのような賞を取れたことは自分の自信にも繋がりました。

7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?

物の見方がかなり大局的かつ統合的になったと思います。今までは戦略は戦略、ヒトはヒト、財務は財務とバラバラに捉えており、それぞれを一生懸命考えようとはしていましたが、どれかを詳しく見ていくとその他が疎かになるといったトレードオフのような捉え方をしていました。しかし、今は全てを統合的に見なければならないというマインドセットにはじめからなっており、イメージが伝わるか難しいですが、トレードオン(こんな言葉あるかわかりませんが)していくような捉え方をしています。このような考え方になると、日々の業務におけるマネジメントにおいても、いかに自分がトレードオフの捉え方をしていたかが分かります、例えば、仕事のアウトプットと部下の人材育成とどちらが重要かということ考慮しながら物事を進めないといけない場合は、場合分けをしてどちらかに寄る選択を今まではしていました。しかし、マインドセットがトレードオンになると、両方を統合する選択をしていくようになりました。また、問題局面に対峙した場合も、今までは原状復帰のために方策を考えていましたが、統合的方策で現状以上の結果を求めるように構えが切り替りました。そうすると、問題局面を成長への契機と捉えることができるようになります。そのようなことを繰り返していると。より良い判断で結果に繋がることが多くなり、上司や後輩からも判断や指示方法が変わったと言われるようなりました。

8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。

長々と高尚なことをいうつもりはありません。エールを込めて以下に箇条書きで3点書かせて頂きます。

  • 死ぬ気で勉強する「覚悟」は必要です。家族への了承は得ておきましょう。
  • もし入学に迷っているならば、チャレンジしてみましょう。人生は人生は一度きりですよ。でも有限です。後悔するくらいなら門を叩いてみましょう。
  • 神戸大MBAでの出会いは一生の財産になります。一緒の釜の飯を食った友人たちが様々な業界にいることになり、卒業後も色んな話を聞く機会に恵まれ世界観が広がります。

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