寺田多一郎 さん

アボットジャパン株式会社 勤務 2008年度修了生 金井ゼミ

1. プロフィールをお聞かせ下さい。

1982年 大阪大学大学院薬学研究科修了後、在阪内資系製薬会社に入社。研究所、臨床開発、市販後調査、経営戦略部門を経験し、2005年 アボットジャパン入社。現在、医薬品副作用情報処理業務を担当しています。神戸大学には2007年に入学し、1.5年コースを選択。ゼミでは金井壽宏教授に師事し、組織行動論、モチベーションに関する研究を行い、本年2008年9月に修了しました。

2. なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

生まれも育ちも大阪ですので、自宅からの通学可能圏内(2府6県)で数多くの大学を選択できました。私は大学進路として自然科学系を選択しましたが、もちろん社会科学系を選択した友人も多くおり、そのうち神戸大学経営学部を目指していた友人からは、『神戸大学は日本で初めて経済学研究と経営学研究を独立した学部として開設した所謂「経営学の老舗」であって、何と嬉しいことにそんな大学が通学圏内にある』ということを聴かされていました。彼らは憧れの神戸大学に進学しました。時が流れ、社会人キャリアのうち、特に経営戦略部門において、自分の自然科学系のバックグランドに、経営学のセンスを加えれば、もっと業務全体像を把握することが出来るのではないか、何よりも業務そのものを楽しむことが出来るのではないか、と漠然と考え始めました。経営学の基本的知識すらありませんでしたが、経営学のことを知るだけであれば関連書籍を読めば事足りるのですが、単に知るだけではなく、現実のビジネスにおいて活用出来る実学としての経営学を習得する方法を探していました。そんな中、経営戦略部門のメンバーの一人が神戸大学の社会人MBAに通学していることを知り、さらにその年に開かれた大学の講座同窓会にて、在阪の製薬企業研究所勤務の後輩から神戸大学に通学していることを聴かされ、これがキッカケで神戸大学社会人MBAの存在を知りました。

神戸大学を選択した理由は、(1)経営学分野での高い業績と評価を受けておられる錚々たる先生方がいらっしゃること、(2)仕事を続けながら通学出来ること、(3)高校時代の「経営学なら神戸大学」というブランド刷り込み効果、(4)六甲台の自然環境、です。

3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?

十分達成されつつあります。この原稿執筆時点では学位授与直後ですので、これからの実業務での活用についてはまだ書けませんが、既に在学中から十分活用できていたと思います。すなわち、講義やプロジェクトを順次履修するにつれて、会社内での他部門、特に経営企画部門や財務・経理部門の担当者とのディスカッションが段階的に円滑になっていることを実感しました。正直なところ、これら担当者とは経営学のバックグラウンドも違えば、私はほとんど活きた知識を持っていませんでしたので、一番苦手な相手だっただけに、知識だけはキャッチアップしているなと感じたのがそれです。

今後は神戸大学MBAコース修了者として、知識だけに止まらず、継続的に経営の問題を解決するための発想法や問題解決の方法、その判断能力に磨きをかけてリードしていくとともに、一方で古い知識を勇気をもって捨てることにより、実業務においても目標が達成できると考えています。

4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。

どの修了生からもきっと聞けるのは、異口同音に「走りぬけた!」でしょうか。神戸大学MBAのウリである「仕事を続けながら通学出来ること」は、言い換えれば1日24時間しかないのに、仕事と個人の生活以外に、勉強する時間を捻出しなければならないということです。講義毎に編成されるグループに課される膨大な量のレポート作成、グループでの勉強会、情報収集のためのインタビュー、図書館籠もり等々、「1日24時間、1週間7日間、フル回転でないと全く追いつかない」という状況が続きましたが、もちろんだからと言って仕事も疎かに出来るはずもなく、振り返ってみれば、これまでの社会人生活の中で最高に時間を効率よく使いこなした期間でもありました。

初めのうちは、会社から帰宅後、膨大な課題をこなそうと机に向かっても、あっと言う間に朝を迎えていました。サテライト教室での講義を選択した日は帰宅も遅くなります。そして、翌日は寝不足状態で出社し、その日も帰宅後に課題に取り組まざるを得ませんでした。土曜日は六甲台での終日の集中講義。徹夜も結構やりました。これでは仕事も学生生活も、只々こなしているだけだということに気づき、先ず帰宅後にはレポートの作成ストーリーを軽く考えるだけで早々に寝ることにしました。そして早朝5時頃に起き、出社までの時間に集中的に勉強に取り組みました。自分なりにはメリハリのついた勉強方法だったと考えています。もちろん家族のフルサポートがなければ為し得ない勉強方法であり、健康管理への気配りも含めて、大変感謝しています。

5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。

大阪市内で勤務しておりましたので、平日夜間にサテライト教室での講義を受講することができました。上で述べましたように、課されるレポート量は膨大な量でしたが、講義を担当して下さる先生方が毎回の講義の準備に掛けられる時間もかなりのものだと思います。教室を先生方と学生とのエネルギーがぶつかり合う場と例えても過言でないと思います。それだけに達成感も大きいモノがありました。

神戸大学MBAを受講してよかったと思うことは、神戸大学MBAコースの特徴である、現に働いている人々を対象として教育を行っていることと、プロジェクト方式であったことです。すなわち入学以降、学問として確立・体系化された考え方を学ぶのみならず、先生方の指導のもと異業種の同期生や課程学生・先輩諸氏との交流、ディスカッションを通じて、必要情報の収集・分析能力の向上と、発想法、判断能力を磨く機会を得ることが出来ました。そしてここで出会った同期生はこれからの人生での財産となることは間違いありません。

6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?

やはり神戸大学志願当時から直接指導を受けたいと希望していた金井壽宏教授のゼミに配属して戴けたことが最も大きな出来事です。私は所属する副作用情報処理部門自活力アップと、所属するメンバーがイキイキと働ける環境を作ることが目標でしたので、金井ゼミでは組織行動論とモチベーションについて研究する機会を得ました。学生時代の後半1年間を一緒に過ごしたゼミメンバーとは、同期生以上に深くて強い絆ができたと考えています。

仕事を続けながら通学出来る上に、最短で1.5年で課程修了するために、神戸大学のカリキュラムは見事なまでに組み立てられています。ところが、入学年の6月には“麻疹”による12日間の全学閉鎖、夏の終わりの“大型台風の接近”による講義繰上終了、そして本年2月には“大雪”のための繰上終了。予期せぬ出来事による講義スケジュールの乱れを修正するために、先生方はじめ学校関係者の皆さんには大変奮闘戴いたと思いますが、正直なところ学生にとっては“暫しの息抜き”となり、皆は「神風が吹いた」と言ったものです。 余談ですが、本年5月にも4回目の神風“麻疹”が吹きそうでしたが、大学側も“抗体検査?予防接種”という先手を打ち、経営学部・研究科では吹くことはありませんでした。もう一つ余談ですが、約30年ぶりに学生証を持ちました。お陰でかなりのコンピュータソフトをアカデミックプライスで買い込みました。

7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?

研究計画書では、私の所属する部門とそのメンバーを対象とした研究を修論テーマとして設定しておりましたが、昨年12月、所属部門を含めた本社機能全体の東京移転計画が発表されました。これにより、部門の再構築がなされ、調査協力者として想定していたメンバーのほとんどが退職することになり、修論テーマ決定寸前に新たなテーマ探しをすることになってしまいました。年明け早々、以前から暖めていた別テーマで急遽進めることになったものの、部門責任者として、移転を成功裡に完了すること、ならびに東京でのスムースな業務立ち上げが最重要課題となり、特に要員確保のために大阪-東京を2、3往復する週が続きました。一方、新しいテーマでのインタビューは大阪近辺で実施しなければならず、まさしく東奔西走の日々でしたが、これまでの講義やグループワークで培った“時間管理術”や“やり遂げる強い意志”のお陰で、何とか走りぬけること(修了すること)が出来ました。

東京に単身赴任することになり、学生生活最後の3ヶ月は東京からの通学となりましたが、さすがに神戸大学MBAコースは全国ブランドで、東は東京から 西は広島から通学している同期生もいて、1.5年間通い続けた彼らの熱意には敬服します。

8. これから受験を考えているみなさんへアドバイスをお願いします。

仕事をする中では先ずご自分なりのビジョンを描いてみて下さい。次に“蟻の眼”で、身近な範囲で構いませんから問題意識を持ち、批判的なスタンスと代替案を創り出すことを意識して下さい。同時に、目先のトラブルや課題だけとらわれることなく、“鷹の眼”で絶えず全体像を理論的に把握することと自分を客観的に見ることを努めることをお薦めします。そのためのトレーニングの場として、問題意識や疑問を受け止めて適確にアドバイスして戴ける多くのトップクラスの先生方が在籍し、年齢も業種も全く異なっているのに同期生同士が強い絆で結ばれる不思議な土壌・風土を持った神戸大学MBAコースは最適だと考えます。

もちろん入学するためにはハードルを越えなければなりませんが、神戸大学で学んだメンバーとしての絆を分かち合いましょう。是非とも挑戦して下さい。

 

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