北川信一郎 さん
京都市上京区役所保健部(上京保健センター) 勤務 2012年度修了生 松尾(陸)ゼミ
1. プロフィールをお聞かせ下さい。
2011年度入学の北川です。医学部を卒業後、臨床医を経て公衆衛生大学院に進学し、京都市役所に入職しました。現在は、市内の保健所で、感染症対策や医療監視などの保健衛生行政に携わっています。
余談なのですが、私と同様に大学院生活が2度目という同級生が複数いました。彼らを見ていて気付いたことがあります。自分の専門は専門で大切にしつつも、飽くことのない探究心、新しい分野に挑戦するんだというマインドを共通して持っていました。
2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?
それが不思議なことに、よく覚えていないのです。今から振り返ってみると、必然的に導かれてきたのかなと思います。
国内MBAランキングなるものがありますが、参考程度に考えて下さい。MBAは「どこで学ぶか」も大切なのですが、「誰と学ぶか」の視点がより重要だと、今になって強く思います。
他の国内MBAの多くは、入学時の平均年齢が20代から30代前半であるのに対し、神戸大学の場合は40代少し前にピークがあります。つまり、Executive MBAにより近く、現役の幹部、幹部候補達の課題に取り組む姿勢は真剣そのもの。一流の教授陣はもとより、学生同士がより高みを目指した学習をおこなう、これこそが神戸大学の特筆すべき特徴であると思います。
3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?
『eureka』の執筆依頼があり、出願時に提出した書類のコピーを取り出しました。 コトラーの『Marketing in the public sector(邦題:社会が変わるマーケティング?民間企業の知恵を公共サービスに活かす)』を引用し、研究計画書には、「ソーシャル・マーケティングを学びたい」旨のことが書き記されていました。
ところが、実際にはゼネラルマネジメント、公共経営、品質管理、組織行動等の授業を受ける中で問題意識が広がっていきました。最終的には、松尾睦教授にご指導いただき、「公衆衛生医師の経験学習と人材育成」というタイトルの論文を作成しましたが、このことは、自分自身の今後のキャリアを考える上で、とてもよい機会となりました。
國部教授がゼミ担当者紹介の文章の中で、次のように書かれておられました。「大学というところは、学生に期待するところではなく、学生が大学に期待するところです。しかし、優れた大学は必ず学生の期待を裏切ります。なぜなら、大学に入る前に学生が持っていた期待が、実はそれほど大切なものではないということを伝えることが、つまりもっと重要なことが他に存在していることを知らせることが、大学教育の使命だからです。」
私に限らず、多くの同級生が、この予言通りになったのではないでしょうか。
4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。
金曜日の授業も履修していましたので、土曜日の課題を合わせますと、かなりの量になります。私は朝型人間なので、早寝早起きを心がけ、毎朝3時に起床してパソコンに向かうようにしていました。最近は、フェイスブックなどのソーシャルメディアのお蔭で、誰が起きているのかが分かります。ですので、時にチャットで励まし合いながら、工夫をすることで課題をこなしました。
少し話が変わりますが、先日、原稿の参考にと思い、提出したレポートを読み返しました。在学時に切羽詰まった状態で書いた文章は意外や意外、完成度が高く、我ながらよくこんな文章が書けたものだと、充実した日々を懐かしく振り返りました。
5. 神戸大学の修学環境についてお聞かせ下さい。
プロジェクト方式科目(ケースプロジェクト、テーマプロジェクト、MBA論文作成)と講義科目が並走するようにカリキュラムがうまく組み立てられています。
ケースプロジェクトでは、問題となるケースは事前に設定されており、主にグループダイナミクスの醍醐味を体験しました。次のテーマプロジェクトでは、問題となるテーマ自身を探すことから始めなければならず、格段に難易度が増します。グループの中での議論を踏まえ、いかに問題の核心に迫ることができるのか、方法論も含めてとにかく熟慮することの必要性を学びました。これらの経験を踏まえ、ゼミでのMBA論文作成に入ります。論文作成は、個人での孤独な作業になりがちですが、ゼミ形式であり、あら不思議、いつの間にか論文が出来上がったように思います。
一方、講義科目にも巧みな工夫がなされています。授業は三品教授のゼネラルマネジメント応用研究で始まり、いきなりエンジン全開。最後のキャップストーン(頂上に置く冠石の意)科目は金井教授の組織行動Ⅱで総仕上げとなります。その間に、ビジネスに必要な科目が網羅されています。
また、社会学系の蔵書の豊富さと、全国に点在する卒業生・修了生の強いネットワークは特筆することができると思います。これが、在学中、修了後になって効いてきます。まさに、「日本の経営学の発祥の地」と言われる歴史の重みを感じる瞬間です。
6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
1つだけあげるとすると、テーマプロジェクト研究ですね。テーマも自由、方法も自由、何もかもが自由。自由ということが、これほどまでに辛いとは思いませんでした。
しかし、チームのメンバーで考え抜くことで、最終的には『潰れた企業の経営者の語りに学ぶ』という、とても深いテーマに行き着くことができ、加護野名誉教授、金井教授からは高い評価を頂くことができました。こうして得られた達成感は、また格別です。
我われ京都チームは、毎週末、帰りの阪急居酒屋電車を満喫しました。車中にほろ酔いセットを持ち込み、反省会を兼ねた宴会に興じていると、気が付いたら京都に到着という生活を送っていました。
また、北は北海道、南は沖縄まで、全国各地へインタビュー調査に出かける同級生の行動力には、正直、驚かされました。それらが、後のMBA論文にプラスの影響を与えたということは言うまでもありません。
7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
とかく専門職は、一人、あるいは仲間内で仕事をしがちです。しかし、それでは限界があります。MBAで多くのことを学んだことから、それらの知識を活用し、「しくみ」で組織を動かしたいと思うようになりました。
加登名誉教授のレピュテーションマネジメント、三矢教授の戦略マップ、原教授の技術経営、金井教授のプロセスコンサルテーションなどは、早速、現在の業務に活用し、確かな手ごたえを感じつつあります。
また、企業理念やフィロソフィー、自身のキャリアにも関心を持つようにもなりました。現在は在学中に読み残した書籍のみならず、関連図書にまで手を伸ばし、毎日、書を読むひと時を楽しんでいます。
8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。
毎年、公務員は少数派で、残念に思います。私の学年では、国際公務員の方と地方公務員である私の2名のみでした。公務員にこそ、是非、神戸大学MBAで学んでもらいたいと思います。企業研究から得られた知見から学ぶことはたくさんあると思います。また、技術系専門職の方にも、お奨めしたいと思います。
受験について一言。提出書類の「1.キャリア・ハイライト」はとても重要だと思います。なぜなら、その文章であなたの第一印象が決まるからです。神戸大学は、「どのような学生を求めているのか?」という視点から、ご自身の「一皮むけた経験」を思いっきりアピールしてください。トップスクールである神戸大学には、よくある国内MBAの受験参考書はあまり役に立ちません。ですので、海外MBAのエッセー等を参考にするのがよいかと思います。
それでは、みなさんのご健闘を祈念して、筆をおきたいと思います。