佐山美砂子 さん

西日本電信電話株式会社 勤務 2011年度修了生 平野(光)ゼミ

1. プロフィールをお聞かせ下さい。

2010年度入学の佐山美砂子です。1996年に大学(法学部)を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)に入社し、現在は西日本電信電話株式会社(NTT西日本)に在籍しています。法人営業部でSI業務、企画業務に従事し、2009年よりNTT西日本-関西 企画部企画部門経営企画担当に所属しています。業務は、お客様や社内の声を会社の変革に繋げることを目的としたタスク横断プロジェクトの企画・運営を主に行っています。

タスク横断プロジェクトでは、「会社を変えたい」という熱意がある社員を募り、半年ごとに10チームを編成し、経営課題の解決に取り組んでもらっており、現在は150名弱の方に参画頂いています。取り組むテーマは設備構築から営業戦略に関わるものまで多岐に渡る上に、業務プロセス変更や組織改変といった実行に労力のかかる施策も生まれることから運営は一筋縄ではいきませんが、社員がオーナーシップの感覚を持って組織全体にとってより良い選択を導き出すというこの活動に、できるだけ多くの方々に共感して頂けるよう、日々取り組んでいます。

2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?

神戸大学MBAとの出会いは、8年前です。NTTの同期が神戸大学MBAに通学していると聞き、その存在を初めて知りました。しかし、当時は出産を控えており、「仕事」と「育児」をどのように両立するかが最優先課題で、同期の大学院進学は別世界の出来事、昼食を取りながら話を聞いてそのモティベーションの高さにただただ感心するばかりだったことを覚えています。

自身のキャリアプランに神戸大学MBAを追加したのは、現職の経営企画担当に異動する前後です。それ以前は、法人向けの営業戦略の企画を行っていましたが、NTTの商品知識や社内調整といった組織特殊能力ばかりを活用する業務であったため、自身のスキルアップの方向性に漠然とした不安を感じていました。そんな中、経営企画担当に異動し、財務や組織戦略など、より汎用的で広範囲な知識が必要となり、自身にそれが欠けていることを実感しました。そこで、8年前の記憶が蘇り、チャレンジをしようと思い立ちました。 MBAの中でも何故、神戸大学だったかというところは、「プロジェクト方式」と「By the Job Learning」という神戸大学MBAが持つ2つの特徴に魅力を感じたことが挙げられます。 「プロジェクト方式」については、以前、会社派遣で受講した「グローバル・マインド養成講座(関西生産性本部主催)」で経験し、とても得るものが大きかった「異業種の方々と課題を共有し、ディスカッションをする」という点に近いことから、当初よりとても魅力に感じていました。これには、「ケースプロジェクト研究」や「テーマプロジェクト研究」が該当し、これらの科目では4?7名のチームで約6カ月間、チームで設定したテーマについて、企業等へのインタビューを軸に研究活動を行います。バックグラウンドが多様なチームメイト同士で、夜遅く(朝早く?)までとことん議論し、一つのアウトプットを苦しみながら形成したことは、当初の想定以上に有意義な経験でした。

「By the Job Learning」については、平野光俊教授がよくおっしゃってらっしゃる「理論と実務の融合」というところに共感したことにから魅力に感じました。実務においても、型やルールに則っていないものはどんなに素晴らしくても評価されにくいですし、逆に型やルールにがんじがらめになってしまってはブレイクスル?できないことは実感していました。その意味で「理論と実務の融合」はとてもフィットしましたし、実際のカリキュラムでも、理論を学びながら実務を内省する機会はたくさん作られ、こちらも当初の想定以上に有意義な経験でした。

3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?

私が、神戸大学MBAコースで獲得したいと思っていたのは、仕事を行う上でのフレームワークです。それまでは、NTT内という狭い世界観をベースにした見識で直観に頼って仕事を行ってきました。運も味方してくれましたし、とても優秀な上司や同僚に巡り合えた結果だと思いますが、満足するアウトプットに到達することができていました。しかし、確固たるフレームワークに基づいていないため、他者への説明が難しく、再現性、拡張性がないことは、評価される機会が多くなるほど痛感する点でした。

神戸大学MBAコースを通じて、経営学の第一線の教授陣から多くの理論を学び、多様なバックグラウンドを持つ同期生から自分では持ち得なかった視点を学び、フレームワークのレパートリーも増えて事象にスピードを持って対応できるようになりましたし、また、後進の育成にも役立っていると感じています。

4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。

私は幸運なことに当時の上司が神戸大学経営学部出身であったため、自分のことのように親近感を持って頂き、いろいろな面で配慮して頂きました。例えば、自身が主管の経営戦略会議案件の会議付議日に、「テーマプロジェクト研究」の企業インタビューが入ってしまい、思い切って相談した際も、「大丈夫だから安心して行ってきなさい。」と快く送り出して頂きました。また、社内の様々な方々に修士論文作成のためのアンケートにご協力頂いたり、同じ担当内の皆さんにはプロジェクト研究のインタビューや論文執筆で休暇を頂く際に配慮して頂きました。私が工夫しているというよりも、職場自体がコミュニケーションの深みを重視し「お互いをrespectする」という雰囲気があるため、進学についても通学についても周りに相談するのは自然な流れだったように感じています。こういった職場環境だからこそ、チャレンジしようと思ったのかもしれません。 周囲の理解さえ得られれば、あとは、睡眠を削ればなんとかなります。課題図書もレポートも、毎週複数あります。私の場合、週に3日は子どものお迎え当番なので、就業後に帰宅して家事をして子どもを寝かしつけて、だいたい10時ぐらいから午前2時ぐらいまでを勉強時間にあてていました。小島教授の「経営戦略応用研究」や松尾教授の「オペレーションマネジメント応用研究」の際はそれが午前4時ぐらいだったと記憶しています。ただし、お迎え当番でない日は、よく、友人との食事会を入れて気分転換していました。課題が尋常でない量なので頑張り過ぎてしまいがちですが、オンとオフを切り替えて上手に遊んで上手に学べたことが、楽しく続けることができた秘訣かなと今では思っています。また、自分でやらなくても良いものと自分でやらないといけないものを分けて、やらなくても良いものは極力工夫して別の手段を講じることで時間を作るようにしていました。私の場合、食器&洗濯乾燥機とルンバは、勉強や子どもとのスキンシップの時間を確保するため必需品になっていました。

5. 神戸大学の修学環境についてお聞かせ下さい。

「聞くだけの授業」にならないよう、「深く考え、発信する」ように、工夫されたカリキュラムだと感じています。

「深く考える」について、入学してすぐの「ケースプロジェクト研究」においてまず追求することになります。「ケースプロジェクト研究」では、毎年、1つのテーマが設定され、それに最も適切と考えるケース(商品あるいはサービス)を選定するところから始まります。2010年度は「Reinvention?何かを始めて生むのではなく、単なる改善・改良でもなく」というテーマでした。まず、「Reinvention」とは何か、という言葉の定義を深く考え、チームメイト同士で議論し、合議を図る必要がありました。なかなか意見がまとまらず、ほんとうに深く考えさせられたのを覚えています。また、多くのカリキュラムが、最後に「内省レポート」の提出を設定しており、最初から最後まで「何をアウトプットすべきで、アウトプットした過程で何を得て、得たものを次に何にインプットするか」を深く考えさせられました。

「発信する」については、ほとんど全てのカリキュラムで取り入れられていたディスカッションやグループ発表がその役割を担っていたと思います。講義を座ってただ聞いている時間はおそらく半分もなく、多くの時間がディスカッションやグループ発表にあてられています。ディスカッションは6名前後の少人数が基本で、事前課題を読んだ上でということになるので、何かしら自身の意見を持ち、またそれを発信しなければなりません。また、ディスカッションの結果を発表する機会が設定されており、短時間にグループの意見をとりまとめて端的に発信する必要がありました。

以上のような特徴は、「深く考える」が理論寄り、「発信する」が実務寄りとも捉えることができ、「理論と実務の融合」が成されているという感想も持っていました。

このような特徴を持つカリキュラムを経て、神戸大学MBAを受講して良かったと思う点の1つは、多様な価値観を持つ異業種の方々と深いところまで議論ができたという点です。1年半の中で「深く考える」も「発信する」もほとんどをチームで実施してきました。チームは固定でなく、授業または講義時間によってもバラバラなので、70名近い同期生のほとんどの方と一度は議論することになります。バックグラウンドが多様ですので、お話を聞くこと自体も新鮮でしたし、私自身が当たり前として話すことを驚かれるという経験も大変新鮮で貴重な体験でした。

6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?

特に印象が残っているのは、「平野ゼミ」と「RSTウェルカムパーティー」です。「平野ゼミ」は、平野光俊教授のゼミで人的資源管理が主要分野で私が所属したゼミになります。神戸大学MBAは、年度ごとにゼミを担当される教授が5名指定されています。どのゼミに所属するかは、当年度の教務担当の教授が学生の研究志望に応じて各ゼミに約15名ずつアサインする形をとっています。

ゼミによって運営方法は違うのですが、平野ゼミの場合、1?2週間に1回、半日のゼミを開催し、それぞれの研究関心・問題意識について一人一人発表していました。その内容をゼミ生同士でディスカッションし、また、先生方より、理論からどのようにアプローチできるかについての示唆を頂きます。平野教授は、研究関心・問題意識を大事にされる方で、平野ゼミでは、ほとんどのゼミ生がここに多くの時間を費やしました。しかし、このプロセスを十分に経たことによって、修士論文における研究を自身の納得いくものに繋げることができたのではないかと思います。ただ、導入部で時間をかけたせいか、執筆を始めたのは8月からというゼミ生も多く、論文提出直前に社会人院生室に通い詰めていたのは平野ゼミ生がほとんどでした。私もその一人で、終バスに気付かず、深夜に六甲山を歩いて降りたのは今ではとても懐かしい思い出です。「ゼミ」と「修士論文」は神戸大学MBAの特徴的なものであり、ハードな側面もありますが、その分、ゼミ生同士の結束も固くなり、この関係はMBAを修了して末長く続くのではないかなと感じています。

「RST」とは、カリキュラムの一つで、Cranfield大学(イギリス)と神戸大学MBAの短期の交換留学になります。Cranfield大学の学生を迎えての「日本プログラム」の最初に行われるのが「ウェルカムパーティー」です。2010年度のウェルカムパーティーは、「日本の遊び- 2010 Asobi-Olympic -」というテーマのもと、開催しました。Cranfield大学の学生に様々な日本の伝統的な遊び(飴食い競争、福笑い、ベイブレード等)を体験して伝統に触れてもらいつつ、間近に控えたロンドンオリンピックを模した神戸大学Vs Cranfield大学のAsobi対決を通して日英友好を実現することがコンセプトでした。飴食い競争では侍や町娘などの被り物をかぶり、粉で顔を真っ白にしながらフラフラとゴールする学生たちに大いにもりあがり、柔道や剣道の体験では初めてとは思えないCranfield大生の迫力ある投げ技や打ち込みに拍手が起こり、そして、最後は全員が阿波踊りを踊ってしめくくりました。これらの企画は、通常の授業や仕事と平行して準備が進められ、ほんとうにハードでしたが、RSTメンバーが全員参画して知恵を出しあって実現したもので、いずれの企画も全員参加で盛り上がり、国を超えた一体感を感じることができたとても印象的なイベントでした。MBAというと、「経営学」に注目されがちですが、このようなグローバルな経験ができることは、神戸大学MBAならではなのではないかと思います。

7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?

1年半、1つ1つの授業や課題において内省することはあっても、自分の変化を客観的に眺める余裕がなかったのですが、修了式において金井教授がおっしゃられた言葉に自身の変化として感じるものがありました。それは、「Resilience(回復力、弾力性)」、「Redemption(あがない:苦境をポジティブに転じる)」という点です。 私が長年従事している企画業務は、道の無いところに道を創る業務が多く、妥協しようとすれば妥協できてしまう業務でもあります。そして、妥協しなければ、既得権益やリスク回避とのハレーションといった逆境がどうしても付きものになってしまいます。「会社全体のことを考えればこれが取るべき道なのに、どうしたら共感してもらえるだろうか」と悩むことは少なくありません。神戸大学MBAにおける学生生活をとおして、これらに対して「イライラ」とするのではなく、粘り強く他者の協力を得ていくための礎となる「信念」や「価値観」がより強固になったのではと感じています。より具体的には、まだまだストレッチできる自分自身を見つけた時の嬉しい発見、そしてストレッチは決して孤独ではなく仲間やチームメイトがいることの安心感、これらが、小島教授の「経営戦略応用研究」の過酷なレポートや直前一週間はほとんど睡眠を取らなかった修士論文執筆といった、通常ではできない体験により培われ、「Resilience(回復力、弾力性)」、「Redemption(あがない:苦境をポジティブに転じる)」を高めていったように感じています。

8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。

「深くかがめばかがむほど、高くジャンプができる」、神戸大学MBAはそんなところだと思います。そして、努力を共に楽しむことができる仲間がいるところです。最近、ストレッチが足りていないなあ、と感じてらっしゃる方はぜひ、チャレンジしてみて下さい。