藤野理之 さん
株式会社電通勤務 2006年度修了生 小川ゼミ
1. プロフィールをお聞かせ下さい。
電通関西支社のプロモーション・メディア局に所属しています。仕事内容は、キャンペーンの企画から広告制作、WEBプランニング、商品企画、店頭スポーツ・マーケティング、市場調査、PR等。広範な業務を行っているため、ユーティリティー的な動きをしているとも言えます。
2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?
まず、「なぜMBAか」から説明します。会社に入る前から、大学院に通うことは決めていました。大学在学中から、大学院に行きたいという認識だったように覚えています。これは、私が大学生活の4年間を海外で過ごしたことにあるのかと思います。その当時の友人との雰囲気としては、社会人になっても大学院に進む等、勉強を続けることが普通だったので、大学院に行くことは決めていました。ただ、学ぶ分野については全く白紙の状態でした。会社に入った後に大学院進学を考える度に、MBAをはじめ、環境系、美術関連等々を思考錯誤していたと思います。海外のMBAをチェックし、英語の勉強を集中的にした時期もあります。一方で会社入社後の意外な出来事としては、仕事が非常に面白かったことでしょうか。現在もそうですが、仕事を通じて学ぶことが多いため、大学院のために会社を辞めること、または休職をする気持ちは、会社で働く年数が増すにつれてなくなりました。こうしたことから、会社の職務機会を活かしながら、学校に通学する方向性に絞り込まれてきたと思います。結果、海外の大学院進学という選択肢は無くなりました。
次に学ぶ分野です。MBAにした要因は二つあります。一つは、前述の通り、現状の経験と環境を最大に活かすためにマーケティングについて学びたい事。そして、二つ目は、業務で経営を学ぶことです。これも業務上、経営の根幹に関わることが多くなってきたため、可能な限り決定権者の方の目線を理解したいという気持ちがありました。責任をもって発言、提案をする自分になることも大きな要因でした。
本題の「なぜ神戸大学のMBAか」という問いへの答えです。会社に入って関西に来るまで、神戸大学という学校自体は知りませんでした。これは、僕の見識が驚くほど低かったせいでしょう。神戸大学は、電通入社後、先輩が神戸大学に通っていたことで最初に認識しました。ただし、その当時は、「MBA」に対して興味が弱く、「神戸大学。知らんなあ」というものでした。我ながらひどいレベルです。その後、大学院で学ぶ分野をMBAに絞ってリサーチしたところ、神戸大学に非常に興味をソソラレる先生が多くいることを認識した次第です。また、そのプログラムも会社に通いながら学校に通うというBJL(By the Job Learning)というものであり、私が求める環境にマッチしていました。こうしたことから、神戸大学に決定をしております。他の学校は受けていません。神戸大学のキャンパスが緑と起伏に富み、眺望も美しいことも気に入っています。
3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?
非常に高いレベルで目的を達成できました。当初の想定以上の到達感を得ています。具体的には、自分自身の経験と考えを整理ができた事、そして仕事の将来像を描くことができました。これらのことは、神戸大学で様々な授業を受け、最終的に修士論文「『他薦型』マーケティング・コミュニケーション」にまとめた時点で達成できたと思っています。タイトルから分かるように、私の修士論文のテーマはマーケティングとなっています。しかしながら、入学してから学んだ経営論、組織論、ベンチャー論等々のインプットによって、マーケティングを全く異なる視座で捉え直すことができたと確信しています。自分の考えに厚みと確度を生じさせることができました。つまり、想定以上のことを神戸大学で達成できたと確実に言えます。感謝しています。
4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。
仕事と学業の両立は大変でした。更に、家庭、趣味等がありますので、これらのバランスを取ることにチカラが必要な毎日でした。体力、処理能力、精神力等々のチカラでしょうか。例えば、授業で相当量の予習が求められますので、その時間をとるために休日を含め、一日、一週間の生活リズムを変える必要が出てきます。私の場合は、出張が多いこと、仕事の終了時間が遅いこと、夜は酔っ払っているコトという三重苦があったので、何かと闘いでした。また、子供もMBA1年目の夏に生まれたので、相応の負荷がかかったように思います。工夫としては、基本的な事ですが集中することでしょうか。とにかく時間が足りないので、移動中の飛行機、早朝の時間を集中して勉強のために使ったように思います。
学友皆が同様にハードな環境下で学んでいることにも励まされたのではないでしょうか。直接、お互いに励ましあうことはないのですが、皆の姿勢と能力に後押しされたからこそ、卒業まで続いたと感じています。今では、神戸の面々を同じ釜の飯を食った仲間だという感覚を持っていまいます。こうしたことから考えると、仕事をしながら神戸大学のMBAに通うことは、一義的には過剰な負担に見えますが、二義的には、負担ではなくて自分の能力をストレッチするためには相応の負荷だったと振り返ることができます。正確には、仕事をするための能力だけではなく、家庭、友人関係、趣味等々・・・、つまり人としてのストレッチのために必要な負荷だったと考えています。余談ですが、前述の通り1年目の夏に子供が生まれました。その当時、授業のケース・スタディで製薬会社の「エーザイ」を扱っていました。頭の中は、課題のエーザイで一杯なので、子供の名前を「藤野瑛斎(えいざい)」と名づけようともしていました・・・。それは、幸いにも冷静な嫁によって却下されましたが、これ程、頭の中はケースで一杯に追い込まれたりします。皆さん、お気をつけ下さい。
5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。
特色としては三点あると思います。一つは、BJL(By the Job Learning)になっていることです。仕事をしながら大学院で学ぶことで、学習と実戦を直結させるものになっています。二つ目は、30代半ばで10年以上仕事経験を積んだ層を中心に多くの年代の学生が多いこと。各分野の経験豊富な学生が多いので、いわゆるフルタイムのMBAとは雰囲気が違うと思います。ディスカッションが机上の空論にならず、非常に脳が刺激されます。また実際に毎日の仕事の中でMBAの知識と友人関係に助けられます。そして、三つ目は受講型の授業を経てゼミ型へと入り、学んだことを自分の課題に照らし合わせて最終的に修士論文にまとめていくことでしょうか。通常の仕事の環境では、責任をもって最初の企画から完成形までの全てを行う機会は残念ながらさ程ないと思います。修士論文では、全てを自分の責任をもって全うすることになります。違う言い方をするならば、誰に対しても言い訳できない自分の能力のアウトプットといったものでした。結果、多くの文献に目を通して幾度も自分の考えを練り直すことで、自分自身を振り返ることができたと思っています。
6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
幾つかあります。先生が気さくです。先生と授業の後に一緒に食事をすることが多かったことも印象として残っています。全体的には学生を含め、自然な雰囲気があったといえばいいのでしょうか。もっとも、MBAの入学年によって変わることもあるので、年度によって雰囲気は違うのかもしれません。 出来事として最も心が揺さぶられたのは、やはり、修士論文の審査が終わった時、そしてゼミの祝賀会です。気持ち的には大いにうれし泣きをしました。
7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
私の場合は、神戸大学で学んだことが仕事の実務に直接、役立っています。ベンチャー事業立上げ支援に伴う経営戦略、新規事業支援のための事業計画やファイナンス、ブランドのリテンション、自分の仕事環境を向上させるための人事組織論等々、スキルをあげることができています。また、自分の生き方の中長期的な展望を見据えることにも役立っています。毎日の過ごし方も変わっています。
8. これから受験を考えているみなさんへアドバイスをお願いします。
学校を卒業して社会人になると、人は自分で意図をもって節目を作らないと成長することを忘れてしまうのではないでしょうか。私の場合、神戸大学は、大きな節目となりました。熱くて楽しい大切な時間だと思っています。私の好きな言葉で、「Broaden your horizon.」というものがあります。「心の地平線を広げる」(見聞を広げる)という表現です。MBAは、まさに多くの意味において自分自身の地平線を広げる機会になりました。私は会社の同僚や友人に、機会があれば神戸大学のMBAを薦めています。実際、会社の後輩が、今、学生として通学してもいます。私自身は、神戸大学MBAによって広い地平線を見据えている仲間が多くなることを望んでいます。