浦郷照明 さん
日本電産株式会社 勤務 2019年度修了生 三品ゼミ
1. プロフィールをお聞かせ下さい。
学卒後、伊藤忠商事勤務を経て日本電産に入社。現在IR(投資家向け広報)を担当しています。
2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?
キーコンセプトの「働きながら学ぶ(BJL:By the Job Learning)」に共感しました。これは「社会人として何年か企業に勤めた者が、実務の最前線で直面する課題を対象としながら学ぶ」という意味です。参考までに私の同級生(18年度入学)の年齢層をみると、40歳以上が44%を占め、35歳以上では75%に上ります。どうやら「大人のMBAコース」と言えそうです。入学当時49歳だった私の背中をひと押ししてくれた要因です。
3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?
はい。我流を脱し、グローバル標準とされる経営リテラシーを学び取ることができました。単なる勉強なら独学で十分だったかもしれません。私がMBAにこだわったのは「身に付く学び」まで昇華させたかったからです。仕事でも何でもそうかもしれませんが、失敗して学ぶことが多かったと思います。コースに臨む際一つ心に誓ったのは「素の自分」をさらけ出し、沢山の失敗から学びを得る姿勢です。グループ研究発表会では率先してプレゼン役を引き受け、授業やディスカッションの席でも積極的に発言するよう努めました。いまも記憶に刻まれているのは、やはりそういった場面の一つ一つです。常に全力投球でわれわれ社会人学生と向き合ってくださった神戸大学MBAの卓越したファカルティ。そして時にクールな頭、時に喜怒哀楽丸出しでぶつかり合えた同級生こそが、私にとってかけがえのない存在です。身に付く学びを得られたと思います。
4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。
当時の1週間はこうです。金曜夜の梅田教室へは職場から直行。土曜は朝から深夜まで六甲台に缶詰め。日曜は自宅で予習・復習や課題の考察。月曜以降は帰宅後の体に鞭打ってレポート執筆。もうこの繰り返しです。仕事で疲れた日、自宅の机上で寝落ちして朝方目覚めたこと。グループ研究討議が白熱して思わず終電を逃したこと。当時は必死の連続でしたが、今となってはすべて微笑ましい思い出です。仕事と学びの成就は、職場の上司や同僚の理解、そして家族の支えがあってのことです。ただただ感謝の念に堪えません。
5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。
カリキュラムの主軸をなす「コア科目(5教科)」についてお話します。「組織行動・人的資源管理」は過去のキャリアで触れることのなかった分野で新鮮そのもの。人事施策の奥深さや専門性が理解できグッと視野が拡がりました。「技術・オペレーション」は、製造業に携わっているものの体系的にMOTを学ぶ機会がなかった私には興奮と感動の連続でした。「戦略」はレポートが徹底して「ケースで学んだフレームワークを自社の事例に当てはめて考察しなさい」という課題で、いわば冒頭にて触れたBJLの特訓道場でした。小川進教授による秀逸な授業展開もコア科目の総仕上げとしてふさわしい内容でした。「英文会計・ファイナンス」「マーケティング」も私にとって新たな気づきが満載であり、総じてよく練り上げられた充実度抜群のカリキュラムでした。
6.在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
MBAゼミでは三品和広教授に師事することができました。『戦略不全の論理』(東洋経済新報社、2004年)や『経営は十年にして成らず』(東洋経済新報社、2005年)、『経営戦略を問いなおす』(ちくま新書、2006年)といった著書を以前から読み、私淑していた先生です。三品先生は、その根底に確固とした歴史観を据えた経営戦略を語られます。独ビスマルクの格言を引き、愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ、と。戦後、日本の製造業は「(社内の)経験こそ学びの母」で発展を遂げ、強い現場は健在。しかし次代を担う経営者は不在、とも語られました。三品先生の近著(「経営戦略の実戦」シリーズ)には膨大な数のケース(他社の成功と失敗、すなわち歴史)が収められています。MBAコース修了後のいまも学び続けています。
7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
出願時に書いた「研究計画書」から「修士論文」のテーマ設定が180度ガラッと変わった者の一人です。前者は現職で携わるIR業務に端を発する内容でしたが、三品先生の薫陶を受け、関心の中身そのものが高次の企業経営(戦略)へとシフトしました。
8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。
「一生懸命働き、思うように生きよ!」。日本電産(株)永守重信会長の言葉です。私は学卒後勤務した商社を飛び出して日本電産に入社しました。一生懸命働いて自分の足場を固め、思うように生きよ、と自ら精神を解き放つ。この循環が高成長を促す要諦ではないでしょうか。神戸大学MBAで掴んだ確かな学びを糧にまた一生懸命働き、さらに一皮むけた自分を目指してがんばります。六甲台の学舎はこれからも「思うように生きていく」ための私の原点。心のパワースポットです。