山岡克 さん

武田薬品工業株式会社 勤務 2019年度修了生 松尾(博)ゼミ

1. プロフィールをお聞かせ下さい。

私は、工学系の修士課程を修了後、医薬品企業の研究開発部門で医療用医薬品開発業務に約15年従事しました。はじめの10年は、研究職として新薬の開発を行い、その後の5年は、製剤開発のプロジェクトマネジメント部門として開発に携わりました。この間、海外現地法人で働く機会もいただき、医薬品開発を様々な視点で見てきました。

2016年に現在の会社にキャリア入社し、サプライチェーンマネジメント部で新製品の製造所の選定、発売に向けたサプライチェーン構築のプロジェクトマネジメント業務を行っています。また、ライフサイクルマネジメントとして、発売後の製品の安定供給やバリューチェーンの最適化についても検討しています。

2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?

神戸大学MBAを意識したきっかけとなったのは現在の会社の上司でした。上司も神戸大学MBAの修了生であり、在学時の経験談や苦労話を伺う機会がありました。その中で、神戸大学MBAにおける数々の学びが上司のキャリア形成に大きく影響していると感じ、神戸大学MBAを意識するようになりました。

MBAを学ぶにあたって、他大学のビジネススクールについても調べ、体験入学もしました。理数系出身の私にとっては馴染みの薄い分野でしたので、他のビジネススクールのMBAプログラムも魅力的で興味を惹かれましたが、神戸大学MBAの体験フォーラムに参加して、気持ちが一気に神戸大学MBAに固まりました。三品先生によるゼネラルマネジメント応用研究の公開授業を聴講し、私が学生時代に受講した講義、他のビジネススクールの講義とは全く違う緊張感と迫力に魅了されました。講義後のプログラム説明において、神戸大学MBAのカリキュラムや働きながら学べる環境といった点に優位性がある事もあらためて認識でき、神戸大学MBAを選択する事に決めました。また、これは偶然なのですが、体験フォーラムに参加した際、2018年度入学生のゼミ指導担当教官のお一人が私の上司がお世話になった松尾博文先生である事を知り、ご縁を感じて神戸大学MBAで学びたいという気持ちを一層強くしました。

3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?

神戸大学MBAに入学したいと考えたのは、経営学を体系的に学びたかったからですので、この点について言えば目的は達成されたと思います。

私は、これまで自己啓発に積極的ではなく、極端に言えば、業務遂行に必要な知識を職場内の訓練や会社から与えられる教育だけで身に付けていました。一緒に仕事をする周囲の方に恵まれ、実務から学べる事が非常に多かったので、業務を行う上で大きな支障はありませんでした。しかし、現在の職場でマネジメント層と接するようになり、科学からビジネスまで広範囲に及ぶ議論への備えが足りないと感じるようになりました。業務を通じて学んだノウハウや知識を第三者との議論に用いるためには、相手と共通の理解ができるよう理論的理解へ変換しなければなりませんが、私にはその変換に必要な知識が不足していました。上司からは、ビジネスの思考に基づいたアプローチと相手に対して論理的に説明する能力を開発するために、経営学を体系的に学ぶ事を勧められました。

神戸大学MBAで経営学を学んだ結果、経営学の知識をツールにマネジメント層と共通の言語で議論できるようになり、対話がスムースになったと感じています。しかし、学んだ知識を自分のモノとして完全に活用できているわけではなく、今もひとつひとつ確認しながら業務に活かそうとしています。MBAで学んだ知識を実践の場で継続して活用し、意図せず使う思考になった時、本当の意味で目的が達成されたと言えると思います。

4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。

上司以外にも社内に本学の修了生がいたため、困った時には先輩方に相談に乗って頂きました。同僚や家族も協力的で、私は業務と学業を両立する上で、周囲の環境には非常に恵まれていました。しかし、タイムマネジメントには苦労しました。

入学当初は、同時進行する授業の予習と課題レポートの作成、プロジェクト研究の調査を機械的に処理することしかできず、業務と学業の上手な両立や時間の有効活用といった事を考える余裕は一切ありませんでした。それでも、時間の経過とともに少しずつ慣れてきますので、与えられた課題をこなすだけであれば業務との両立は困難ではなかったと思います。しかし、優秀でモチベーションの高い同級生の方々と学生生活を過ごし、皆さんのお話を伺っていくうちに、MBAコースで与えられるカリキュラムを消化するだけでは、神戸大MBAで学んだ事を実践できないと思うようになりました。

それ以降、プラスアルファの勉強ができる時間を作る努力をしましたが、1年半の長丁場ですので、私は家族との生活についても考えるようにしました。論文の精読やレポートの作成は、一人の方が集中できるのはわかっていましたが、一人の時間を優先しようとすると、家族と過ごす時間が限られ、子供の面倒を見てくれる妻にも負担が掛かってしまいます。そこで、生活のリズムを大きく崩さずに学業の時間を確保する事を意識しました。

平日はこれまで通り朝は家族と朝食を済ませ、子供達が登校した後、少しの時間ですが教科書や課題図書を読んでから出社しました。会社では試行錯誤しながら就業時間内の業務効率を上げる努力をし、帰宅までに残った時間を会社や喫茶店で学業に充てました。帰宅後は、子供が勉強する時間に合わせて私も隣で一緒に勉強をするようにしました。休日も子供が勉強している時間は私も課題に取り組み、子供の勉強が終わると家族と外出してリフレッシュしました。休日の夜だけは、少し遅い時間まで一人で学業に取り組みました。

プロジェクト研究の集まりや修士論文の調査で休日でも不在にする事があり、家族に負担を掛けてしまった時期もありましたが、それでも他の学生の方に比べれば、学業に充てた時間は短かったと思います。毎週の講義における同級生との議論や返却されるレポートを振り返ると、もっと学業に時間を割くべきであったという想いもありますが、私に関して言えば、家族との生活を尊重しながら学業と両立を図ったからこそ、MBA修了まで継続できたのだと思っています。

5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。

私が入学した2018年度は、前年度からスタートした新しいカリキュラムの2年目でしたが、専門科目は経営学の基礎となる学問、教授と学生の対話形式で行うコア科目は、ケーススタディをベースに実務に役立つ理論を学ぶことができ、非常にバランス良く構成されていると感じました。また、講義で学んだ知識を即座に実践する場として神戸大MBAの柱のひとつであるプロジェクト研究と修士論文が用意されており、1年半という短い期間で学び、そして活かす仕掛けがカリキュラム全体に施されていたと思います。

講義やレポートの中で学生の社内の事例を取り上げて頂く機会も多々あり、企業が実務で直面している課題を学生が持ち込んで議論できたことで、講義で学んだ経営学を具体的にどのように自身の業務に落とし込んで考えるのかという事も学ぶ事ができました。先生方も学生と一緒になって問題に向き合い、解を探す講義風景は、神戸大MBAの2つめの柱である「研究に基礎をおく教育」の典型ではないでしょうか。

6.在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?

テーマプロジェクト研究と修士論文は非常に印象に残っています。テーマプロジェクトについては、プログラム自体の苦労や学びも忘れられませんが、中間発表と最終発表にご参加頂いた神戸大学MBAの先輩方が我々の発表に対して的確なご指摘やアドバイスをされているのを目の当たりにし、修了生のレベルの高さに驚いた事を覚えています。中には厳しいご意見も頂きましたが、学生の発表に対して真剣に耳を傾けてくださり、厳しい中にも温かさがあり、神戸大学MBAというコミュニティの素晴らしさを感じました。

修士論文は、松尾(博)ゼミの研究テーマは幅広く、皆さんの研究を理解するのが大変でしたが、自分とは違う業界について学ぶ良い機会になりました。また、松尾先生が仰っていた自分の専門分野で経営学を語りなさいというお言葉は非常に印象に残っています。それまでは、経営学を学問として理解し、知識が拙いその分野に自身が身を置き業務や研究テーマについて語らなければならないという感覚でいました。しかし、自分の専門性を基軸にその中で経営的視点から論じるという発想に転換した時、少しですが経営学を身近に感じられるようになり、私が修士論文を執筆するプロセスにおける突破口のひとつになりました。加えて、プレゼンテーションの作法といったこれまで教わる事のなかった事もゼミで聴講することができ、研究以外にも多くのご教授を頂きました。

7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?

物事を考える時、最初から複数の視点を統合的に捉えられるようになったと思います。MBAで学ぶまでは、プロセスを進める中でヒト・カネ・モノの間で発生するコンフリクトをひとつひとつ解消しながら全体最適を図っていました。しかし、神戸大学MBAのコア科目を受講したことで大局的に物事を見られるようになり、はじめから幅広く課題を抽出し、ベースとなる最適解をイメージした上でプロセスを開始できるようになりました。全体を俯瞰した現状分析と問題の本質を探るアプローチができるようになったことで、業務への理解が一層深まり、その結果、ステークホルダーとの議論も対等かつスムースになったと思います。

物事を相手に伝える際、どうすれば自分の意図が伝わるか意識するようにもなりました。MBAの講義を通じて100本にも迫るレポートを作成しましたが、自分自身の考えを論理的かつ完結に表現する訓練の機会となりました。MBAの集大成となった修士論文の執筆でも客観的事実や自分の考えを文章に表す事の難しさを経験し、業務で文章を書く時には、相手が理解し易いような内容になっているか注意するようにしています。

8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。

神戸大学MBAの受験を考えているみなさんは、業界や所属企業でご活躍されている一方、ご自身の現在や将来のキャリアについて、何か思うところがあるのではないかと思います。順風満帆な中で少しでも悩みや考えてしまう事がある方は、是非、神戸大学MBAで学ぶことをお勧めします。

私自身も転職を考えた際、新しいチャレンジとしてMBAを学ぶ事も考えましたが、当時は自分の職業、実務と経営学の間にある有機的な関係性を自分の中では見出すことができず、最終的に転職という道を選びました。しかし、一度は断念したMBAを神戸大学で学んだことで、私の見方は変わりました。「働きながら学ぶ」という神戸大学MBAの3つめの柱は、単に学生と社会人を両立する事ではなく、企業で起こっている実際の問題を自分の研究対象にする事であり、神戸大MBAで学んだ知識は、職場で応用できるものばかりです。日常業務に対する問題意識や取り組み方次第で職場に居ながら学びが得られ、神戸大学MBAはその思考を養う訓練の場だと思います。神戸大学MBAで学んだ結果、今までと同じ仕事やチャレンジでも別の視点で見えるようになり、解決すべき課題、学ぶべき事はたくさんあるという事を感じています。神戸大学MBAは、視野を広く、視座を高く持ち、どのような環境でも自分自身が成長できるという事を気づかせてくれる場所です。