2021年度ケースプロジェクト発表会

2021年7月31日(土)

2021年度の神戸大学MBAケースプロジェクト研究の発表会を2021年7月31日(土)に開催しました。

昨年に引き続き、新型コロナウィルス感染症の拡大下において、発表会はオンライン開催となりました。プロジェクトが始まったころの4月は比較的新規感染者の少ない時期であり、対面での授業を行うことができました。肝心のプロジェクト立ち上げ時にリアルで会うことができたのは幸いでしたが、5月以降は第4波の感染拡大と緊急事態宣言を受けオンライン授業となりました。しかし、学生たちはコロナ禍以前と同様、あるいはそれ以上に熱意を持ってプロジェクトに取り組んできました。

今年度の課題は、「大塚家具はどのタイミングで、どのような経営判断を行い、行動に乗り出していれば、現在においても優良企業であり続けることができていたか」の検討でした。大塚家具は2015年に、経営方針をめぐる親子間の対立がプロキシーファイト(委任状争奪戦)にまでエスカレートし、注目を集めました。その決着後も大塚家具の業績は低迷し、2019年にはヤマダホールディングスの子会社となりました。しかし、大塚家具にも、栄光の時代はありました。1990年代の大塚家具は、優れたビジネスモデルを確立し、高収益をあげていました。2000年代以降は、若年人口の減少による家具の販売機会の縮小にリーマン・ショックが追い打ちをかけるという市場環境の変化が生じたのは確かですが、同じ時期に、同じ業界にありながらニトリは収益性を高めています。この違いはどこから生まれたのでしょうか。そして大塚家具はどのようなタイミングでどのような経営の切り替えを行っていれば、事業の低迷を回避できた可能性があったのでしょうか。

実際に始めると、プロジェクトは難航しました。当然ですが、生半可なアイデアでは、歴史の流れにあらがうことはできません。ここでこんな手を打てばよかったはずだと言うのは簡単ですが、それは本当に可能だったのか、本当に効果的なのか、という問いに耐えるアイデアはそう多くはありません。教員たちも答えを持っていないから、プロジェクト研究の対象になっているのです。

しかし、さすが神戸大学MBAの学生です。成果発表会にはどのチームもきっちりと検討結果を仕上げてきました。最も好調だった90年代初頭に手を打つべきだったという説や、社長交代を契機とした00年代後半に手を打つべきという説。あるいは、新規事業の立ち上げや、企業買収。確固たる証拠にもとづく様々な打ち手が提案されました。

その中で、金賞を獲得したのは「ろくばん」の皆さんです。ろくばんは、1999年の時点である企業を買収し、業務用家具市場に進出することを提案しました。大塚家具が持続的な成長を実現するためには、新たな事業に進出することが不可欠との考えをまとめたうえで、複数の代替案を検討し、業務用家具市場を選定。さらに、その進出の手段として具体的なM&A策、統合後の運営方法を立案し、財務的なインパクトを評価するという発表でした。

銀賞に輝いたのは「チームクアトロ」。オーソドックスな3C+環境の分析を徹底的に行い、1998年の時点でマンション販売事業に進出するという提案でした。一見すると突拍子もない策ですが、実は川下への垂直統合という理にかなった戦略であることを、財務的な裏付けも添えて提案する発表でした。

銅賞は「みきのいち」。丁寧な接客こそが大塚家具の強みだととらえ、1990年代の初めごろからそれを伸ばす手を打つとともに、出店戦略も人材育成ペースに合わせるべきという主張でした。

昨年度は、コロナ禍がはじまったばかりであり、教員も手探り状態でオンラインでの授業とプロジェクトを構築し、例年よりも期間を短縮して実施しました。今年度はその経験を生かし、オンラインを活用しながらも過去と同じ規模のプロジェクト研究を実現することができました。改めて、力を尽くしてプロジェクトに取り組んだ神戸大学MBA生の皆さんに拍手を贈りたいと思います。

入賞チームと審査員

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(文責:宮尾 学)