2019年度ケースプロジェクト発表会
2019年8月3日(土)
100年に一度の大変革の時代を生き抜くためには、従来の枠組みにとらわれることなく、仲間を募り、それぞれの強みを活かしながら、未来に向けた挑戦を続けていかなければならない―トヨタ自動車のウェブサイトに掲載されている、豊田章男社長のメッセージです。世界中から尊敬される企業の一つであるトヨタでさえ、改革を必要としていることがひしひしと伝わってきます。
本年度の神戸大学MBAケースプロジェクト研究のテーマは「カルビーを蘇生させた松本改革の本質とは何か」でした。2009年から2018年までカルビーの代表取締役(会長兼CEO)を務めた松本晃氏は、その間に売上高を1.8倍、経常利益を6.5倍に拡大させました。会社のビジョンを明確にし、無駄を省き、工場の稼働率を上げ、権限委譲を進め、給与体系と働き方を見直し、ダイバーシティを高め、海外事業を強化していった結果、そのような業績躍進を成し遂げたのです。
経済のグローバル化、ICTの発展、少子高齢化など、企業を取り巻く環境が大きく変化する中、企業改革は喫緊の課題です。特に重要なのは、危機が明らかになってから改革に着手するのでは遅すぎるということ。松本氏就任前のカルビーも売上高は1000億円を超え、主力のスナック菓子では市場の40%のシェアを有するなど、目の前に危機が迫っていたわけではありませんでした。では、松本氏はどこに目をつけ、何をどう変えたのか。そのエッセンスに鋭く切り込む分析が求められる難しいテーマです。
さらに今年度のケースプロジェクト研究では、カルビーのケーススタディから掴んだ松本改革の本質をチームメンバーの所属企業に適用し、改革プランとして提言することを求めました。分析の練習にとどまらない、By the Job Trainingを掲げる神戸大学MBAらしい課題です。
4月のキックオフから4ヶ月、69名の受講生が12チームに分かれてこれらの課題に取り組みました。プロジェクトの冒頭には、神戸大学MBAの修了生でカルビーにお勤めの方々にもお越しいただき、松本氏の実際の印象などを話していただきました。土曜日5コマの授業が終わった後、深夜におよぶディスカッション。まとまらない分析とぶつかりあう意見を必死に撚り合わせ、ようやく迎えた8月3日の成果報告会でした。
今年も例年通り、チーム間の競争は熾烈を極めました。特に難しかったのは、カルビーにおける松本改革の本質をつかむことと、それを自分たちの企業への提言としてまとめることという2つの目標を高いレベルで達成することでした。それに成功したチームのみが上位入賞という栄光を勝ち取れたのです。すなわち、松本改革の本質を概念レベルとデータレベルの両方からキッチリと捉えたこと、それを具体的で説得力のある提言へとまとめ上げたこと、その2つが評価されてこその金賞・銀賞でした。とはいえ、チーム間の差はごく僅かだったのも事実です。金賞と銀賞の差はたったの1ポイント、同スコアで2チームが銀賞という結果もそれを反映しています。
企業改革というイベントは、長い職業人生においても1回あるかないかの経験です。しかし、ケーススタディという方法ならば、それを疑似体験することができます。そこから学んだことは、たとえ上位入賞を逃したとしても大いに価値あるものだったに違いありません。残りのプログラムでは、ここで得たものを土台により大きな学びを成し遂げてほしいと思います。
(文責:宮尾学)
◆金賞チーム
◇銀賞チーム