山口博史 さん

ネスレ日本株式会社勤務 2010年度入学生 原田ゼミ

私は、大学卒業後の1999年4月にネスレ日本株式会社に入社し、以来情報システム部門で自社の業務アプリケーションの開発、運用管理業務を担当しております。 私が神戸大学大学院のMBAを受験するにあたっては、この「合格への道」が大変参考になりましたので、これから受験をされる方の参考になればと私自身の受験体験記を書き記したいと思います。

【受験のきっかけ】

社会人5年目を迎えた2004年の頃からMBAへの関心は抱いておりました。しかし、それは単にMBAという学位が欲しいという程度の動機で、研究対象となるような具体的な問題意識はなく、受験には至りませんでした。その後、中小企業診断士試験の学習などを通じて経営学に触れ、一通り得た経営学の知識で満足していたので、その後も受験には至りませんでした。

そのような中、自社のビジネスオペレーションの標準化により、情報システムの管理の拠点が日本から世界へと移りました。情報システム管理のグローバル化に伴い、コミュニケーションの対象が広がり、一人のリーダーの統率力だけに頼るのは限界となりつつあると感じました。また、情報システムの複雑化、ブラックボックス化に伴い、リーダーは情報システム全ての機能を理解することは困難で、リーダーの影響力の源泉である専門性を発揮できなくなりつつあるということも感じました。

このような環境の変化を目の当たりにし、もはやリーダー一人の力だけでチームをリードすることは不可能で、チームメンバー一人一人の主体性が求められている、従来型のリーダーシップに変わるリーダーシップが必要ではないかと思いました。そのような中で、『金井 壽宏、池田 守男 (2007) 「サーバントリーダーシップ入門」 かんき出版』という本をはじめ、リーダーシップに関する書籍を色々と読み、リーダーシップについて研究をしてみたいと、受験を決意しました。

神戸大学大学院のMBAを選んだ理由は三つあります。一つ目は、神戸大学大学院のMBAの特徴でもある「プロジェクト方式」です。学生同士で知恵を出し合い、意見をぶつけ合うこの経験から、自主学習だけでは得られないものを身につけることができると思いました。二つ目は、金井教授が神戸大学大学院のMBAに在籍していることです。日本におけるリーダーシップ研究の第一人者と言える金井教授が在籍していることは私にとっては非常に魅力的でした。三つ目は、ずばり縁です。関東で生まれ育った私は、縁あって関西にある神戸大学に入学しました。卒業後も偶然神戸に本社がある会社に就職し、本社に配属されて今に至ります。この“神戸”の縁に、不思議な因果性を感じました。

【研究計画書の作成】

受験を決意し研究計画書の作成に取り掛かったのは、締切りを2ヵ月後に控えた10月中旬でした。大学時代に卒業論文が課されておらず論文というものを書いたことがなかったため、どう作成すればよいものか非常に困りました。まずは“事例研究”ということで、以下に挙げた参考図書で、研究計画書の書き方を一通り押さえました。神戸大学大学院のホームページに掲載されている修了生の修士論文から、研究とはどのように行われるのかを把握し、そのベースとなる研究計画書を作成する際の助けとしました。

研究計画書を書くにあたっては、基本的なことに注意しました。まずは、問われたことに答えることです。例えば、経歴詳細説明書で問われている“キャリアのハイライト”について、辞書によればハイライトとは「最も興味を引く部分・場面」とのことですので、この問いについては最も興味を引くキャリアの場面を一つに絞って書きました。もう一つは、研究計画書全体の一貫性に注意しました。最初にキャリアのハイライトに触れ、そこからどういう問題意識を持ち、当該研究テーマを選ぶに至ったのか。そして、最後にその成果を今後のキャリアにどう活かしていくのか、という感じで全体が一つのストーリーになるように心がけました。

参考図書
  • 工藤 美知尋 (2009) 「すべて合格実例!大学院に合格する研究計画書の書き方」ダイヤモンド社
  • 細川 英雄 (2006) 「研究計画書デザイン – 大学院入試から修士論文完成まで」 東京図書
  • 妹尾 堅一郎 (1999) 「研究計画書の考え方 – 大学院を目指す人のために」 ダイヤモンド社
  • 飯野 一、 佐々木 信吾 (2003) 「国内MBA研究計画書の書き方 – 大学院別対策と合格実例集」 中央経済社
参考になったWebサイト

【1次試験 – 小論文・英語】

1次試験については、まずは過去の入試問題のコピーサービスを利用して過去問を入手し、試験の傾向を把握しました。

英語については、普段の仕事で使っていることと、辞書持ち込み可ということでしたので、特別な対策はしませんでした。私の受験した2010年の試験に関して言えば、英語の長文1つに対して設問が3つでした。1つは英文和訳、2つは英語の読解力が求められる問題で、それ程難しくは感じませんでした。特に英語に対して苦手意識がなければ特別な対策はそれ程必要ないかと思われます。

小論文については、対照的に非常に不安でした。私は理系学部の出身で、国語が昔から苦手でした。以下に挙げた参考図書で、小論文の“お作法”を一通り把握しました。従来の試験では設問に対して、500字程度で答える形式でしたが、私の受験した2010年の試験は“小”小論文とも言える、100字、または200字で答える形式に変わりました。この傾向が続くならば、以下の参考図書は小論文対策としては役に立たないかもしれません。

参考図書
  • 吉岡 友治 (2002) 「大学院・大学編入学社会人入試の小論文 – 思考のメソッドとまとめ方」 実務教育出版
  • 樋口 裕一 (2009) 「大学院・大学・編入学を目指す社会人のための小論文講座 – 入門から志望別対策へ」 学習研究社

【2次試験 – 面接】

事前対策として、研究計画書を見直し、面接で問われそうな質問について説得力を持って答えられるよう準備をしておきました。面接時間は10分です。私の場合、問われたことは主に、(1)志望動機やアピールポイントについて、(2)研究計画書に書いた研究をしたいと思った経緯について、(3)グループワークなど他の人たちと一緒に勉強・研究する場面があるが、そこで期待すること、懸念することはあるか、でした。いずれも想定範囲内の質問だったため、スムーズに答えることができました。研究計画書の内容について説得力のある答えをすることはもちろん、これから1年半、ないし2年間ともに学んでいくわけですので、面接官によい印象を与えるよう、問われたことに大きな声で答えるとか、そういった基本的なことも大事ではないかと思います。

【最後に】

入学後、早くも7ヶ月が経ちました。ケースプロジェクトやゼミ、授業におけるグループディスカッション、グループワークを通じて、自分の強みに気付いたり、反対に自分の弱み、課題を痛感したり、刺激的な日々を送っております。同級生の所属する業界は様々、過去の入学生情報から分かる通り、年齢も20代から50代と様々です。そんな面々に囲まれて、授業における机上の学びだけはなく、”課外授業”(要は授業後の有志での飲み会です)での学びも、全てが自分の糧となっています。字数の制限上、MBAの授業等の内容については書くことができませんが、2010年9月に出版された「修了生が本音で語る国内MBAスクール白書(中央経済社)」に神戸大学MBAの修了生が体験記を書かれており、参考になると思います。
仕事との両立、家庭との両立、費用のこと、研究計画書のこと、色々と悩む点はあると思います。私が受験を決意した10月には、翌年の1月に第一子が産まれることがわかっていました。そのような中で受験を決意したことを理解してくれた、そして今も子育ての最中で応援してくれている妻には大変感謝するところです。職場や家庭の理解が得られ、そして一番大事なのは自分自身の決意になりますが、準備ができているならば思い切って門を叩いていただきたいと思います。この「合格への道」が読んで頂いた方の背中を押すきっかけになれば幸いです。

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