正木 浩哉さん

西日本旅客鉄道株式会社勤務 2022年度入学生 黄磷ゼミ

1.はじめに

こんにちは。私の寄稿文にご興味を持って頂き、有難うございます。また、このような貴重な機会を頂き、大変光栄に思います。合格への道を見られているということは、神戸大学MBAに関心を抱き、受験を志して、受験対策の情報を集められておられるのだと思います。ただ、中には関心を抱きながらも、多忙な業務の状況、異動による環境の変化、ご家族の変化あるいは身体的な変化などの理由で、受験することを迷っておられる方もいらっしゃるのではないかと想像します。ですので、私の合格への道は、特に受験を迷われている方にとって「受験してみようかな」と一歩踏み出せるきっかけになればと思います。
私が今一番お伝えしたいこと。それは、もし神戸大学MBAに関心はあるのだけれど、受験を迷っておられる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一歩踏み出し「挑戦してみませんか」ということです。私は、入社以来、建築の業務に携わってきたことから、経営学という学問に触れた経験はありませんでした。そのため、触れたことのない学問へ挑戦することは、決断と労力が必要でした。また、入学後は、講義のレポート、神戸大学MBAの特徴であるケース・テーマプロジェクト、修士論文など、沢山の課題と向き合うことになり、自由な時間が非常に少なくなります。ただ、費やす労力、時間そしてお金よりも、沢山の知識と経験を得ることができます。それらは、日々の業務のなかで活かす機会がありますし、さらには、知識や経験といった「引き出し」が増えることで、今後の社会人人生を豊かなものにしてくれるのでは、と考えています。
現在は、入学から早いもので1年以上経過し、修士論文を執筆する日々を送っておりますが、視野を広げること、思考することの大切さを身をもって体感しています。経営学という学問に縁遠かった私の体験が微力ながらも参考になれば嬉しく思います。

2.志望動機・受験のきっかけ

志望動機は、職場におけるマネジメント業務の割合が増えるなかで、自身の考えや判断が本当に正しいのか疑問に思ったことでした。
私は鉄道会社で駅をはじめとする鉄道施設のリニューアルやメンテナンスの仕事に携わってきました。時間の経過とともに、自身のポジションが変化し、組織を動かす判断、あるいはメンバーの育成といったマネジメント業務が増加していきました。ただ、日々の業務を進めるなかで、自分の限られた知識と経験だけで判断した結果は、果たして正しいのかと考えることがありました。また、職場メンバーに対する育成についても同様で、自身の知見だけに頼ることで、ミスリードしていないのかと自問するようになりました。そのような考えを抱きながら仕事をしている中で、出会ったのが神戸大学MBAです。社内に修了された方がおり、神戸大学MBAでの講義内容、自社以外の方々からの刺激と学びについて、聞く機会がありました。身をもって体験されている方からの情報は有用であり、私も理論と実務を結び付けて考え、実務にフィードバックしたいと考えました。また、自社以外の方々と交流を深めつつ、日常とは異なるフィールドで物事を客観的に見てみたいと思うようになったのが志望動機です。
しかし、頭の中で思い抱いても一歩前へ進みだすことができませんでした。家庭では双子の子供達が生まれたばかりで、妻からは「大学で勉強している場合ですか?」と。自分の気持ちに蓋を閉め、諸先輩方の「合格への道」を見る、神戸大学MBA公開セミナーへ参加するなどをしているうちに時間が経過していったように記憶しています。
その中で、大きな転機を迎えたのは、コロナ禍で自社の業績が大きく落ち込んだことです。コロナ禍がもたらした社会の規制、経済活動の縮小等により多くの企業が業績を落とすなかで、特に運輸業を担う自社の業績の落ち込みは著しく、会社発足以来の大きな危機を迎えました。加えて、従前から自社の営業エリアでは人口減少による地域活力の低下などの社会的問題も存在していました。このような状況だからこそ、視野を広げ体系的な学びを得ることで、自社への貢献、そして社会への貢献を思考したいというのが、私の受験のきっかけとなっています。

3.試験対策全般

試験対策については、私も「合格への道」を参考にしていたため、多くは執筆されている先輩方と重複する内容があろうかと思います。ただ、受験対策の準備にかけられる時間は人によって異なるかと思いますし、英語の受験対策が必要な方、日常的に英語を使っており受験対策が必要でない方というように、人それぞれにあった勉強方法があるかと思います。早めに自分にあった勉強のやり方を見つけることができれば、安心して試験に臨むことができるかと思います。

3-1 研究計画書・経歴詳細説明書

最も労力をかけたのが研究計画書です。これが最も大切なポイントであると考えます。研究計画の記載にあたっては、参考書を購入し、どういった内容を記載すべきか模範的な内容を確認したうえで、自分の言葉で記載するようにしました。
研究計画書の冒頭で、神戸大学MBAで取り組む研究テーマ、そのテーマに取り組む理由と目的、そして研究に取り組む背景となっている経験を記載することになっています。言い換えると、研究テーマに取り組むうえでの問題意識は何なのか、その問題意識はどこからきているのか、といったことが問われていると考えます。そのため、自分自身、何がしたいのかを繰り返し考え、実務のうえでの問題意識と社会的な問題との関係性も考慮しながら書いていきました。
また、研究計画書では、研究の進め方についても記載するようになっていましたので、自身が取り組みたいと考えている分野の先行研究をネットで検索し確認していました。入学前ですので、研究とはどのようなものかが分かっておりません。ただ、先行研究を確認することで、どのような手法で研究が進められるか、全部ではなくても理解することができますので、研究内容をより具体的にイメージすることに役立ったように思います。
その他、自身の経歴、資格・技能を棚卸して、志望動機や将来のキャリア設計を考え、記載しました。自身の過去、現在、未来を改めて俯瞰的に考え、あわせて研究テーマがどのように関係しているかを考えて記載するようにしました。

3-2 英語

英語の試験は、TOEICが合格基準点を満たせば免除されますが、私は、英語を受験しました。そのため、英語の受験を考えている方は、読んで頂ければと思います。私は、日常業務において、英語を使うことはありませんので「合格への道」を参考にしながら、少しずつ勉強をしていきました。
試験は、出題された英文の意味を理解し記述する問題となっています。まずは、神戸大学生協から、過去3年分の問題を取り寄せ、試験時間と同じ60分で解いてみました。解いてみることで英語のレベル感、時間配分ならびに自分が何を勉強しないといけないのかが分かりますので、早い段階で過去問を解くことをお薦めします。
普段の勉強は、通勤電車の時間が比較的長かったので、行きは英単語を見たり、聞き流しをしたりして、帰りの電車では、ニュースの英語版を読むことが日課になっていました。普段、英語に接する機会がないため、なるべく英語に触れる時間を確保しようと意識していたように思います。
自宅での勉強は、ハーバード・ビジネス・レビューと参考書を1冊購入し和訳をしていました。過去問において、ある段落の範囲が指定され、和訳する問題が例年出題されていたためです。実際、受験した年度も段落毎に和訳する問題が2問出題されていました。分からない単語は、辞書で調べつつ和訳していきますので、英単語も覚えますし、また手書きすることに慣れることもできます。普段、パソコンばかり使用していますので、手書きで和訳することを試験対策として継続的に取り組んでいました。

3-3 小論文

小論文は、その年の社会的な時事問題が出題されます。英語の対策と同様に、過去3年分の問題を取り寄せ、試験時間と同じ60分で解いてみることから始めたように思います。また、大学院入試レベルの小論文対策の参考書を購入し、論文の作法を確認しました。小論文を書くには、まず自身の考えや意見を明確にしたうえで、その理由を述べる必要があります。また、理由の論拠となる説明や、必要により具体例を記載することで、自身の主張する考えや意見の正しさについて述べることも必要です。そのため、基本的な文章の流れや構成の作法について確認しました。
普段の勉強は、日々の新聞記事の出来事に目を通していました。記事を読む際は、どのような問題を取り上げ、それに対してどのような主張をしているのかを確認することで、自身の小論文に活かせるように意識していました。また、気になった記事については、経営、財務、人事、技術や環境などといったようにグループにして整理していました。整理することで社会のトレンドが分かり易くなりますし、後で、関連する記事が出てきた際、振り返ることができるので有用だったかなと思います。
自宅での勉強は、整理した記事を600字程度に要約して記載してみることや、自身で問題設定をして60分という時間で小論文を書いてみることを繰り返していました。英語の対策と同じになるかもしれませんが、なるべく本番に近い状況となるよう意識し取り組んでいました。

3-4 面接

面接は研究計画書について質問を受け、回答することになります。時間は10分程度だったように思います。面接は一人の先生が対面での応答で、もう一人の先生はオンラインでのやりとりでした。今後は、このような状況での面接はないかもしれませんが、面接官の先生がお二人という基本の形は変わらないと思います。
面接の対策として、想定される質問に対し、回答を作成していました。なぜ神戸大学MBAを希望するのか、何を学びたいのか、研究では何に取り組みたいのかといった質問について回答を整理していました。言い換えると、研究計画書に時間をかけ、しっかり考えて作成することは、面接の準備と言えるのかもしれません。また、自身の研究計画の内容については、端的に自身の言葉で説明できるように準備していました。
服装についてですが、スーツで臨まれている方が多かったように思います。私は私服で面接を受けましたが、服装のことが気になるのであれば、スーツで臨まれるのをお薦めします。

4.おわりに

神戸大学MBAに身を置くことは、多くの学びをもたらしてくれます。先生方からの講義はもちろんですし、一緒に学んでいる同級生からも沢山の学びを得ることができます。講義での鋭い意見や質問、質の高いレポート、プロジェクト方式の打ち合わせでの溢れ出るアイデア、深い洞察、チームマネジメント、論理的思考、サポートできる人間力など刺激と気づきを得る機会となります。一方で、時間、エネルギー、余暇といった失われるものがあるのも事実です。それでも、結果的に得るものが多いと思いますし、今後の財産になるのではないかと思います。早く神戸大学MBAで学びの機会を持つことは、自身の業務にフィードバックできる機会も増えることになります。受験について、もし迷っている方がいらっしゃいましたら、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。この記事が、今後神戸大学MBAを目指す方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

5.参考図書

  • 加護野忠男、伊丹敬之 著『ゼミナール経営学入門』日本経済新聞出版社
  • 神戸大学専門職大学院(MBA)編『人生を変えるMBA』有斐閣
  • 神戸大学専門職大学院(MBA)編 『プレMBAの知的武装』 中央経済社
  • 晶文社学校案内編集部 編『国内MBA受験のための研究計画書の書き方』晶文社
  • THE NIKKEI WEEKLY 編『ニュース英語のためのキーワード50』日本経済新聞社
  • 吉岡友治 著『大学院・大学編入学社会人入試の小論文[改定版]』実務教育出版

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