薄 健二さん

川崎重工業株式会社勤務 2022年度入学生 原田勉ゼミ

私は2022年4月に経営学研究科の専門職学位コース (MBA) に進学し,現在は原田勉教授のご指導のもとで修士論文研究に取り組んでいます。この度,私の合格体験記を執筆させて頂くことになり,私の記事がMBAへの進学を希望されている方々への一助になれば幸いです。

私は川崎重工業株式会社に勤めており,航空エンジン部品製造のプロジェクト・マネジメント業務に従事しています。業務の中で直面する様々な組織運営の問題に関して興味を抱き,組織が効果的に成果を上げられるようにするにはどのようなマネジメントが必要なのかという問題に対する解決の糸口を見つけたいと思い,MBAへの進学を検討しました。

関西地区にはMBAコースを設けている多数の大学がありますが,私が神戸大学を選んだのは神戸大学MBAのコンセプトでもある「働きながら学ぶ」ことと「研究に基礎をおく教育」という点でした。六甲山で学んだことを自社に持ち帰り問題解決に取り組むということが私の目的であったので,「働きながら学ぶ」ことはまさに私の目的と合致するものでした。さらに,経営理論に立脚した課題解決への考察ができるようになりたいと思い描いていたので,神戸大学MBAであれば自分が望む教育が受けられると考えました。この期待はまさにその通りになりました。

私がMBAの受験を考え始めたのは,受験前年の5月頃でした。まだこの時はMBAで具体的にどのようなことが学べるのか,入試はどのような試験が課されるのかなどは把握していなかったので,大学のwebサイトを閲覧したり,定期的に開催されているMBA公開セミナーなどに参加したりして情報収集を進めました。

7月頃からは,英語試験の免除を獲得するためTOEIC向けの勉強を進め,並行して研究計画書に書く内容の検討を進めました。研究計画書のテーマとしては,自社のような製造業における組織パフォーマンスに関して書きたいと考えていましたが,まだ自身の問題意識が漠然としていて「自分が本当に知りたいことは何か」をうまく説明できる状態ではありませんでした。

自分の問題意識をうまく表現するために,何冊かの関連書籍を読んで考えの整理をしました。当時まだ出版されたばかりの「プレMBAの知的武装」(神戸大学専門職大学院 (2021年),中央経済社) や,社内で神戸大学MBAを修了された方から紹介された「組織行動のマネジメント―入門から実践へ―」 (スティーブン・P・ロビンス著,高木晴夫訳 (2009年),ダイヤモンド社) などがとても参考になり,自分自身の考えがより輪郭を強く持ったと感じました。

研究計画書および入学願書を提出し終えてからは,筆記一次試験である小論文対策に取り組みました。このときやったことは,試験本番と同じように自分の手で小論文形式の文章を書いてみるということでした。内容の正確さはともかく,論理的な文章展開にすることを心掛けるようにしました。試験本番までに,会社帰りなどの空き時間を使って何度も練習しました。

私が一つ失敗したと思うのは,過去問をちゃんと確認せずに小論文対策をしていたことでした。何かテーマが与えられ,それに対して持論を展開するというのが小論文であろうと思い込んでいたので,過去問を見るまでもないと思っていたのですが,試験当日に出題された問題は「〇〇について説明せよ」という知識を問うもので,頭が真っ白になりました。残念ながら,その言葉の意味も分からない。絶望しかけましたが,まずは一呼吸し,言葉の一部分から予想される意味を連想して腹をくくり,どんな文章展開にするか段取りを決めて一気に解答作成に取り掛かりました。文章量の配分を間違えてやや前置きの長い文章になりましたが,なんとか解答用紙の最終行まで解答を書ききることができました。帰りの電車で意味を調べたら,全然違った意味だったので崩れ落ちました。

数日後,盛大に回答を間違ったにもかかわらず一次試験の合格通知が届きました。完全にあきらめていたので面接対策は何もしていなかったのですが,再びギアを切り替えて,研究計画書に書いた自分の問題意識と研究方針を分かりやすくプレゼンできるように準備を開始しました。実際に声に出して説明してみるといくつも詰まるところがあり,まだ自分の中で咀嚼しきれていない部分があることに気付き,不足している部分を補強し直しました。

口頭試験当日は,原田先生と宮尾先生にご対応頂いたと記憶しています。初めになぜこの研究をしたいのかを説明し,先生方から研究の進め方に関していくつかの質疑がありました。もちろん研究の作法や経営学の知識などほとんどないので,質問や指摘に対して正しい回答などはできなかったと思いますが,なぜ自分がそう考えたかを説明することは意識して回答するようにしました。

2月半ばに無事合格通知を受け取り,約9か月におよぶ受験活動を終え,4月からの毎週の山登りに備えた体力づくりや,大学で使用するPC,通学バッグなどの準備など,まるで大学新入生や新社会人の時のような高揚した気分で4月を心待ちにしていたことがとても懐かしいです。

入試を振り返り,やはり一番重要なのは研究計画書だったと思います。しかし,研究計画書はMBA入試の参考書やネット情報などを参考にして簡単に書けるものではありません。自分自身が抱いている問題意識をどれだけ深掘りできているかが重要であり,そのことが研究計画書から滲み出るような読み応えのある研究計画書が合格へとつながります。

入学後にクラスメートと話してみると,人によってはほとんど準備をせずにぎりぎりで研究計画書を出した人もいました。しかし,それは何も準備をしなくても運が良ければ入れる,ということではなく,常日頃から自分の所属する組織が直面している問題に自分事として向き合っているからこそ,短期間でも読み応えのある研究計画書を書くことができたのではないかと思います。

研究計画書の作成において向き合った問題意識は,そのまま修士論文研究にもつながってきます。思考の探索で「脳に汗をかいた」分だけ,より良い論文になっていきます。入試からMBAの学びは始まっていると考えて,皆さん自身の学びの機会を楽しんでください。

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