電子商取引(ElectoronicCommerce)
宿南達志郎
インターネットを何らかの形で利用した商取引の総称である。現時点では経済やビジネスに占める割合はまだ低いが、急激な伸びを示していることから、21世紀の経営戦略にとって最重要課題の一つと考えられている。
先行して伸びているのは企業間(BtoB)のECである。従来はEDI/CALSという特定者間のネットワークが中心であったが、インターネットにより不特定多数の取引が低廉に実現できるようになったため急速に伸びてきている。また、米国を中心に政府調達などもネット化が進んでいる。企業対消費者(BtoC)については、必ずしも直接実物を見る必要のないコンピュータ、書籍、旅行予約などを中心に伸びを示している。
ECが注目されるのは、単に今までの取引メディアがインターネットに置き換わるというだけではなく、経済、経営、社会、文化などあらゆることに革命的な影響が出てくるからである。ECを活用してあっという間に米国1位のコンピュータ製造業者となったデル社や、数百万点の登録書籍を世界中に販売して急成長したアマゾン社などがよく知られている。授業内容などもインターネットで流すようになれば、教育機関のあり方も大きく変わる可能性がある。逆に、インターネット放送などにより自国の文化が破壊されることを懸念して閲覧できる情報を制限している国もある。
企業が競争優位を維持する条件も大きく変わる。例えば、従来は営業拠点や営業マンの数が優位性をもたらしたが、今や、「松井証券」などのようにインターネットに軸足を置き営業マンを持たない企業が、格安の手数料でも大幅に利益をあげられるようになっている。また、情報の囲い込みにより顧客を維持してきた旅行業界も、日別の宿泊料金や空き室状況を顧客が24時間チェックできる「旅の窓口」のようなサイトに有効に対抗できなくなりつつある。
日本のECも携帯電話からのインターネットアクセスの普及、CATVやADSLなどによる高速、定額、かつ低廉な料金の登場などにより、急速に普及する条件が整いつつある。ECを取りこめるか、それともECに取り残されるかが21世紀の生き残りに大きく影響することは間違いないと考えられる。
参考リンク
Copyright©, 2003宿南達志郎
この「ビジネス・キーワード」は2000年1月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。