WebTrust(ウエッブ・トラスト)

内藤 文雄

わが国でもホームページを利用した電子商取引(electronic commerce)が活発化の様相を見せている。この取引の利用者にとって最大の関心事は、商品やサービス提供の確実性(注文通りに商品・サービスが得られるかどうか)、および代金決済の安全性(クレジット番号等の盗用の危険性がないかどうか)の問題である。たとえば、この10月からの株式委託売買手数料の完全自由化(5,000万円以下)を目前に控えた証券市場では、インターネットを利用したオンライン(ネット)取引が台風の目になってくるとされているだけにかかる問題は重大な影響をもつ。

これらの問題に対して、アメリカでは、1997年9月から、ホームページを通じての取引について、それが安全で確かなものであることを審査し、審査に合格したホームページには、一種のシールを添付する方法での解決策が実施されている。この審査サービスのことを「WebTrust」と呼んでいる。

わが国では、監査法人トーマツが日本で初めて1999年6月かこのサービスを開始している。トーマツ(http://www.tohmatsu.co.jp)のホームページでの説明によると、企業からの依頼を受けると、ホームページ上の電子商取引が、アメリカ公認会計士協会による基準に準拠した業務手続と管理基準に合致しているかどうかについて、独立的かつ客観的に審査が行われる。企業は、準拠性が確認された場合、内容を記載した審査報告書とWebTrustシールを授与される。その後、審査は3ヶ月毎に更新し基準等への準拠を確かめることとされている。

WebTrustプログラムの原則にしたがえば、対象となるホームページは、定期的に、(1)取引方法の開示(企業がホームページ上の電子商取引の方法を開示しており、取引がそのとおりに実行されているかどうか)、(2)取引の完全性(顧客からの注文を完全に実行し、正しく請求するための有効な社内体制が完備されているかどうか)、および(3)情報の保護(顧客の個人情報の不正利用を防止するための有効な社内体制が完備されているかどうか)に関するWebTrustの基準を遵守しているかどうかが、WebTrustの資格を有する公認会計士によって審査を受けることになる。

WebTrustシールは高度なセキュリティ環境を提供するため、電子認証局であるアメリカのべリサイン(VeriSign)社から発行される。WebTrustシールは、(1) 意図した情報の受け手以外にはだれもクレジット・カード番号やその他の個人情報を読み取ることができないこと、および(2) ホームページ利用者は、合法的にWebTrustシールを表示できるホームページで取引を行っていることを保証する。これにより利用者はホームページ企業と安心して取引ができることになり、ホームページによる電子商取引の拡大に貢献するものと考えられる。また、利用者は、画面上に添付されたWebTrustシールをクリックすることで、ホームページの審査報告書の現物を見ることができる。

このようなホームページの安全性・確実性に対する審査サービスは、公認会計士や会計事務所、監査法人が行う新たな保証サービス(assurance service)の一例である。今後、経済社会のさまざまな側面において利用されている情報やシステムなどに対する同様の保証サービスが求められるようになると考えられている。

Copyright©, 2003内藤文雄
この「ビジネス・キーワード」は1999年9月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。

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