アメーバ経営

三矢裕

アメーバ経営とは、京セラの実質的な創業者である稲盛和夫氏によって生み出された、日本発の小集団部門別採算制度である(ミニ・プロフィットセンターと呼ばれることもある)。今日では、京セラ以外の数百社の会社にも広く普及していることが知られている。JALがアメーバ経営を導入し、経営再建を行なっていることで、さらに注目を集めている。さらに、海外の企業への普及も始まっている。

この経営方式では、通常は50名以下のアメーバと呼ばれる小組織が、自分たちの生み出す材やサービスを社内外と売買することによって、擬似的な「会社」と見なされる。また、そのアメーバの長は、「社長」の意識を持って自アメーバを経営することが期待されている。

アメーバの採算の算定には、「時間当り採算」という独自の管理会計が用いられる。これは、アメーバの社内外に対する売上から、人件費以外の全費用を差し引いたものを、自アメーバでの総労働時間で割って求められる。これによって、各アメーバが生み出す一時間当たりの付加価値が示される。この指標を使うメリットは、部門の大小にかかわらず、アメーバ毎の貢献度合い比較できることである。

さらに、日次単位で採算計算を行い、各アメーバにフィードバックされること、会計教育が徹底されてパートに至るまで職種を問わず全従業員が会計数値を理解できること、家計簿に近いシンプルなキャッシュフローをベースとしていることなども管理会計上の特徴である。小組織であれば末端までの従業員一人ひとりの働きの良し悪しが敏感に採算へ反映される。アメーバ経営では、従業員が当事者意識を持って経営参加できるようになる。

アメーバ経営をより広義にとらえると、大家族主義的な経営理念の浸透も重要な要素である。アメーバ経営のデメリットとして、成果が数字で客観的に示されることによって、組織の長や従業員が大きなプレッシャーを感じてしまい、時に疲弊してしまうことがある。また、自アメーバの採算を向上させようとするあまり、独善的な経営判断が行われて部分最適となり、組織全体の最適が損なわれてしまうことがある。アメーバ経営ではこのようなデメリットを制度設計で対処しようとするのではなく、経営理念を説くことで解決する。なぜ、採算を厳しく問うのか、高い目標にチャレンジしなければならないのか、アメーバ間のコミュニケーションを図って協力しなければならないのかなどをアメーバ長や従業員に理解させることによって、全体最適が確保されることになる。

Copyright © 2012, 三矢裕

 

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