国際的なM&A

黄磷

神戸大学経営学研究科・国際経営教育研究センター・中国コラボレーションセンター(CIBER Beijing Center)は、2005年度の北京でのシンポジウムで、国際的M&Aの問題をテーマにしてグローバル競争のなかでの企業ガバナンスの本質を考えてみたい。

中国のネットに“毒丸(poison-pill)”という言葉が登場したのは、2001年である。今年に入って、米国NASDAQに上場している中国企業「新浪(Sina)」は、あるゲーム会社の買収に対して、“毒丸計画”を公表した。このゲーム会社が200億ドルを投じたこともたいへん話題になっている。また、米国のOracle社の買収に対して、同じく米国NASDAQに上場している中国企業「仁科(PeopleSoft)」は、Oracle社が 20%以上の株式を取得された時点で既存の株主に対する新規株を発行する計画を公表した。このように、国際的な合併と買収(M&A)は、中国でも新聞やネットをにぎわす話題になっている。これに対して、世界経済のグローバル化の流れに乗って、中国企業による国際的 M&A も目立つようになってきた。

具体的な事例として、ハイアール集団が2001年にイタリアの冷蔵庫工場を700万ドルで買収し、自動車部品メーカーである万向集団(米国)が米国 UAI 社を 280 万ドルで買収した。また、華立集団がフィリップス集団のCDMA移動通信部門とPFSY(IT技術の研究所)を買収した。京東方科技術集団が韓国のHydis社のTFTーLCD事業を3.8億ドルで買収し、TCLが破産したドイツのテレビメーカー・シュナイダーを820万ユーロで買収した。日本では、上海電気集団が米国企業と共同でアキヤマ印刷機製造を買収し、その経営を立て直したことで話題になった。また、2003年には、江蘇省飛達工具集団という民間企業が日本の製鉄工場を買収している。

華来集団がフィリップス集団のCDMA移動通信部門とPFSY(IT技術の研究所)を買収したのは、世界に通じる知的財産権をもった商品開発能力を手に入れ、独自技術をもって製品開発することが目的になっている。また、TCLがドイツの三大ブランドメーカーのひとつであるシュナイダーを買収して、EUの中国製品に対する関税障壁をクリアして市場確保を実現すると同時に、113年の歴史をもつドイツ企業のブランドを手に入れて欧州市場と世界市場での展開が可能になる。ドリル製造で成長してきた民間企業の江蘇飛達工具集団は、日本の製鉄工場を買収してその設備を全部中国に移転して熱延、冷延の4本の生産ラインを作る予定である。

国際的M&Aを行う中国企業の目的は、海外に市場を求めて短期的な利潤を得ることではなく、低い代価と早いスピードで海外の経営資源を取り込み、中核能力となる新たな資源を求めていることにある。従来の理論が想定している既存の資源や競争優位性ではなく、グローバル競争の圧力と脅威に対して、積極的な経営資源の展開によって生き残る道を求めているのである。

中国企業の国際的M&Aの戦略目的は、研究開発の頭脳と能力の獲得、ビジネス情報や管理ノウハウの習得、そして世界市場に通用するブランド力の確立などである。WTO加盟によって、グローバル企業と国内市場で直接対峙する局面を迎えた中国企業は、否応なく圧縮された企業成長の道を探さなければならない。国際的M&Aはまさしく経営資源を取得し、競争力基盤を拡大させるための近道になる。

Copyright © 2005, 黄磷