カンバン方式―トヨタ生産方式の影響―
岸田忠之
2003年はフォード創業100周年であり、日本の自動車は盛隆が続いています。この強さの大きな力となっているトヨタ生産方式を業務改善策として再見します。
まず最初にカンバン方式とも言われるトヨタ生産方式の基本について。
トヨタ生産方式の2本柱
1. ジャストインタイム
加工時間と停滞時間の合計であるリードタイムの短縮を徹底的に行います。必要なものを、必要な時に、必要なだけ、おのおのの工程が取りに行く。それは後工程が必要なだけ持っていく事です。(これが狭義のカンバン方式)「後工程はお客様」との考えが定着する。
この為には平準化が大前提になります。平準化の為にはネック工程や制約条件を見つけて集中的に改善しなければなりません。
2. 自働化
「作業が完了したら機械が止まる、人に分かるようにする」
これは人を機械の番人にしないで、人の仕事と機械の仕事を分離する事を可能にします。
「異常が出たら機械が止まる、人に分かるようにする」
これは不良品を作らない為であり、品質を工程で作りこむ事を可能にします。
「人偏のある自働化」は機械より人に重きを置いた点では思想に近いものです。
これらの達成の為に常に標準作業表を更新し、アンドン・進行ランプなどの「目で見る管理」で問題解決を行います。
トヨタ生産方式を支える2つの考え
業務改善の見方より2つの考え方(理念)について記述したいと思います。この2つは事務系の人にも新鮮で、業務の見直しに応用できる点があるのではないでしょうか。
1. TOC(Theory of Constraints)
ネック工程や制約条件を見つけて集中的に改善する。
Step1. | 制約条件を見つける。工程の中で1番弱点となっている所を見つける。 |
Step2. | 制約条件を徹底的に活用する。固定費を増やさず能力を引き出す。(例:1部2交代シフト) |
Step3. | 制約条件以外の能力をすべて制約条件に合わす。制約条件の前工程を100%稼動させるのは造りすぎのムダ=仕掛品が増えるだけ。 |
Step4. | 制約条件を徹底的に活用しても能力不足。旧型機械の活用とか外注を活用。 |
Step5. | 世の中の変化を注意しながらStep1.に戻る。市場の変化等で制約条件が他に移る場合がある |
2. モノ作りの利益はコストダウンから
「造り過ぎのムダが一番悪いムダ」
ではナゼ必要な量より余分に造るか?それは余分な人や設備をもっているから、あらゆる理由をさがして造ります。そうすると機械の故障、不良品発生、欠勤などに対して安心料となります。造りすぎ、持ちすぎをムダと考えないと、おき場所が増え、また問題点が隠れてしまい、直すべき所が分からなくなります。これでは原価は下がりません。
トヨタ生産方式は70%の操業で利益の上がる経営を目標にしています。その為にはムダを徹底的に排除した原価低減が必要です。それを忠実に実行しているのは、関西の企業ではダイキン、東洋ゴムでしょうか。
参考文献
- 大野耐一著『トヨタ生産方式』 ダイヤモンド社
- 藤本隆宏・武石彰・青島矢一編著『ビジネス・アーキテクチャー』有斐閣
Copyright © 2004, 岸田忠之