2016年度入学生の研究状況(担当: 音川 和久)

「現代経営学演習」

担当: 音川 和久

目的、テーマ

ゼミの目的は、各自が日常業務の中で抱えている問題・課題について、アカデミックなアプローチに基づく調査・研究を個人ベースで行い、その成果を専門職学位論文として完成させることです。そのため、音川ゼミのMBA学生が設定したテーマは、医薬品開発における統計家のリーダーシップ、ユーザーイノベーションを活用した育薬、従業員のワーク・エンゲイジメントやモチベーション、IT時代の営業職の役割、ITを推進するCIOの役割、製品コモディティ化の国際比較、サービス化や新規事業・新技術の導入を推進するための組織設計、M&A後の組織統合マネジメント、薬剤師の購買行動、健康診断の受療行動、中期経営計画の情報内容、判例にみる株式価値の算定方法など、多岐にわたっています。

このように、所属する組織が異なれば、抱える問題も異なります。そして、1つの課題が解決できても、別の新たな課題がその後で生起することが一般的です。したがって、専門職学位論文の研究を通じて、自分自身のいまの課題について解決策を探ることはもちろん重要なのですが、ゼミでは、自分とは異なる組織の課題を、自分とは異なる研究方法を用いて調査・研究に取り組むゼミの仲間と切磋琢磨しながら、その他の課題・研究アプローチについても仮想体験する場にしてほしいと考えています。なぜなら、そのような体験は、将来、いまと異なる別の課題に直面したときに、別の理論やアプローチを用いて解決策を探ることのできる柔軟性につながるからです。

ゼミの雰囲気

チームで協働しながら研究を進めるプロジェクト研究とは異なり、専門職学位論文を仕上げるゼミでは、個人ベースで研究を進めることになります。今年4月からは、14名のゼミ生が各自の研究について、その進捗状況を2回(週)に1回のペースで繰り返し報告することを求めています。そして、各自の研究報告に対して、指導教員である私はもちろんですが、ティーチング・アシスタントである後期課程の大学院生や他のゼミ生からも積極的なコメントがあり、自由闊達なディスカッションが行われています。報告者は、その議論を受けてリサーチ・プランを適宜修正しながら、時には後戻りすることもありますが、各自が主体的に個人ベースの研究を進めています。

現在までの進捗状況

専門職学位論文は、純粋な学術論文に比べて、実務に対するインプリケーションが強く要求されますが、それでも問題意識、研究課題、研究仮説、先行研究、研究方法、分析結果、ディスカッション、結論と将来の課題など、学術論文としての体裁を兼ね備えている必要があります。そのため、昨夏から始まったゼミでは、まず、経営学の研究方法論に関する書物を輪読したり、過去のMBA論文を批判的に検討したり、先行研究を探索しその内容を報告したりするプロセスを通じて、各自の研究課題や検証仮説を明確化するように努めてきました。現在(6月中旬)の時点で研究が順調に進捗している学生は、アンケート、インタビュー、データ分析、事例調査など経営学の多様な研究方法を用いて、それぞれの仮説を検証するためにエビデンスを収集する作業を行っています。もちろん、各自の進捗状況は全く同じではありません(中には、進捗が遅れ気味の人もいます)が、8月下旬の論文提出に向けて、それぞれが納得のできる研究成果を上げ、全員でゴールテープを切ってほしいと願っています。