株価のファンダメンタルズ

福田 祐一

昨今、株価がそのファンダメンタルズを反映しているかどうかという事が議論されている。では、いったい株価のファンダメンタルズとは何であろうか。ここでは、ファイナンス理論が株価のファンダメンタルズをどのように考えているのかを、簡単に説明しよう。

株価のファンダメンタルズを議論する際、ファイナンス理論は裁定条件から出発する。裁定条件とは、ある一定期間株式を保有した時の期待収益率(保有期間に受け取る期待配当と株式を売却する際の期待株価の和を現在の株価で割ったもの)が、その株式を保有する際に投資家が要求する収益率(1+安全資産収益率とリスクプレミアムの和)に等しくなるというものである。もし、株式の期待収益率が要求収益率より小さければ、投資家の株式に対する需要が減少し、現在の株価の低下を通じて、期待収益率の上昇をもたらす。このような投資家の行動により、株式の期待収益率と要求収益率は等しくなる。裁定条件を書き直すと、期待配当と次期の期待株価の和を要求収益率で割り引いたものとして、現在の株価が決定されることが示される。裁定条件が将来時点でも成立しているとすれば、以上の関係から、現在の株価は将来の期待配当の流列を要求収益率で割り引いた価値として決定されることが想像されよう。厳密な証明はしないが、ある条件を追加すれば、この直感が正しいことが示される。この将来の期待配当の割引価値が、ファイナンス理論でいう株価のファンダメンタルズである。

最後に、ファンダメンタルズのもつ2つの含意を議論しよう。第1に、割引率の上昇は割引価値の減少をもたらすことから、現在及び将来の要求収益率の上昇はファンダメンタルズを低下させる。長期金利の上昇が株価を押し下げるという現象は、このことに起因していると考えることができる。第2に、割り引かれるもととなる価値の低下は割引価値の低下をもたらすことから、将来の期待配当の低下は、ファンダメンタルズを低下させる。将来の企業業績の悪化が、将来の期待配当の低下をもたらすとすれば、結果的にファンダメンタルズを押し下げることになる。

Copyright©,2003福田祐一

この「ビジネス・キーワード」は1999年6月配信の「メールジャーナル」に掲載されたものです。

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