株主の権利と株価
鈴木健嗣
普通株式に付与されている権利は、会社法及び定款によって定まっており、個別の会社と株主間の契約関係によって定まっているわけではない。そのため、株式を所有する株主は、保有する株式数に応じて平等に取り扱われる(会社法109条1項)。普通株式を保有する株主の権利は、自益権と共益権に大別される。自益権とは会社から経済的な利益を受けることを目的とする権利である。自益権の具体的な内容としては、利益配当請求権(会社法453条)や残余財産分配請求権(会社法504条)などがある。利益配当請求権とは株主が会社から利益の配当を受ける権利といえる。残余財産分配請求権とは、会社が解散した時に、株主が残余財産の分配を受ける権利である。いずれの利益分配も株主の保有株式数に応じて行われることになる。
共益権とは、企業経営に参加・監視する権利をいう。経営に参加する権利としては、株主総会における議決権(会社法308条1項、325条)がある。株主は、株式会社の最高意思決定機関である株主総会へ出席し、取締役などの役員の選任(会社法329条1項、339条1項)、経営に対する提案(会社法303条、304条、305条、325条、491条)、決算内容の承認など会社の重要議題に対して決議することができる。議決権は経営へ参加する権利といえるが、実際には日常の企業運営は株主総会で選任された取締役が行っている。企業経営を監視する権利として、株主代表訴訟提起権(会社法847条)、役員の解任請求権(会社法854条1項、2項)、監査役の選任請求権(会社法306条1項、358条1項)などがある。株主は、日常の企業運営を取締役に委任するが、取締役に対する監視を行う権利を保有している。
株式の価値とは、株式に付与された自益権と共益権の価値と考えることができる。自益権では、株主は保有株数に応じて企業の生み出す利益の配分を受けることを認め、共益権では株主の受け取る利益(企業の生み出す利益)を最大化するよう経営者の選解任や監視、経営関与をすることが認めている。株式の価値(自益権と共益権の価値)とは、企業の利益を最大化させ、企業の生み出す利益を受け取る価値と考えることができる。
通常、株式投資を通じての儲けは、キャピタルゲイン(株価の値上がりによる儲け)とインカムゲイン(配当金)に大別できる。企業の今期・将来にわたる利益上昇の予想を通じて、株価は上昇する。企業が生み出す利益は、配当によって株主に分配されるか、再投資に回され将来の利益を高めるために用いられる。再投資に回される利益も最終的には配当、もしくは株主還元に用いられる。理論的には、株式の価値は、企業が将来株主へ還元される価値の現在価値合計といえる。実際には、将来の配当金や成長機会、企業リスクを正確に予想することが難しく、本当の株価を算定することは難しい。しかしながら、企業の長期的な利益の増加が、株価の大部分を説明できることは確かである。
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