藤田幸志 さん

サントリー株式会社勤務 2006年度入学生 上林ゼミ

1. 多くの素晴らしい経営者との出会いが出発点

私は、サントリー株式会社で外食企業向けに自社製品を拡売する業務に従事してきました。そこで、幸運にも数多くの素晴らしい経営者と出会う機会がありました。その出会いのなかで、顧客の経営課題に一緒に取り組むことが増えていくにつれ、経営に関する体系的な知識の必要性を感じるようになりました。

2. 受験を決意するまで

経営に関する知識の必要性を意識するようになったとき、自社に国内大学院留学制度があることを知り、この制度を利用して受験することを決意しました。それは、受験の日から数えて2年前のことです。そこから、「MBAでなにを見出すのか」という自問自答のなかで問題意識を整理しはじめました。今から考えると、この問題意識の認識と整理の期間が、合否を分ける一番の要因だったと思います。

3. 受験準備

受験に向けてまず第一歩、MBA受験に関する雑誌・本を調べるところからはじめました。全体像を知る意味では、日経キャリアマガジン特別編集(2007年度版)『ビジネスリーダー実践プログラム』が有益だと思います。(私は、2005年度版を利用しました。)各大学院のポジショニング・特徴・受験概要を知ることに役に立ちます。そして、少しテクニック偏重の感がありますが、飯野(2005)『国内MBA無敵の合格戦略』は、具体的に実際の研究計画書や面接内容が記述されており、受験戦略を立てるきっかけになります。

また、私の場合、すでに大学院に留学している会社の先輩が身近にいたので、受験までの様々な点でアドバイスをいただきました。身近にそのような方がいらっしゃる場合、是非、相談されることをお勧めします。常に、客観的な視点で指摘されることは重要だと思います。

4. 最重要課題『研究計画書』

願書と同時に提出する『研究計画書』が合否を分ける最重要課題です。まず、研究計画書の出発点かつ中核をなす問題意識をどのように見つけ出すかということですが、これには明確な答えはありません。問題意識は、みなさんの中にしかなく、ご自身で見つけ出してください。すでにMBA受験を検討されているみなさんなら、すぐに見つかるはずです。それは明確でなくてもいいので、そのきっかけさえ自覚できれば、様々な本がそれを明確化する手伝いをしてくれます。その参考書として、経営学全般を把握するのに、伊丹・加護野(2003)『ゼミナール 経営学入門』はお勧めです。いかに自身の経験的な問題意識をアカデミックな理論に結び付けていくかというきっかけに役立ちます。特に、私の場合、組織行動の分野に興味があったので、金井・高橋(2004)『組織行動の考え方』も参考になりました。

また、研究計画書を身近な方に見ていただくことも是非お勧めします。私は、会社の先輩や異業種の知人にアドバイスをいただき、大幅な内容変更3回と微修正を加えると計10回以上書き直しました。書き直す度に、問題意識が研ぎ澄まされていくことが実感できました。このプロセスは、自分の問題意識を他者に伝えるという意味でも、入試で次に重要だと思われる面接対策にもつながります。

5. 1次試験対策

1)英語

過去問題をコピーサービスで入手し、まず過去3年間分を解いてみました。そこで、英文読解中心でそれほど高度な英語力は求められないが、経営の専門用語が求められるということに気がつきました。しかし、高度な英語力を求められないといっても、大学を卒業して6年間、英語から遠ざかっていたので英文読解の勘は鈍っていました。そのため、まず、勘を取り戻すために大学受験時に使用した参考書を見返したことと、経営の専門単語を知るためにグローバルタスクフォース著(2005)『MBA速読英語』を活用しました。

当日の試験時間は60分と問題量のわりに短いため、時間との戦いになります。したがって、過去問題を使って、時間内に解答する練習が必要になります。また、当日は、辞書持込が可能ですが、調べている時間があまりないため、辞書頼みを前提に勉強を進めない方が無難です。

2)論文

論文の題材は、過去問題をみると比較的広範囲に渡っていると感じました。そこで、日経産業消費研究所著『日経キーワード500』から時事キーワードをピックアップして様々な仮想問題(社会問題中心)を設定し、60分・500字で自分の主張を文章化する練習を行いました。ここでいえる主張は1つが限界だと思ったので、問いに対して、自分の主張を1つ決め、それを2?3つの理由でわかりやすく説明することを心掛けました。

6. 2次試験(面接)対策

3人の面接官に研究計画書の内容をより詳しく質問されます。具体的には、問題意識の出所、研究する理由(私の場合は自社にとってどういうメリットがあるかということ)、研究の調査方法を中心に質問されました。回答の中で曖昧な部分は鋭く突っ込まれたので、やはり、研究計画書の段階で、どれだけ深く考えていたかが合否を分ける重要な要因だと思います。

7. 最後に

これまで述べてきた通り、受験においては「何をするために神戸大学MBAにいくのか」を表現する『研究計画書』が、最も重要です。これは、入学後も、様々な知識を得る上でのベースになるので、受験のためという考えだけでなく、入学後の修士論文までの過程を意識することが必要です。是非、そのような視点で作成することをお勧めします。 最後に、私は、幸運にも合格することができ、神戸大学MBAに入学して半年が経過しましたが、入学する前の期待を超えるものを得ることができています。それは、日本有数の教授陣の授業、経営に関する知識の習得はもちろん自身のモチベーションの向上、そして、素晴らしい仲間との出会いなど言い尽くせないほどたくさんあります。是非、みなさんにも更なる前進のため「神戸の門」を叩いていただきたいと思います。

8. 受験生へのオススメ本

MBA受験の概要
  • 日経キャリアマガジン特別編集(2007年度版)『ビジネスリーダー実践プログラム』日本経済新聞社。
  •  飯野一(2005)『国内MBA無敵の合格戦略』中央経済社。
研究計画書
  • 伊丹敬之・加護野忠男(2003)『ゼミナール 経営学入門』日本経済新聞社。
  • 金井壽宏高橋潔(2004)『組織行動の考え方』東洋経済新報社。

(リサーチ方法)

  • 田尾雅夫・若林直樹(2001)『組織調査ガイドブック』有斐閣。
  • 高根正昭(1979)『創造の方法学』講談社。
英語対策
  • グローバルタスクフォース著(2005)『MBA速読英語』大和書房。
論文対策
  • 日経産業消費研究所著(2007年度版)『日経キーワード500』日経事業出版社。
その他
  • ヘンリーミンツバーグ(2006)『MBAは会社を滅ぼす』日経BP社。

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