外村衡平 さん

メーカー勤務 2006年度入学生 古賀ゼミ

受験準備について、私の経験から二つのことを取り上げます。一つは研究計画書を書くにあたって、携わっている仕事との関わりを第一に考えたことです。もう一つは対策という意識をしていなかったのですが、JMM(Japan Mail Media)というメールマガジンを読んでいたことが小論文対策として有効だったことです。

研究計画書を書く際に考えたのは、大学院の側はなぜ私を受け入れるのか、どういう人を受け入れて、どういう人を受け入れないかということです。学生を選ぶ大学院にとって社会人を学生として受け入れる意味は、企業での経験で培った知識や実務で使っている情報、最新の業界動向などについて、まさに生のデータを得られることなのではないか、と考えました。そう考えると、自分が大学院で学ぶ理由と、大学院が自分を学生として受け入れる意味とがぴったり重なっていることが重要です。また、仕事の延長線上にある課題に応える研究テーマを選び、実務に携わればこそ得られる情報が研究に役立つようにする必要があります。さらに、実務からのテーマであるからこそ今現在、多くの企業が関心を持っているような、時代を反映したもの、新しいネタである必要もあると思います。

私の主な担当業務は株主総会の企画と運営全般の実務で、一部IR領域の業務にも携わっています。昨年、ライブドア対フジテレビの攻防が話題になり、企業が敵対的買収防衛策を盛んに研究し始めました。そして担当業務にも敵対的買収防衛策の検証が加わりました。敵対的買収を退けることは、そうしなければ企業価値が守れないという状況でない限り認められません。そこで、守るべき企業価値とは何か、という問いが、担当業務の延長線上にある課題になりました。それは、過去数年、勉強してきた法律上の課題ではなく、経営上の課題でありMBAを志望する契機となりました。そして研究計画書は「日本の企業にはまだ十分に評価を受けていない価値があるのではないか、それは表現されていないだけなのではないか」という視点を中心に据えて書くことにしました。

私の例では、現在携わっている仕事との関わりが深いことと同時に、時機を捉えたテーマであったことも重要なポイントではないかと思います。

次に、JMMというメールマガジンが時事小論文対策として有効だった、という話です。JMMは作家の村上龍氏が編集長として発行しているメールマガジンです。このメールマガジンでは「金融経済の専門家たちに聞く」と題し、村上龍氏が社会の出来事について証券アナリストや経済評論家の方たちに質問を投げかけ、それに対するそれぞれの専門家の回答が記事になっています。このメールマガジンの良い点は、毎回同じ質問に対して五、六名以上の専門家による回答が掲載されており、しかもその回答の多くが異なった視点で書かれていたり、まったく結論が違ったりとばらばらに掲載されていることで、自分なりの質問に対する回答を見つけようとする癖がつくことです。そういった読み方をすると、それぞれのテーマについて、何を大切に考えるか、重要な問題は何か、自分なりに論点の優先順位がつきます。

受験本番での私の小論文の回答はJMMで同じテーマが取り上げられた際のある専門家の回答を思い出してほぼそのまま書いてしまいました。受け売りで書いたことは良いことではないかもしれませんが、そのままを書くことができたのは、他の複数の回答と読み比べて、納得ができていたため自分の中に答えとして残っていたのだと思います。

そういうわけで私にはこのメールマガジンが非常に役に立ちましたが、ここで言えることは、まず社会経済に関する問題について知っていること以上に、その問題に関する自分の考え方があることが重要なのだということです。新聞や雑誌の記事を自分の考えと照らして批判的に読んだりする癖のまだない人には、JMMを読むことをお薦めします。

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