高原 伸介さん
メットライフアリコ生命保険株式会社 勤務
1 . プロフィールをお聞かせ下さい。
2011年入学の高原です。1994年に大学を卒業し国内の大手生命保険会社に就職しました。リテール、ホールセール、人事部門、企業年金等の各部署を経験した後、外資系の銀行を経て、メットライフアリコ生命保険株式会社(当時はアリコジャパン)に入社し6年目を迎えます。現在はアリコのコールセンターにおいて、センター運営の仕事をしています。
2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?
仕事を離れることなく学べること、学生の平均年齢が比較的高く一定のマネジメント経験者が多いこと、そしてプロジェクト方式への共感です。自分自身が組織運営の仕事をするうちに、他業界の同職位の方々がどのように組織運営や課題解決に取組まれているのかを知りたい、できれば経験してみたいと思うようになりました。例えば一人の課長がその職務を全うするにはどうしても数年単位の時間がかかってしまいますし、その間、他の管理職業務を兼務できることは稀です。
しかし将来、上位職に就いた時のことを考えますと、一つ二つの業界だけではなく、様々な業界の幅広い知識や経験があった方が有利であることは間違いありません。同時並行で様々な経験ができないものかと考えていたのです。そのような時に、日本経済新聞に掲載されていた、神戸大学を含む各大学MBAの進学相談会の広告を目にし、受験前年の夏に梅田までお話を聞きに行きました。そこで南知恵子教授から「できれば社会に出て数年の方ではなく、一定の経験をお持ちの方に来て頂きたい。様々な業界から実務上の課題を持ち寄って頂きたい」という内容のお話を伺い、受験してみようと気持ちが固まりました。
実際に、入学後はケースプロジェクト研究やテーマプロジェクト研究をはじめとして、6?7人でチームを作り実際の経営の課題を研究していくプロジェクトに多数参加することになります。他業界の様々な立場の仲間たちと意見をぶつけ合い解決に導いていくことは、当初の私の期待以上に自分自身を揺さ振り、日常業務において求められる組織運営の判断の場でも役立つことが多くとても有意義です。
3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。
私は企業派遣ではないため、業務上の都合から金曜日の講義は履修することが困難でしたので土曜日中心の通学となりました。入学後すぐは、三品和広教授のゼネラルマネジメント応用研究で課される必読文献のボリュームに圧倒されました。どんなに早くても毎晩1時2時頃まで文献に目を通す毎日からMBAは始まります。
また学部生の頃は完全に文系でしたので、島田智明准教授のサーベイリサーチ法応用研究、清水泰洋准教授の財務会計応用研究、砂川伸幸教授のファイナンス応用研究等の講義では、数学の基礎知識がないことが非常に重くのしかかりました。平日のランチ時間に一人で微分や統計の復習を必死で行い何とかついていくことができましたが、講義に出る以前の話として私には苦しい時期でした。入学後1?2ヶ月経つ頃から事前・事後レポートの提出が多くなります。個人提出のものもありますが、平行して少人数のチーム毎にレポートを課される科目も多く、平日の業務終了後にメンバーで集まり、深夜まで打合わせをする毎日が続きます。出張等で直接参加できない日でもチャットやSkypeを利用しますので、逃げることはできません(笑)。
そういった意味では通学こそ土曜日のみであっても、平日や祝日も全て予定が埋まると考えた方が良いと思います。現在は修士論文の執筆のみとなりましたが、講義で同級生と顔を合わせることがなく孤独な戦いとなりました。facebookやメールで同級生の進捗を確認しつつ励みにして取組んでいます。
4 .ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?
私は鈴木竜太准教授のゼミに所属しています。一口に経営学といっても様々な分野がありますが、私は「人」、その集合体である「組織行動」そして「コミットメント」に興味がありました。鈴木ゼミに入れて頂き、同じような興味関心をお持ちのゼミ生と一緒になれたことは幸運でした。
ゼミでは個々が自分の研究テーマについて発表していくのですが、皆、悩む内容や課題が近いため、自分だけでは気付けなかった問題に気付かされる等、本当に勉強になっています。いくら正しい理論や財務分析手法を学んだところで、それを使って組織を運営していくのは人間ですし、「人は理屈では動かない、理屈で動く人間は最終的に信用できない」というのが私の持論です。
そういった意味からも、リーダーシップ、コーチング、モチベーション、HR(Human Resource)戦略等、「人」に関する様々な切り口から修士論文のテーマを考えましたが、最終的に現在の職場である、コールセンターにおけるモチベーションの研究に落ち着きました。先日、アンケート調査を回収し、分析を始めたところです。
5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。
日常の業務だけでは、刺激を受ける人や尊敬できる人にはなかなかお目にかかることができませんが、神戸大学に入学して一気に70名近くのとてつもない同級生たちに囲まれることになりました。企業派遣の方も多く、日本を代表する各社の中でも選抜されてきた方々です。大学で顔をあわせる度に自分が在学していることに違和感を覚えずにはいられず、プレッシャーは常に感じます。また各分野におけるトップランナーである教授陣はもちろんのこと、ゲスト講師の方々の講義にも圧倒されることが多く、机上の知識だけではなく実際の業務にすぐに取り入れるべき気付きが毎回少なからずあることも大変魅力です。
不思議なもので、平日の夜間や土日の大半の時間を勉学に費やすことになると、タイムマネジメントが否が応でも上手くなります。これは日中の業務においてもあてはまり、優先順位の考え方や、やるべき仕事、そうではない仕事(というものが実は結構あったりします・・・)の峻別が以前よりも上手になったと実感します。一方で、金銭感覚は完全に麻痺してしまいました。平日の打合せ時の飲み代や、何よりも書籍代が毎月かなりの金額になります。図書館等を利用することももちろんできるのですが、私の場合、もっぱらネットからの注文で済ませてしまいました。読みたい本と読むべき本はやはり異なることが多く、読むべき本を半ば強制的に読むことになるのは、実は幸せなことだと感じています。
6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。
短期的には現在の研究の成果を現職場において活かすことが重要だと思います。私の研究は社員のモチベーションに関することですので現場に活かすことができますし、様々な場面においても応用が可能です。したがいまして今後のキャリアにおいては、場所やポジションにかかわらず自己のマネジメント力の一つとして活用できると思います。中長期的に考えますと、やはり神戸大学でMBAを目指した当初の目的であった「様々な業界の課題解決の(擬似)経験」を活かして、より大きく複雑な組織運営に携わりたいと考えています。
7.残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。
何といっても修士論文を高い次元で仕上げることが目下の目標です。現在の職場における重要な課題を論文のテーマにしていますので、決して学術研究に留めることなく実践で役立てたいと考えています。順調にすすめば、あと数ヶ月で修了を迎えます。修了後にも緩むことなく、入学後の研鑽の日々を習慣化するために、残りの学生生活においては生活のリズムにしっかりと勉学を取入れて固めたいと考えています。
最後になりますが、この年齢になっても学生として学ぶことができるのは、多くの方々のご理解と暖かい支えのお陰です。また企業派遣ではなく単に私のわがままで毎週末を不在にしているにもかかわらず、目をつぶって快く送り出してくれる家族には本当に感謝しています。この場をお借りして皆さまに厚く御礼申しあげます。