2014年度テーマプロジェクト発表会 金賞チームインタビュー

2015年1月10日(土)、神戸大学社会科学系アカデミア館504教室で行われたテーマプロジェクト発表会において、激戦の末、見事優勝を勝ち取られたチームにインタビューを行いました。

金賞

メンバー:安居院徹、加賀久、福谷学、村瀬敦啓、吉田美穂、余田知弘
(※五十音順、敬称略)

Q1. 準備にはどれくらいかかりましたか?

(安居院) 5か月のプロジェクト中は、仕事・授業の合間を縫って、平均週1回はチームで集まり議論しました。10名を超える企業経営者・専門家にインタビューを行い、ブランド論の文献や資料に照らしながら、ひたむきに面白い事例・視点を探し続けました。最終発表が迫った12月後半以降は、ほぼ毎晩、深夜までストーリー練り直しやパワポ作成に取り組み、発表前日は泊り込み合宿まで敢行。この終盤にかけての盛り上がり方は、MBAのチーム研究ならではの経験といえるかも知れません。

(加賀) チームビルディングを開始したのが前期ケースプロジェクト真っ只中の6月中旬。多様性を重視し、各自所属している企業・業界の枠を超えて、かつグローバルな視点を持ったメンバーとチーム結成しました。実際にプロジェクトが始まってからは、出来るだけ多くの企業にインタビューできるように地元神戸はもとより、北は盛岡から、西は広島までの企業の方々に協力していただきました。インタビューを終えた12月中旬以降は、平日・週末を問わずにほぼ毎日、メンバーで議論を交わしました。また元日より発表当日の朝まで毎日スライドを更新し、最後の更新は発表当日の朝6時でした。よい作品が出来上がったと自負できます。

(福谷) テーマ自体はぼんやりと「世界」「グローバル」で行こうと決めて集まったメンバーですが、それ以上は何も決めていなかったので、準備は発表の前日夜中まで丸半年全て費やしました。できるだけ多くの会社に訪問し材料を集めるというコンセプトだったので、コスト的にも労力的にも大分大変な思いをしながら、それでいて楽しみながら頑張りました。

(村瀬) 8月16日の最初の授業で、有志のメンバーが集いあい、公式にチームが決定されるのですが、私たちの場合、それまでにお互い声掛けをし合っていましたので、8月までにチームが決定していました。発足のテーマとして、グローバルビジネス・キャリアに関心があるという点が共通の要素でした。プロジェクトの最初の課題であるテーマ選定の時点から、グローバルをキーワードにインタビューも行っていきました。が、最終的な研究テーマは、日本の中小企業を対象としたものとなりましたので、最初のテーマにこだわる必要はないと感じました。ただ、グローバル視点から国内中小企業のブランディングを観察する事は、ケース企業の選定や強み、ブランディングプロセスの発見に大いに役立ちましたので、テーマについて詳しい人間が揃うというのは、鋭い分析や切り口を得るにあたって、非常に重要な役割を果たしています。ですので、準備は8月前から。講義が始まってからは、常にメンバー全員、全開での取組となりました。

(吉田) ケースプロジェクト終了前から動きは始まっていました。私はまだケースPJに没頭している中、あるお一人からお声掛けいただきました。7月はじめごろだったと思います。ダイバーシティに富んだチームを作りたいという熱い思いを伝えられ、私で貢献できるのであればという思いで参加を決めました。授業中も鋭い発言で際立ったメンバーばかりでしたので、こんな中で自らを成長させたい!という気持ちも後押しになりました。8月のスタートからはノンストップで走り切りました。走りながら固めていくというのはこのことをいうのですね。12月に入ってからはほぼ毎日電話会議、クリスマスもお正月も返上で、前日に至っては泊まり込みの徹夜でした。当日の朝まで粘って準備していました。

(余田) トータルでは約半年の期間です。6月末にはメンバーがほぼ確定していましたので、前期のプロジェクト研究を終える前から準備が始まったことになります。ちなみに(8月下旬に初回の講義があった)テーマ・プロジェクト研究のシラバスが学生に提示されたのが7月中旬でした。 11月8日に行われたテーマ・プロジェクト研究中間発表で各チームがMBAフェローからアドバイスやダメ出しを受けた後、1月の発表に向けさらにプロジェクト研究中心の生活になっていくのですが、メンバー間で連絡を取り合わなかった日のほうが少なかったのではないでしょうか。それほど「濃い」取り組みでした。

Q2. 入学から4ヶ月を振り返って、実際のMBAの授業はいかがですか?

(安居院) 毎週土曜日は終日講義があるので、平日の業務終了後や日曜も、事前準備やレポート作成に追われ、目が回りそうでした。しかし、暫く経つと、ナチュラル・ハイと言うのか、授業に臨むのが楽しくなってきます。神戸大学の先生方の講義は、いずれもエッセンスが凝縮されているし、我々、社会人学生の問題意識を強烈に刺激して、自然と議論を喚起させてくれます。また、何より学業を続ける原動力となったのは、魅力的な同級生達との絆です。授業後に皆で六甲付近の居酒屋で交わす盃は、その週の疲れを全て癒してくれました。

(加賀) 授業単位(例えば、経営戦略、財務会計等)で切り分けるのではなく、全体のカリキュラムを俯瞰したときに、神戸大MBAの授業はよくデザインされていると思います。常にトップスピードで駆け抜ける訳ではなく、時折インターバルがあるのでメリハリがつきます。授業にメリハリがあるといっても、自社での日常業務をこなす必要があるので、時間管理能力は数段に上がったと思います。仲間からの刺激もたくさん受けます。各種マイルストーンが終われば大多数の同級生が参加する懇親会は同級生のネットワークを強固にします。また、ケースプロジェクトのインタビューを通じて経営者の言葉をじかに聴けるということはとても貴重な経験です。経営者からの視点を垣間見ることによって、自社・自身に対する考え方が少しずつ変化していることがあります。まさに「人生を変えるMBA」だと思います。

(福谷) 非常に有意義です。特に個別の「The MBA」と言われるようなファイナンス、マーケティングといった授業以外にもいろいろな分野の授業があり、全て理解できなくても授業で学ぶワンフレーズを頭に残しておくだけで、「この考え方を仕事に活かしてみよう」と次週からポジティブに仕事に取り組むことができます。例えば、私はコーチングという考え方を全く知りませんでした。コツ自体は知らなくても、なんとなく見よう見まねで意識して対話するだけで、以前よりも相手に気づきを与えられているようになっていると思います。
それから今回のテーマプロジェクトを始め、神戸大MBAが誇るアクションラーニングは非常にためになる授業です。
1つ目にチームワークの大切さを学ぶことができます。会社でも皆得意分野はそれぞれです。その得意分野・強みを結集して知恵を出し合い、助け合いながら一つの成果物を作り上げていくという大切さを学ぶことができます。
2つ目に人脈、ネットワークを形成することができます。大学院内外のインタビュー先でいろいろな方にお世話になりながら情報収集するわけですが、そのインタビューをとおして様々な人の考え方に触れる機会を与えられます。自分たちが普段感じている感覚がいかに狭いところに留まっているかを気づかせてくれ、人として大きく視野が広がることを実感することができます。
3つ目に根気、粘り強さを学ぶことができます。プロジェクト自体は競争なので、他チームの状況に翻弄されながらもチーム一丸となって協力する必要があります。チームのバランスを崩さずに最後まであきらめない気持ちが一番大切だということを学びましたし、これは仕事にも言えることです。仕事でいろいろと壁にぶつかり、そっとしておいた方が良いのかなと及び腰になることもあると思いますが、その判断は間違っていて、粘り強く信念を持って前に進めることこそ最後に花を咲かせることにつながるということを学びました。

(村瀬) もっとたくさん参加したかったと思います。金曜日の講義も、参加したメンバーの話を聞くと、とても有意義だったと聞きます。チームプロジェクトを軸とした講義スタイルは、他の全ての講義もチームを背景に進んでいきます。色々な講義の中で、お互いに威力を発揮し、心底助けられるシーンが続きます。そのため、講義の「選択と集中」を考えなくとも、貪欲に全取りを狙うことが可能なのかな、と感じます。

(吉田) 本当に充実したカリキュラムです。感覚的にしかとらえられなかった出来事と理論を組み合わせ仕事に適用できるだけでなく、仲間からの鋭い指摘から常に刺激をもらっています。「それは違うと思う」という言葉から始まるディスカッションは、当たり前と認識していたものをゼロから見つめなおすことができ、同時に自社について深く理解できる機会になっています。また、教授陣が授業に込めるいくつものメッセージが強く心に刺さっています。特に「自分たちの夢を君たちに託す。バトンを受け取ってほしい」という言葉は、単に神戸で学ぶというだけでなく、人生の在り方までを考えさせられました。このように自分と向き合う時間があちらこちらに散りばめられています。
しかし全く休む暇を与えてくれません。テーマプロジェクト発表の1月はレポート課題も多く、RST準備もあったので、体力的にはギリギリの世界でした。時間がない中でもアウトプットを求められるプレッシャーは変わりません。救いとなったのは、周りのみんなも同じ状況ということ。お互いに励まし合って、何とか乗り越えていきました。

(余田) もともと神戸大学には経営学研究の蓄積がありますが、社会人のための専門職大学院として1989 年に「神戸大学ビジネススクール」がスタートしました。最先端の経営学研究の知見を持つ層の厚い教授陣による授業を通じ体系的な経営学全般の知識の修得機会があります。
また、クラスメートとして様々な業界から現役のビジネスパーソンが集まっています。異なるバックグラウンドを持つ社会人どうしが頻繁に顔を合わせ、職場で直面する課題や問題意識を持ち寄り議論し、経営上の問題解決策を探るプロセスが「神戸方式」の特徴のひとつです。企業経営にインパクトを与えることができるかという点で、チャレンジングな取り組みです。

Q3. 発表会の準備で大変だったことは何ですか?優勝の感想と併せてお答え下さい。

(安居院) 今回取り上げたテーマは、ブランディングに成功した中小企業を対象としたものですが、ブランド論はマーケティングの主要分野でもあるので、果たして面白い研究に発展するのか当初は不安もありました。研究途中においても、企業インタビューと学問的知見を組み合わせることで、新たな発見・エッセンスとして何を浮かび上がらせ、そこに至るストーリーをいかに説得的に提示するのかに大変苦労しました。しかし、自分の限界まで考えて考え抜いた分、最終的に頭の中にストーリーの全体像が浮かび上がった時は、知的興奮で身震いがしました。今回、金賞という栄誉を頂けたのは幸運でしたが、私自身は、何よりも優れた中小企業のブランディング事例から得た学びや感動を、後に続く企業に有益な実践論として提示したい、そうした想いをチームとして形に出来たこと、そして、その成果を中小企業の経営者にご報告した際に心から喜んで下さり、参考にしたいと仰ってくれたことが、何にも代えがたい充実感を与えてくれました。

(加賀) インタビューを数多くこなした一方で、議論の焦点が散漫になりかけたことがありました。 年の瀬も迫った12月下旬にチームメンバー所属のMBA先輩にアドバイスを頂いたときが本当の試練でした。いままで築き上げたストーリー、プレゼンを一旦白紙に戻し、一から出直ししました。そのおかげで論点が絞れチームとして伝えたいメッセージが明確になりました。
シラバスには「インパクトの高いテーマ、最強のチーム編成に心がけてください。」とあります。多様性のあるチームメンバーが集まり、各人が出来ること以上のことをやり遂げた結果が金賞受賞につながったと思います。もちろん、多大なサポートを頂いた家族には感謝の気持ちで一杯です。

(福谷) 成果物がパワーポイントで出来上がっても、まだそこからが戦いです。限られた時間で簡潔に分かりやすく伝えるためのプレゼン練習、そしてその練習から見えてくるパワーポイントのブラッシュアップ、この辺りが非常に難しく、夜通し皆で喧々諤々と議論し、練習し当日に臨みました。やってみると分かりますが、パワーポイントをブラッシュアップする担当は、どうしたら理解しやすいスライドになるのかイメージが湧きにくいところからスタートします。つまり創造力・発想力が求められるわけです。一方のプレゼンターは、恥ずかしいという気持ちを捨て去り、ハッキリ簡潔に声を発することに慣れるというところからスタートします。実際に声を出してみないと、自分が分かっていない箇所が見えてこないものです。この役割を率先垂範で分担したおかげで、最後の夜も生産的で効率的に動け、優勝につながったと思います。

(村瀬) チームに参加することです。これが一番大変でした。チームのメンバーから学びながら、ただもらうだけではなく、自分も相手の役に立つこと。そのために自ら意欲を強く持って「参加」することが、一番大変だったことであり、一番学んだことでした。会社では、プロジェクトやタスクフォースを作っても、参加せずとも進んでいく事は多々あるかと思います。参加する意味を、是非自分で創っていけたのなら、同じ想いを持つメンバーの数だけ大きくなった充実感となって、返ってくるのかと思います。

(吉田) 議論に終わりがないということです。社長インタビュー記事を何度も読み返し、「社長の伝えたかった本当の意味は何か、その背景は何か」と事例企業がたどってきた成長のプロセスをくみ取り、自分たちなりにモデル化することを繰り返すプロセスがありました。でもそう簡単には見つからず、何日も過ぎ「これ以上、見えるものはないんじゃないか」とあきらめそうになった時に、いつも出てきたのが「あと一歩上をめざそう」という言葉でした。この一言が議論を終わりにさせるのではなく目前のテーマと戦う原動力となりました。当日の朝まで、上を目指す。自分がここまで取り組むことができたという一連の経験は、現在の自信へとつながっていると思います。