坂元 剛さん

ロールス・ロイス ジャパン 勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

2015年度入学の坂元剛です。2001年から約10年間は日系の航空宇宙機器メーカーに勤務し、民間航空機・防衛航空機の設計開発エンジニアとして数名からなるチームを率いて新型機の開発プロジェクトをリードしました。2011年に航空機エンジンメーカーのロールス・ロイス ジャパンに入社して現在に至ります。当社の航空機エンジンに使用される重要部品は大手重工メーカーに代表される多くの日本企業によって支えられており、こうした企業からなるサプライチェーンの競争力を高めるために必要な技術的支援を社内外に提供するのが現在の職務です。所属部門は約15カ国の出身者からなる多国籍組織で、多様な価値観を持つ仲間が仕事やプライベートで多くの成長機会を与えてくれます。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

十数年にわたる技術系のキャリアは大変充実したものでしたが、この先10年、20年のキャリアを計画したときに、技術の他にもう1本の柱が必要と考えるようになりました。数ある選択肢の中から、ビジネススクールで経営学を体系的に学んで2本目の柱とし、その上に次のキャリアを築く道を選びました。また、自宅の本棚には経営学に関する書籍が多く、この分野に対する自身の潜在的な興味・関心を認識していました。国内・海外に多くのビジネススクールがありますが、その中でも国内の神戸大学MBAを選んだ主な理由は以下のとおりです。

  • 多国籍チームからなる外資系企業で多くの日本企業と共に仕事をしており、今の日本企業の姿をより深く理解して仕事に生かすためには、日本企業出身者が集まる国内ビジネススクールで共に勉強することが適切であること
  • 中でも神戸大学MBAは学位論文を特徴としており、業務で直面する経営課題の研究で得られた資産を長期的に航空機産業に還元できること
  • わが国で最初に経営学部を設置した神戸大学が誇る有形無形の資産を、仕事を続けながらかつ極めて高い投資対効果で利用させていただくことで、今後のキャリア開発にプラスの効果を期待できること
3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

原則全ての科目を履修しています。各科目の講義計画はホームページにあるシラバスに記載されており、テキスト、参考文献、事前・事後課題などの詳細な情報が入手できますのでぜひ参考にしてください。世界のビジネススクールで使用されている定番テキスト、国内トップクラスの実務家・研究者が執筆する書籍に関する情報も手に入ります。講義は金曜日の夜間と土曜日に開講され、3?5科目を同時に履修している状態になります。具体的には「ケースプロジェクト研究」や「テーマプロジェクト研究」のように6人程度のグループで課題に取り組み、約4ヶ月後の最終発表を目指すグループワーク中心の科目と、「統計解析応用研究」や「ファイナンス応用研究」のように個人学習が中心の科目の2つに大別され、それぞれ時間の使い方が異なります。

8月に終了した「ケースプロジェクト研究」では、金曜日か土曜日の講義後にグループでミーティングを行い、平日に各メンバーが持ち帰ったアクションに取り組んでその結果を次のミーティングに持ち寄り、議論した上でさらに次のアクションを決定するというのが1週間の典型的なサイクルでした。ミーティングの部屋は教務係に予約して教室を確保しますが、私のグループには居酒屋を間違って(?)予約してしまう飲み助さんが少なからずいました(盛り上がっていいアイデアがすぐ出ます)。アクションの内容はプロジェクトの段階によって異なりますが、インターネット、雑誌、書籍、論文などの文献調査、財務諸表などのデータ収集・分析、問題解決フレームワークの創出、インタビュー調査、発表内容の論理構成チェックなど多岐に渡ります。

個人学習が中心の科目はテキストや参考書を読んで事前課題に取り組み、授業前日までに疑問点や質問を整理します。授業後は与えられた事後課題を中心に復習します。神戸大学の学内ネットワークに接続することでハーバード・ビジネス・レビューなどの専門誌や学術文献にアクセスできますので、さらに深く学習したい場合のリソースとして活用できます。もっと時間をかけて勉強したいのですが、家族との大事なイベントや海外出張などが入るとどうしても勉強時間が減り、最悪の場合授業を欠席せざるを得ない状況にもなります。効率的な時間管理に努めつつも、最後は優先順位を決めて限られた時間を適切に配分してやりくりするというのが現実です。

充実した学生生活を送るには健康な体が欠かせません。18ヶ月の長丁場を乗り切るため、体調維持にも気を配っています。本を読む時間が減ってしまいますが片道20kmの自転車通勤は継続し、さらに土曜日の六甲台キャンパスへの自転車通学を追加して運動時間を確保するよう工夫しています。一週間の計画やアイデアを考えるのに最適な時間でもあります。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

8月に私を含めて15名が黄?ゼミに配属され、来年8月の学位論文提出に向けて始動しました。現在は問題意識、研究テーマ、リサーチクエスチョン、仮説などを発表し、黄教授のフィードバックを基にさらに磨きをかけるといった段階にあります。具体的には、自身の問題意識が経営学のどの分野にフィットするのか、その分野で使われるキーワードは何かといった点を把握した上で、文献調査により先行研究の貢献及び限界を明らかにします。学生が業務上直面する経営課題を研究テーマとするので、同じゼミでも研究テーマが実に多様で、そこから大きな学びを得ることができます。

私の研究における問題意識は、航空機産業のリーディングカンパニーである欧米の機体メーカーやエンジンメーカーがサプライチェーンの競争力を高めるために何をすべきかという点にあり、現時点ではそれを経営学における「サプライチェーンマネジメント」、「バイヤー・サプライヤー関係」、「組織間信頼」、「産業財マーケティング」といった視点から研究できないか模索しています。

ゼミ担当教授によってスタイルが異なります。大学からはゼミ志願書を提出する前に各ゼミの特徴を説明するオリエンテーションがあり、MBA Caf?からはOB・OGの視点でゼミを紹介するイベントを開催いただきました。さらに、修士課程2年生の学位論文中間発表会や最終報告会に参加する機会が与えられ、研究プロセスや学位論文執筆のイメージが把握できるよう手厚いサポートが提供されています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

4月に入学して半年が経過し修士課程の1/3が終了しましたが、自身の専門分野と経営学の間に共通点を発見し、知識の広がりを実感する楽しみを幾度となく味わいました。製造工程管理やシックス・シグマ(プロセス改善手法)で学んだ統計学はファイナンスやサーベイリサーチにおいて必須の学問であり、統計学が持つ優れた汎用性を実感できます。また、経営課題としてよく取り上げられる企業文化やリーダーシップについて、企業で様々な取り組みがされていると思いますが、組織行動学というフィルターを通して見ることで、その背後にある理論や経営層から見た目的を高い視点で理解できるようになります。

多くの方が述べられている通り、業種、職種や世代の異なる仲間との出会いが生む価値は極めて大きいでしょう。ケースプロジェクト研究ではキャリアの全く異なるメンバーが集まりましたが、約4ヶ月のプロジェクトの終盤には家族全員を招待して芦屋浜で20名以上のBBQパーティーを開催するまでに交流を深めました。また、スポーツやグルメなど、共通の趣味を持つ仲間同士が設立するサークルもクラスに数多く生まれています。皆さん勉強と息抜きのバランスを取りながら学生生活を楽しんでいます。

神戸大学MBAは、職場から離れた環境で新しい自分を低リスクで試すことができる実験室でもあります。一つの企業で長期間勤務し周囲の評価や自身の行動スタイルが定着してしまうと、自分を変えたくても目に見えない障壁や心理的な抵抗を感じることはないでしょうか。例えば、リーダーシップについて、いつかこうありたいと思うスタイルがあれば、それを週末にグループワークなどの安全な環境で試して仲間からフィードバックを手に入れることができます。それが効果的であることが分かれば職場で安心して実践できるわけです。プロジェクト方式を特徴とする神戸大学MBAはこうした場を豊富に提供してくれます。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

卒業後は研究で得られた資産を航空機産業に還元し、サプライチェーンマネジメントにおいて航空機産業の発展に貢献したいです。中長期的な目標は、十数年にわたる技術系のキャリアを神戸大学MBAで飛躍させ、社会により高い価値を提供できるビジネスリーダーになることです。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

後期の授業が開始し、残りの学生生活は約1年となりました。当初の入学目的が達成できるよう尽力したいです。また、仲間の価値ある学びに貢献することも忘れずに残りの時間を楽しく過ごしたいと思います。

最後になりますが、週末の貴重な時間を授業やゼミに提供いただいている先生方、研究室スタッフの皆様、事務手続をサポートいただいている教務係の皆様に御礼申し上げます。

そして、学生生活を支えてくれる家族にも感謝です。卒業して最初に迎える週末をどう家族と過ごすか、忘れずによく考えておきたいと思います。

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