長 真樹子さん

イオン株式会社 勤務

1 . プロフィールをお聞かせ下さい。

2014年度入学のイオン株式会社の長真樹子です。神戸大学の近郊で育ち、阪神大震災で生活インフラが遮断され不自由な生活を経験したことから、生活インフラとしての流通・小売業の社会的役割に関心を持ち、社会貢献活動にも積極的に取り組むイオンに就職しました。イオングループは、小売業、サービス業、金融、ディベロッパーなど様々な事業を国内外に展開しています。入社後、店舗スタッフ、カンパニー人事を経験し、現在、グループ中核であるイオン持株会社のグループ人材育成部に所属し、グループ会社に共通する国内外の経営者教育、専門・機能人材の発掘・育成、新入社員教育、理念教育の企画・運営に携わってきました。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

当社に限らず企業は、時代の変化に応じ事業の多角化、グローバル化、M&Aを進め、 多様な企業文化・風土を持つようになり、既存の考え方、やり方は通用しなくなってきています。各組織や個人の持つ力を最大限に引き出すだけでなく、グループ全体のシナジーを発揮し、パフォーマンスをいかに向上させていくかが人事としての課題です。

現在の部署に5年間所属することで経験は得ましたが、一方で当社の考えに染まってきていることに危惧を感じていました。視点や発想を転換するには、社内の教育機会や自己学習では限界を感じ、これまで業務上関わることの無かった業種・職種の人と他流試合を行うことで外部視点を取り入れ自社を俯瞰することが必要だと思いました。また、戦略的人事思考を養い、人材育成担当者として変革型リーダーの育成において当社が不足しているものを見つけるために経営学を体系的に学びたいと思い、MBA進学を決意しました。

【学校の選定理由】

  1. 経営学をリードする研究教育機関であり且つ、自身が専門性を深めたい「人」に関わる分野におい
    て、金井壽宏教授や高橋潔教授ら日本屈指の研究者が揃っていること
  2. 理論と実践の場として「プロジェクト方式」が2コマ用意され、現実に直面する課題にチームで取り組み視野拡大を図れること
  3. 多業種・職種から成る学生構成のバランスの良さ、教授陣の研究者、教育者としての両面に秀でた魅力を先輩社員から聞いていたこと
  4. 当社のOBである平野光俊教授の存在

以上の理由から神戸大MBAを選択しましたが、現代経営学研究所(RIAM)主催の産学連携の経営学に関するワークショップでは、神戸大学大学院経営学研究科の最先端の研究や産業界で活躍する卒業生の声に触れることができますので、こうした機会に参加し、直接校風を体感されることをお薦めします。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

3月下旬から講義はスタートしましたが、三品和広教授の「ゼネラルマネジメント応用研究」で多くの課題図書がありましたので、実質3月上旬から学生生活が始まっていました。予習をきっちり行い自身に引き寄せ問題点を整理しておくことが肝要ですので、授業の無い日は課題と予習に追われる日々です。私は、平日夜に修士課程の授業を一部履修していましたので、課題が多い時には連日徹夜しても消化不良になることも多々ありましたが、論文を執筆する上で社会研究方法を基礎から学べる「定性的方法論」など当校の修士課程や京都大学経営管理大学院の授業を履修でき、一般大学院生と交流できるのも魅力のひとつです。

必須科目で1年前期「ケースプロジェクト」、後期「テーマプロジェクト」があり、6名程度のチームで半年間かけてケース研究に取り組みます。時間的制約の中でより多くのエビデンスを集め、解釈の切り口を広げ、本質に迫り、論理構築できるかがポイントです。そのためには、チームビルディングも大切な要素です。授業のない平日に分担して企業訪問や文献研究を行い、SNSもフル活用して議論を重ねました。問題を深く掘り下げる程、複雑な現実という難解なパズルが解けていく面白味みや、企業訪問でしか知りえない経営者の思いや真摯な姿勢が経営者を目指す我々の刺激となりモチベーションを高め、多忙な仲間と共にプロジェクトをやり遂げることができたのだと思います。自身にとっては、論理構築やプレゼンテーション、効率的に短期集中で取り組むプロジェクト推進のトレーニングにもなりました。

そして、多忙を極める仲間が学業と仕事、家庭を両立し、かつ質の高い課題を仕上げ議論する姿が刺激となり、今の私の原動力になっています。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

高橋ゼミに所属しています。ゼミでは、産業・組織心理学、組織行動論をベースにリーダーシップやダイバーシティー、モチベーションなど「人」に関わることについて、外部講師の講義やディスカッションが行われています。

私自身は、効果測定が難しいと言われる人材育成の分野で定量的なアプローチ法を習得したいと思っていましたので、組織行動論の分野でも統計解析に精通された高橋先生に師事できることは幸運です。また、岡山大学余合准教授とTA碇さん(当校博士課程)が毎回示唆に富んだアドバイスを与え、ゼミと論文研究をサポートしてくださるので、心強い存在です。

学位論文では、グローバル化を進める当社の課題である「グループ全体最適実現に向けたグローバルな人材マネジメント」について研究するつもりですが、タレントマネジメントなど何に焦点を絞るのか先行研究をしながら迷っている状況です。いずれにしても、ゼミの特色を活かし、定性・定量的方法のハイブリットで論文を執筆するつもりです。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

神戸大MBAの特色である2回のプロジェクト研究以外にも多くの授業でケース研究とチーム課題が課され、理論と実務を融合させるトレーニングが繰り返されることで、着実にその思考法が身に浸透してきているのを感じます。また、授業中の仲間の自社事例紹介は、実務での展開事例としてこの場でしか得ることの出来ない貴重な学びとなっています。プロジェクト研究の企業訪問では、IR情報等の文字情報からは分からない経営にまつわる貴重な話を伺うことができ、一筋縄では説明できない複雑な現実が存在し、こうしたことをMBAコースで学ぶ理論とどう結び付けていくか、そこにこそ我々実務者が大学院で学ぶ意味や価値があるのだと思います。

MBA生活が折り返し地点を過ぎ、これまでの授業で得た知識が点と点であったものが、経営学のもと複雑に重なり合い、繋がってくる面白さを感じています。その背景には、多くの企業に精通され、我々に関心を持って大変熱心に指導をしてくださる教授陣、私よりもはるかに人生経験が豊富で多才な仲間の存在を欠かすことはできません。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

これまで、人材育成を中心とした人事の仕事に携わる中で、経営・戦略的人事としての成果と従業員の働きがい向上を両立する組織を作りたいと考えてきました。一方で、2020年アジアNo.1リテーラーを目指す当社において、その最大の鍵を握るASEANの人事戦略立案や人事システム構築のプロジェクトに参画したいとも考えていました。

しかし、「ゼネラルマネジメント」の授業でその役割について学び、プロジェクト研究を通じて様々な経営者の魅力に触れ、MBAを取得するからには、人事のプロを最終目標とするのでなく、経営者としてのゼネラルマネジャーという大きな仕事にトライし、業績という経営責任を果たすと共に従業員の働きがい向上を両立できる組織を実現したいという想いが強くなっています。

一方で、長年携わっている上方舞・楳茂都流の継承者の一人として、関西が育んできた豊かな文化を後世へ伝えていくと共に、グローバルな時代だからこそ特色ある関西ローカルの魅力を発信し、少しでも関西文化の興隆に寄与できるようライフワークとして取り組んでいきたいです。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

多くの経営者の声に触れるなかで、「学び続けること、人との縁を紡いでいくこと」が人生の糧となり、経営哲学の基盤となっていることを感じます。MBA生として過ごすこの一年半は、こうした機会に恵まれ集中的に取り組むことができる貴重な時間だからこそ、残りの時間は集大成として、実務にとって有意義な研究になるよう学位論文に全力投球したいです。もう一つの目標は、ここで得た貴重な仲間と10、20年後も切磋琢磨できる関係を構築しておくことで、OB・OG組織「MBA cafe」 の運営に携わり、修了後も定期的に学習できる機会を仲間と一緒に企画していきたいです。