石神 理予さん

楽天グループ株式会社 勤務

1 .プロフィールをお聞かせ下さい。

2023年度入学の石神理予と申します。カナダのオタワ大学商学部を卒業後、日本のコンサルティング会社に就職し、大手企業の内部統制構築やシステム構築プロジェクトに約8年従事しました。その後、2014年に楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)に転職し、ガバナンス(会社法関連対応)・リスク(インシデント管理、BCP構築)・コンプライアンス(教育)関連業務を担当しています。

私のプライベートについてもお伝えさせてください。私は、第1子を2022年12月下旬に出産し、その10日後に、神戸大学MBAの一次試験(筆記)を受け、その後二次試験(面接)も経て無事合格をいただき、子供が月齢3か月であった2023年4月に神戸大学MBAに入学しました。仕事は育児休業を取得し、子供は授業のある土曜日に加え、勉強時間確保のため平日も週2日保育園に預け、育児と勉学のバランスをとりました。2024年1月に会社へ復職する一方で、第2子を授かり、本原稿執筆をしている6月中旬に再度産休に入り、7月下旬に出産予定です。できる限り出産前に修士論文を書き上げ(なかなかそのように順調には進んでいない現状ですが)、当初の予定通り2024年9月に同級生の皆と一緒に修了したいと考えています。

僭越ながら、本寄稿が、出産・育児とのバランスに不安を感じている受験検討中の方々にとってもご参考になればと思い、上記プライベート面の状況も記述させていただきました。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

まず、MBAを目指した理由は、幅広い視点をバランス良く取り入れるためです。自身が業務上の経験を重ねるにつれ、過去の自身の経験に基づく判断が増え、視点が一部欠けているのではないかと感じることがありました。これらの狭い視点を広げるためには、MBAで体系的に学ぶことが効果的であると考えました。

次に、MBAの中でも神戸大学を選択した理由は、以下の3点です。これらを満たすのは神戸大学のみであり、単願で臨みました。
第一に、働きながら学べるカリキュラムだったためです。キャリアプランとして、学業のために一度仕事から離れることは考えておらず、平日夜及び週末の受講で履修可能なMBAを大前提に探しました。
第二に、カリキュラム内容がビジネスにおいて実践的であったためです。神戸大学MBAの「プロジェクト方式」は、理論や知識を具体的なビジネスの現場で問題解決するための能力を身に付ける手法として非常に魅力的でした。
第三に、クオリティ・費用・立地のバランスが良かったためです。高い教育品質に加え、国立大学である神戸大学は私立と比較すると学費を大幅に抑えられます。また、私個人としては自宅から40分程度で通学可能であり、これ以上ないコストパフォーマンス・タイムパフォーマンスの良い学校でした。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

本原稿を執筆している神戸大学MBA生活2年目の6月時点では、土曜日午前中は講義を受講し、午後はゼミに参加し、ゼミがないときは大学の図書館にて修士論文に向けた文献調査や執筆を進めています。日曜日は、午前は家族と過ごし、午後は論文執筆のために時間を確保しています。平日は、子供を寝かしつけた後22時頃から24時までを論文執筆時間に充てています。第2子の出産の関係で論文を早めに進めたいという思いもあり、会社の有給休暇を活用し、平日日中も一部執筆時間を確保しています。

入学直後~約1年間(2024年4月下旬まで)は、各授業のレポート課題やプロジェクト研究等の対応で、睡眠時間の少ない日々が続きました。平日夜は、講義受講やプロジェクト研究及びその他グループワークのミーティングがあり、毎週金曜日は翌日のコア科目のレポート課題対応で深夜(朝方)までかかることも多々ありました。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか? また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

私は、経営組織・技術経営をご専門とされ幅広い分野に深い知見をお持ちの、松嶋登教授のゼミに所属しています。カバー範囲が広いため、全14名のゼミ生の修士論文テーマも多岐にわたっています。

松嶋先生のゼミのスタイルは、「まずは書いてみる」です。入学後6か月目(2023年9月)の初回ゼミまでに4ページの短編論文を書きます。翌10月には、研究アプローチ部分を追記し合計8ページに、その3か月後(翌年2024年2月)には2万字のフルペーパーを報告することが求められます。その上で、ゼミ生全員のA、B、C評価がされ、Aをもらえるまで(=副査セッションに進める段階になるまで)、追加指導が行われます。その指導形式は土曜日の対面ゼミに限らず、平日夜オンラインや、コミュニケーションツールのグループトーク等、柔軟な形で、タイムリーに行われます。他の人の発表であっても自分に通ずる部分も多々あるため、基本的には追加セッションにも全員が参加します。各ゼミ生の発表に対し、松嶋先生をはじめ、アカデミックアドバイザーの先生や、TAさんから学術面や論文の型に関するご指導、そして同じゼミ生の仲間から各企業における事例共有等、活発な議論が行われています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

これほど濃密な時間が、今までの人生の中であっただろうか、というのが入学から今までを振り返っての感想です。特にそう思う点を、以下に3つ挙げます。

(1)プロジェクト研究

神戸大学の特徴である「プロジェクト方式」を構成する、ケースプロジェクト研究とテーマプロジェクト研究では、5~7人のチームで各約4か月間研究に取り組みます。ここまでできれば完成、というものはなく、問いへの答えをとことん追求し続ける期間です。毎週土曜日の講義後の対面ミーティングはもちろんのこと、平日夜オンラインでのミーティングは2時間以上にわたり議論が白熱することもしばしばあります。また、中間発表や最終発表前には日曜日終日かけての対面議論を行うなど、皆が最後まで妥協なく取り組みます。当然ながら、これらのチームミーティングに加え、企業への訪問インタビュー等もあるのでそれはもう大変です。あるチームメンバーの「この期間、家族よりも長い時間をチームメンバーと過ごした」という言葉は、多くのメンバーに当てはまったと思います。そして、発表が終わればそれで終了、ではありません。最終発表後も、後日、どうすればもっと良い研究にできたかの振り返りをチームメンバーで行い、その場でも多様な意見が出ます。
これほどまでに、考え抜き、最後まで妥協せずに仲間ととことんやり切るのは、プロジェクト研究ならではの醍醐味です。私にとって、これまでの人生で最も濃密な期間となったことは確かであり、仕事でもぜひ活かしていきたいマインド形成・経験をすることができました。

(2)優秀かつ貪欲な仲間から得られる刺激

神戸大学MBAに集まっている学生は、とにかく優秀な方ばかりです。しかし、驚くべきは、その優秀さに胡坐をかかず更なる高みを目指して貪欲に学ぼうとしている姿勢です。そこから刺激を受け、自分もさらに貪欲に広く深く学ぶことへのモチベーションを得ることができました。このように、学生間で刺激を受けあい切磋琢磨していける環境が、神戸大学MBA生活を充実した日々にしてくれています。

(3)+αの活動

月齢3か月の子を抱えての入学となった私は、学生が育児とのバランスを取りやすいMBA環境を構築できないか、また、育児のためにMBA進学を諦めている人がいるならばその人たちの背中を押すことができないかと考え、「子育てに優しいMBA」に向けた活動を、入学後間もなく始めました(行動のきっかけとなったのは「エフェクチュエーション」という授業でしたが、ここではその説明は割愛します)。その活動に周囲の学生が賛同してくれただけでなく、2023年度MBA教務委員の先生が学内調整を推進され、「子育てに優しいMBA」が現実のものになりつつあります。この関連で、私自身、神戸大学MBA公開セミナーで発表をしたり、本原稿執筆の翌週にエフェクチュエーションの授業で発表の時間をいただくことになったりと、勉学+αの取り組みが、学年を超えた新たな人とのつながりになり、神戸大学MBA生活の充実度を高めてくれています。これも、上記(2)の周囲からの刺激を受けたからこそ取れた行動と思います。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

まずは、MBA進学の目的であった「幅広い視点をバランス良く取り入れ、実務での判断に役立てる」という、知識を実践に落とし込むことをできるビジネスパーソンになりたいです。私の場合は、産休・育休のために、在学中で業務に従事していたのは2024年1月~6月の約半年間のみです。この半年間は理論と実践を反復する貴重な時間と考え、MBAで学んだことを日々の業務や判断に活かすことを特に意識しました。また、職場の理解・協力を得られたことで通い続けられた神戸大学MBAなので、学んだことを隔週で部署内に共有しました。このように自身の業務への当てはめを行うとともに、周囲へのアウトプットをしていく活動は、第2子の育休から復帰した後も意識的に取り組んでいきたいと考えています。

また、神戸大学MBA生活を終えた後も、新たな知識習得を続け、理論と実践の反復を続けたいです。そのことにより、高い視座と実践力を兼ね備え、社会に還元できるようなビジネスパーソンになりたいと考えています。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

切実な「希望」となり恐縮ですが、残された時間を悔いの無いように過ごし、妥協することなく修士論文を書き上げ、無事第2子を出産し、無事皆と一緒に修了したいです。
私の場合は、神戸大学MBA期間と妊娠・出産・子育て期間が重複したため、同級生との夜の懇親は控えめでした。しかし、ここでの出会いを大切に、修了後も末永く交流したいです。

修士論文を書き上げるまでは気を抜けませんが、改めて、充実した神戸大学MBA生活を過ごさせていただけていることに、先生方及び同学年の仲間たちに感謝しております。また、私事ではありますが、家庭・仕事・MBAと三足の草鞋を履くことを支えてくれた主人、両親、上司・同僚に深く感謝しております。この場を借りて、御礼申し上げます。ありがとうございました。

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