七條 歩さん

株式会社エム・システム技研 勤務

1 .プロフィールをお聞かせ下さい。

2018年度入学の七條 歩(しちじょう あゆむ)です。私は、大阪に本社を置く産業用電子機器の製造販売を業とする株式会社エム・システム技研という中堅規模の企業に勤務しています。他の方の「在学生の声」や「合格への道」をご覧になられると、知名度のある大企業勤務の方が多いという印象を持たれるでしょう。約70名の2018年度入学のクラスメートで、社長や後継者という立場の方以外で中小企業に所属している私のような者は珍しい存在です。そのため、この記事の執筆に指名いただいたのだと考えています。

私のキャリアは、2000年に四年制私立大学法学部を卒業して1社を経て現在の会社に2001年に入社しました。入社以来、管理部門で総務、人事、法務、知的財産などの業務を経験し、人事総務部長として部門マネジメントとトップマネジメントの意思や方針を事業活動に反映させてきました。この原稿依頼の直前に様々な機能部門を広く経験して視野を広げるよう会社からご配慮いただき、これまでと畑の違う品質保証部に異動を命ぜられ、現在は品質コントロールと技術・製品知識を勉強中です。

2 .なぜ神戸大学のMBAを選択されましたか?

所属企業では人的リソースが限られる中堅企業であるためか、これまで給与報酬や海外勤務などの人事制度策定、海外子会社の設立、生産・研究拠点の建設、特許権の譲渡交渉、協力会社の事業再生ADR対応、M&A交渉など、若いうちから会社にとって経験や知識がない新しいことを数多く経験させてもらいました。このように経営の意思決定場面に多く関与させてもらいましたが、経営学を体系的に学んだ経験がなくぼんやりとその必要性を感じていました。

課長職を拝命したタイミングで当時の上司の薦めで本学の金井 壽宏教授と平野 光俊教授がコーディネータをされる研究会に参加させていただくことになり、実践と経営学の考え方に触れるきっかけを得ました。この頃にMBA進学を意識しましたが、子供が生まれたことや部長昇任などもあり、日常に埋没して10年以上頭の片隅にある状態になっていました。

本格的にMBA入学を意識したのは、米国上場企業のM&Aプロジェクトで交渉責任者に抜擢された際、対峙した投資銀行や相手の経営者の全員がMBAホルダーでした。論理的思考と分析・解決手法など体系的な共通のフレームに基づき議論・行動する姿を見せつけられたことがきっかけです。

「会社の規模が大きくなって、ビジネスの相手がこんな奴らばかりになったときにうちの会社は大丈夫か?」
「MBAホルダー相手でも対応できる経営の体系的専門知識を実践以外でも身につけとかなあかんわ」
「俺も40歳やん!そろそろモデルチェンジやバージョンアップしとかないと頭打ちになって埋没してしまう」
などと考えMBAで学ぶことを決意しました。

では、なぜ神戸大学かというと、金井先生や平野先生がいらっしゃったこともありましたが、学費と通学の負担が小さいことも大きな要因でした。厳しい筆記・書類審査と面接の存在に受験を躊躇させられそうになりましたが、自費で通学を考えていたため私大の学費負担は厳しく(出身大学のMBA教員からも入学の誘いをいただいていましたが、学費は3倍以上)、自宅が阪神間で六甲台に通いやすく勤務先は大阪で梅田教室にも通えるという条件もあり、神戸大学MBA以外の選択肢はありませんでした。

3 .MBAに在籍されて、今現在の1週間のスケジュールを教えて下さい。

この文章を書いている2019年6月の時点では、講義はなく土曜日のゼミだけになっています。

平日は会社からの帰宅後に修士論文作成に向けた調査や文献読み込みなどを行い、ゼミ発表があるときはその発表準備をおこないます。

そして、土曜日は六甲台に登校し、午前中は自習室や図書館で文献調査や研究内容をまとめるなどしています。午後からは、平野先生とアカデミックアドバイザーの先生方、TAさん、一般院生を含めたゼミメンバー全員でディスカッションをおこない、ゼミ終了後は六甲道周辺でクラスメート達と進まない修士論文の進捗についてお互いを慰め合いながら、ほぼ終電の時間まで懇親しています。

日曜日は、朝は少しゆっくり起き出して、日中は家族と買い物やレジャーなど一緒に過ごし、夜は平日と同様に修士論文作成のための活動に充てています。

入学直後から今年の3月頃までは、大量の課題書籍とレポート、プロジェクト研究、RSTなど毎日がとても充実し、睡眠時間が取れず一日がこれほど短いのかと感じる生活が続いていました。現在は、生活リズムも安定して睡眠時間も増え、入学当初以来続いた気力と体力が限界に近いと感じることは無くなりました。

4.ゼミではどのようなことを学ばれていますか?また、専門職学位論文に向けて現在どのような研究に取り組まれていますか?

人的資源管理がご専門の平野光俊先生のゼミに所属し、主に人と組織に関する領域を学んでいます。所属するメンバーのそれぞれが業界、企業、職務内容が異なるなかで各々の問題意識に基づく修士論文テーマについて研究を進めています。毎週、各自の修士論文作成の進捗について、先行研究や理論を元に「何が課題か」「何を知りたいのか」を発表し、その内容について参加者全員でディスカッションを重ねています。各自の研究に関連して、平野先生はじめアカデミックアドバイザーの先生方、TAさんからの学術理論に基づいたご指摘、研究アプローチ、論文作成の作法など学ぶことが多く、大変有意義な時間を過ごしています。

自身の進捗の遅れ、経営学としての理論やレンズの無さなど厳しいご指導を受けながら、問題意識の深堀とシャープに絞り込むことは、難しいですがやり甲斐があります。既にある研究で立証されていること以外の新たな発見を見いださなければならないため、日常業務で与えられた課題の答えを見いだすことに慣れている社会人にとっては大きな試練です。

私自身の修士論文は、ようやく「経営者交代を経たファミリービジネスにおけるトップマネジメントチームのインクルージョンとコンフリクト解決の関係性」に方向性が決まったという段階です。この文章を書いている現在は、修士論文提出期限が2か月後に迫り、既に時間との闘いとなっています。まだまだ、先行研究の読み込みや事例インタビューも不十分ですが、自身が十分納得ができて経営層に提示できる、新しい発見を見いだせる修士論文を完成させたいと考えています。

5 .神戸大学に入学してから、今までを振り返ってどのような感想をお持ちでしょうか。

大学院生と社会人の二足のわらじは正直大変です。しかし、入学して得られたクラスメート達とのネットワーク、講義から得られる知識、プロジェクト研究でのリターンは、余所では得難い価値があります。

神戸大学MBAには様々なバックボーンを持つ、各分野の優秀な人材が入学してきます。私は入学後の授業開始と同時に、クラスメート達の能力や意欲の高さを目の当たりにしました。初日から「こんな凄い奴らいるんや」と言うのが率直な感想で、自分のことを狭い世界にいた井の中の蛙だと思い知らされました。そんなメンバー達と日常業務と並行して毎週課されるレポート課題に追われて、高い難易度を超える挑戦を繰り返す日々をこなすことは、自身のビジネスパーソンとしてのポテンシャルを高めるトレーニングになり、ほぼ毎週六甲道周辺で開催される夜の情報交換の場ではクラスメートとの連帯感が高まりました。毎週の講義内容やディスカッションを通じて自分にはない知見を得ることができ、それを翌週の実務でも活かす場面に遭遇することも多くありました。

入学以降は印象深い出来事ばかりですが、私にとっては8月から翌年1月まで取り組んだテーマプロジェクト研究がMBA生活の充実を加速させた経験です。自分たちでテーマを見つけて、組織を超えたメンバーと手探りで取り組み、チームの立ち上げ、チーム学習の発展、そしてチーム文化の定着という組織文化の醸成とも言える経験ができました。プロジェクト開始当初に「ツチノコ探し」と言われメンバー全員が奮起し、最終発表では三品先生から「満点以上の点数を付けたい」とコメントをいただけるテーマ・結論にできたのは、多士多才なメンバーの協働によるものです。私にとってテーマプロジェクト研究は、メンバーの1人から発せられた言葉を借りると「大人の力をフル活用して子供のように冒険した季節」でした。半年以上の長い期間で、答えの出ない一つの物事に対してのめり込んだ経験は本当に濃密な時間であり、生涯つきあえるすばらしい仲間を手に入れることができました。このメンバーとは、プロジェクト研究終了後もゼミを超えて修士論文の勉強会をする仲間にもなり大きなリターンを実感しています。

6 .今後のキャリアプランについてお聞かせ下さい。

今の所属企業においてMBAで学んだことを実務に活かせるよう、短期的には各機能部門のビジネスパートナーとしての経験を積む予定です。その後は、自らの得意分野で最大限のパフォーマンスを生みだせるトップマネジメントにとって信頼できるパートナーとして、経営層の一角を担いたいと思います。

経営者の個性に依存するのではない、社員1人ひとりが得意分野や自分らしさを発揮して組織の成果を最大化できるビジネスパーソン、リーダーを育て、彼ら/彼女らにとって働きがいのある組織運営というトップマネジメントのビジョンをパートナーとして実現したいです。

7 .残りの学生生活に関して、どのような希望をお持ちでしょうか。

修士論文の提出期限まで残り2か月となり、修了まで3か月余りとなりました。順調に進んでいるとは言えませんが、まずは目の前の修士論文をしっかりと完成させることに集中したいです。並行して、残る期間でクラスメートとの繋がりをもっと強くできるように、顔を見たメンバーと積極的に六甲道周辺で語り合う夜の時間を大切にしていきたいです。

今から、修了後のことを考えると「神戸大学MBAロス」は確実に起こるでしょう。修了後もクラスメートとお互いに刺激しあえるように、定期的に会える機会を作りたいですね。

現在、MBAにご興味をお持ちの方には、私と同様にすばらしい環境での学びと多くの人たちとの出会いの経験を強くお薦めします。是非、神戸大学MBAの門をたたいてください。

最後に仕事とMBAの二重生活を続けられていることは、家族、上司・同僚、先生方・教務の方々、クラスメートなど数多くの方々のサポートのおかげと本当に感謝しています。この場を借りてお礼申し上げます。

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