鳥居敬 さん

川崎重工業株式会社 勤務 2012年度修了生 國部ゼミ

1. プロフィールをお聞かせ下さい。

2011年度入学の鳥居敬です。私は神戸生まれ、神戸育ちの神戸っ子ですが、高校卒業後は首都圏に住み、2003年に約20年ぶりに転勤で神戸に戻ってきました。会社は1988年に大学(経済学部)を卒業後、川崎重工業に入社し、入社後は営業部門で消防や警察など向けヘリコプターの営業を担当、その後広報部で広告宣伝、報道対応を担当した後、現在は総務部門で総務と管財業務に従事しています。

特に総務部門異動後には、広報経験を活かして神戸海洋博物館内にある企業博物館「カワサキワールド」(http://www.khi.co.jp/kawasakiworld/)の開設業務を担当しました。企業博物館は当社にとって初めてのプロジェクトでしたが、全国の企業博物館を見学してまわり、2005年後半より企画・施工を約半年で進め、2006年5月にオープンしました。当社の歴史に関する知識を深めるとともに、0系新幹線や大型ヘリコプター実機の展示、ものづくりを紹介する映像の編集など、さまざまな業務を同時に遂行しないといけないというこのプロジェクトは、私にとって大きな業務経験となり、今回の神戸大学MBAコースで研究するテーマにもなりました。

2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?

20才代後半の頃、同期や先輩が海外のMBAに挑戦する話を聞くと、いつかは自分も挑戦したいという「MBA」へのあこがれを持っていました。しかし職場や家庭環境など、現実にはそうした機会をつくるというのもなかなか難しい状況でしたが、2003年に東京から神戸に転勤し、たまたま地元企業の方々との交流を通じて、働きながら通学できる神戸大学MBAの存在を知りました。年齢的に難しいのではないかとも感じましたが、40才代後半の今しかチャンスはないかもしれないと思いました。また幼少の頃から神戸大学がある六甲台周辺に住んでいたので、小学生の頃には学内の武道場で剣道を習い、学祭にも遊びに行くなど、神戸大学は数多くの思い出が残る場所です。

そして、六甲台は大阪湾を見渡す景色が素晴らしく、空気も澄んだ修学に適した環境です。さらにそこに、素晴らしい教授がたくさん在籍されていることもわかり、調べれば調べるほど魅力が高まってきました。そこで、他社のMBAの先輩たちに講義内容、雰囲気などを親切丁寧に教えていただき、ぜひ挑戦するよう何度も励まされ、神戸大学MBAに挑戦することを決めました。私にとって神戸大学MBAの選択は、挑戦できる環境がチャンスとなった「天の時」、六甲台の素晴らしいロケーションに通学可能である「地の利」、そしてMBAの先輩から励ましていただいた「人の和」が重なり合って、実現することができたと感じています。

3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?

とにかくMBAコースを最後まで走りきることが目的でした。働きながらの通学で、講義のレベルによっては、途中で棄権することもあるかもしれないと心配していました。入学時のガイダンスで、金井教授が「同級生全員がゴールできるように助け合って走ってください」と言われ、同級生全員で助け合うってどういうこと?と首をかしげました。講義が始まってみると、すぐにその主旨を理解できました。2011年度入学生は、28?56才という幅広い年齢層でしたが、年齢差はもちろん、同級生には文系、理系問わず会社員、医師、弁護士、さらに東京や広島から通学する人など、さまざまな経歴の人が集まっています。そんな多彩な経歴の持ち主が、講義の中で取り上げられる共通のテーマに対して、それぞれの知識や経験から意見を交わし議論するとなると、さまざまな角度からの視点に気づかされるとともに、説得するためには論理的に説明する必要が出てきます。自分の考えていたことの矛盾や再認識などもしばしばあり、深い思考に引き込まれます。

そうやって、仲よく手をつないでゴールするのではなく、お互いが切磋琢磨し、時には言い合って議論し、時には励まし合ってゴールを目指すというのがこのMBAコースの特徴です。同級生のみなさんには、とにかく刺激を受け、そして支え合って目的を達成できたという実感があります。またそうした思考の過程で、自分が持つ視点を広め、これからの会社人生における持論を築いていく基盤ができたと感じています。

4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。

講義は金曜夜と土曜終日ですが、それ以外に講義によっては、グループワークを平日夜や日曜に行わないと課題を済ますことはできません。グループによっては集まれない時もありますので、ネットで会議を行うなどもありますが、実際に顔を突き合わせないと議論がなかなか進まないことも多くあります。仕事内容や時期などによって、両立させることが難しいことも多々ありますが、そこはグループでのチームワークを活かして、乗り越えることが大切です。仕事と学生生活の両立についても、入学時のガイダンスで金井教授が「ワーク・ライフ・スタディ・バランスをうまくとってください」といわれましたが、そのとおり仕事と家庭、学生生活の3つのバランスをどう取るかは、修学期間中の一番難しい課題です。

そのために修学期間中は確実に寝不足になり、いかに空き時間を利用して、課題をこなしていくかという時間の有効活用術も必要になります。とはいえ、眠たくなるのは避けられませんので、そこで割り切りも必要で、寝る時間や課題をこなす時間をどのように配分していくかがポイントです。実は、これこそ経営者を目指す人に必要なスキルという気もします。というのも、経営層に近くなり守備範囲が広くなればなるほど、どうやって時間をうまく使って仕事を進めていくのかということに迫られます。また会社以外での、自己啓発などの時間をつくることも必要になるでしょう。MBAでは、本当に時間のやりくりが大変ですが、一度このような経験をしておくと、何かと工夫してメリハリをつける知恵が身につきますので、こうした経験は後々の生活に大いに生きることと思います。

5. 神戸大学の修学環境についてお聞かせ下さい。

神戸大学には、自分を磨くための環境は整っています。まずその場所は、六甲台という六甲山の麓にある高台にあり、正門あたりは「太平記」にも記されている赤松城跡であったといわれています。阪急六甲からバスや徒歩で坂を登って通学するのは大変ですが、六甲台から見る景色はお天気がよければ東は生駒山から西は淡路島まで大阪湾を一望できる素晴らしさで、特に夜景が有名な神戸の中でも有数のスポットに挙げられる場所です。そして、木々に囲まれマイナスイオンがたっぷり漂う学内の空気とともに、ゆったりと時間が流れている雰囲気の中で、都会の喧騒を忘れてじっくりと議論や研究に没頭することができます。

また、その講師陣は素晴らしく、有名な教授をはじめ各先生方が時間を忘れ熱心に丁寧に指導してくださいます。そして「日本の経営学発祥の地」といわれるだけあり、1932(昭和7)年に建築されたロマネスク様式の神 戸商業大学本館(現経済学・経営学研究科本館、国登録文化財)で歴史の重みを感じながら講義を受講するとともに、 1933(昭和8)年に建築された図書館(現社会科学系図書館、国登録文化財)は、経営学分野では国内でもっとも充実した蔵書数を誇っており、ここでも歴史を感じる厳かな雰囲気があるなど、修学してみなければ経験することのできない素晴らしい研究環境があります。

6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?

神戸大学MBAが独自のプログラムとして導入しているプロジェクト方式は印象的な授業で、これらはMBAで経営学を学びながら、並行して現在の経営上の問題を取り上げ、それらに対する解決策を探るというものです。決められたテーマに対し、グループで研究する「ケースプロジェクト研究」は、テーマに合致する1社をとことん調べ、そこから成功の秘訣を探るというものです。それに対し「テーマプロジェクト研究」は、テーマ、グループメンバーともに自分達で選択できるものの、そのテーマに合致する3社以上を取材し、その成功の共通な示唆を引き出すという研究です。

こうした分析をグループで競い合うのですが、これはメンバー同士のコミュニケーションを図り、そして何度も何度も議論を重ねることで、メンバー全員が納得する結論をいかに引き出せるかが勝負の鍵になります。また、その議論した内容を審査会でグループごとに発表しますが、そのプレゼンテーション能力も問われ、短い時間にいかに聴衆を説得できるかも勝つためのポイントです。各グループ内のメンバーで議論し尽くし、そこで得たものをグループ同士でぶつけあって戦うという、過酷なプロジェクトですが、このプロジェクトでは日頃の業務ではお会いする機会のない他業種の経営者や学者など、いろいろな方にお話を聞くことができます。私たちの研究に耳を傾けてくれるのか?と不安に思いながら取材を申し込むのですが、本当にみなさん快く受けていただき、時間を延長してディスカッションさせていただいた経営者の方もたくさんいらっしゃいました。そして会社を訪問して考え、経営者にお会いして考え、関連資料を調べて考え、参考文献を読んで考え、考えつくして議論を深める、それでもなかなか結論に至らないプロジェクト研究ですが、これが修士論文を書き上げるための研究方法の基礎を短期間で教えてくれる素晴らしい仕組みであることは、論文を書き上げて初めてわかることです。

7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?

神戸大学のカリキュラムは、相当深く考えられた素晴らしいプログラムになっており、経営学の理論のみならず、自分の適正やキャリアなどを含め、各個人がその個性を活かしてどのように会社生活を送っていくのかまで考えさせられるプログラムですので、学生生活を通じての変化は各学生によっても大きく異なると思います。

私は学生生活を20年ぶりに経験しましたが、恥ずかしいことにこれまでの学生時代には経験したことがないほど、まじめに、積極的に講義を受講して考え続けた1年半でした。それは、理論を常に実践と照らし合わせながら考えるということを繰り返し行うもので、振り返ってみれば受講中は、ずっと会社や職場、自分の環境などを考え続けていましたが、それは楽しいことでもありました。そして、そこから従来の自分の意見と照らし合わせ、さらに自分の意見をどう磨いていくのか、これまでで一番深く考えた期間ではないかと思います。またこうした考えを、これほどいろいろな人と議論することを経験したことがありません。それも、実践を踏まえながらの議論ですのでお互い真剣です。

MBAでの学生生活から、やはり日常あたり前と考えていたことに疑問を持ち始めるとともに、コミュニケーションの重要性を学びました。その結果、職場でも疑問に思うことを聞くようになり、いろいろな人に教えてもらうことが多くなるとともに、コミュニケーションを積極的に取るようになりました。そしてそのコミュニケーションでは、コーチングの講義で学習した傾聴を心がけ、なるべく人の話を良く聞こうと考えるようになりました。さらに傾聴から引き出した意見より、リーダーとしての職場での議論の進め方はもちろん、各メンバーの意見交換を促すようになるなど職場の活性化にもつながった気がします。

8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。

受験を考えているということは、MBAに興味があるがどんな内容なのか、自分も行けるだろうか、どこのMBAが良いのか、MBAの雰囲気はどんな感じなのかなど、いろいろと考えていることと思います。そんなあなたには、「一歩踏み出しましょう!」と言いたいと思います。

思い起こせば、私も勉強不足の受験から始まり、不安だらけでの入学で、もしかすると途中で挫折することもあるかもしれないと覚悟していました。しかし不安になることはありません。とにかく、一度挑戦をしてみるべきです。神戸大学以外で受講したことがありませんので、他大学の講義内容と比較できませんが、それは充実した実りの多い授業の連続です。ですので、チャンスがあれば、まずトライしてみることです。そして、もし入学されたら、MBA生活にどっぷりと浸ってください。ご自身の目的とは関係ない講義でも、選り好みをせずにすべて受講することをお勧めします。自分が想像している以上に、どの講義も得るものが多く、講義タイトルやシラバスからではわからなかった思いがけない発見をすることもあります。

でも、これは一歩踏み出して進んでみなければ経験することはできません。ぜひ、一歩を踏み出しま しょう!あなたが想像する以上のものが待ち受けていると思います。