田上加奈子 さん
西日本旅客鉄道株式会社 勤務 2023年度修了生 上林憲雄ゼミ
1. プロフィールをお聞かせ下さい。
関西で生まれ育ち、大学卒業後にJR西日本に入社しました。入社を決めたのは、日本の鉄道は世界に誇れるものだと思ったから。生まれ育った関西で、日本が世界に誇れるものに携わりたいと思ったのがきっかけです。入社後は、駅係員や運転士などの経験を経て、広報、ダイバーシティ推進、社員教育といった業務を経験してきました。神戸大学MBA入学当時は、人事部で教育や社内のダイバーシティ推進といった業務を担当していましたが、入学後、異動があり、現在は公益社団法人関西経済連合会に出向し、関西全域の観光・文化コンテンツを経済活性化に繋げるための仕掛けづくりなどの業務を担当しています。
2. なぜ神戸大学MBAを選択されましたか?
まず、MBAを取得しようと思ったのは、自分と違う価値観を持つ人や、全く異なるフィールドで活躍する人と、対等に話ができる “共通言語”を身に付けたいと感じたからです。
入社から10年が経ち、それまでは勢いだけで仕事をしてきたところが否めないのですが、自分の職位が上がっていくにつれて、このままでいいのだろうかという不安がありました。加えて、「女性活躍」の波があり、何となく自分の力以外で職位が上がっていると感じる中、自分自身が業務で問題認識を持っていることと、その解決策に対して、なかなか社内の説得ができないことがあり、きちんと実力をつけたいと思ったのがきっかけです。
神戸大学を選んだのは、社会人として働きながら通えるカリキュラムになっていたからです。他にも働きながら通えるところは、私が調べただけでもいくつかありましたが、理論をただ学ぶだけでは意味がなく、実践でどうやって使うのかまでを学びたいと思っていて、その力を最もつけられそうなのが神戸大学だと感じました。同じ会社に神戸大学MBA修了生が多く、色々と話を聞くなかで、その気持ちがより強くなったので受験を決意しました。
3. 神戸大学MBAコースでご自身の目的が達成されましたか?
入学時に目的としていたことは達成されたし、それ以上のものを得ることができたと感じています。
目的であった、ビジネスパーソンとして様々な人と議論を交わしたり、自分の考えを説明したりするための“共通言語”を得ることは、経営学を体系的に学べたことで、達成できました。以前よりも議論がスムーズになったり、自分たちの主張を分かってもらうにはどういったアプローチがいいかということを包括的に考えられるようになったり、働くうえでの自分の“戦い方”がランクアップしたと、身をもってその変化を感じています。
また、目的が達成されただけでなく、通っている中で気付けたこともありました。それは一度学んだら終わりではなく継続的に学び続けて自分自身の知識や情報もアップデートしていく必要があるということ、それから、「考え抜くこと」の大切さです。このことは、おそらく神戸大学MBAで実際に学んだからこそ得られた感覚であり、入学前に自分がMBAで得られるだろうなと予想していたよりも、多くのものを得ることができました。
4. 在学中のお仕事と学生生活の両立についてお聞かせ下さい。
正直、ペースを掴むまではとてもしんどかったです。金曜日はオンライン、土曜日は対面の授業でしたが、通いだした当時は、土曜日のレポート提出に向けて、金曜日はほぼ徹夜のような状態でした。
私の場合、数カ月経ってようやく少しペースを掴み始めたころで、今度は仕事で異動があり、正直その頃は大変過ぎて、どうやってこなしていたか、あまり記憶がないです…。慣れない仕事から帰り、レポートに加え、プロジェクトの打ち合わせや個人作業と、日々追われていました。あの頃は、とりあえず休日も含めて1日5時間程度は机に向かっていました。
時間のかけ方は個人差があると思いますし、私はあまり要領が良いタイプではないので慣れるまで時間もかかってしまいましたが、入学して数ヶ月は、皆さんそれぞれペースを掴むのに苦労していたと思います。レポートの参考になる資料の情報交換をしたり、試してみた時間の過ごし方(朝早く起きて課題をやるようにしてみたとか)を共有したり、本当に同級生の仲間がいたから乗り越えられたなと思います。
研究や勉強は、自分との戦いだと思っていましたが、一緒に頑張る仲間がいることがどれだけ力になるか、そのことに気付くこともできました。土曜日の授業の後に、同級生と飲みに行くのが癒しの時間で、それを楽しみに1週間頑張っていました。
自分なりのペースを掴んでからは、金曜日にほぼ徹夜がなくなったと言いたいところですが、私の場合はあまり変わりませんでした。それでも、そのギリギリで集中する感じとか、自分自身にとってどう取り組むのが1番良いかということが掴めて、「よし!提出まであと●時間もある!」と、楽しみながらできた気がします。ただ、体調を崩すなど予期せぬ出来事も起こるので、もう一度やるなら今度は早めに終わらせることを心がけたいです(笑)。
5. 神戸大学MBAコースのカリキュラムはいかがでしたか?神戸大学MBAを受講してよかったと思うことはどのようなことでしょうか。
入学前は正直、プロジェクト研究も面白そうだけど、それよりも体系立った経営学の理論を、働きながら学べることが魅力だと思っていました。コア科目などの講義や授業内でのディスカッションを通じて学ぶことが多くあり、かつ平日の仕事の中で学んだことをすぐ実践できるので、そこは予想通り良かったです。
だけど、それ以上に「プロジェクト研究」や「ゼミ」が、私には特に良かったと感じています。それは、そもそもの問題意識の本質について考える機会が多く得られたからです。
なぜそれが問題なのか。なぜ解決できないのか。だとすると、本当に問うべき問いはそれなのか。プロジェクト研究やゼミにおいては、何度も聞かれることですが、はじめは正直何を言われているのかよく分からず…。立場が違うプロジェクトのメンバーや、ゼミの仲間、先生方とのやり取りの中で、徐々に、自分たちが見ていたのは表面的な課題であったこと、そこに潜む根源的な問題にまで掘り下げて検討することで、初めて見えてくるものがあることに気が付くことができました。理論を実践で使えるかの真髄はまさにそこにあると感じる出来事で、何よりも大きな経験だったと思います。
6. 在学中、特に印象的な授業・イベント・出来事などはありましたか?
沢山あるのですが、1つ挙げるとすれば修士論文です。大学時代に卒業論文を書かずに卒業したので、そもそもこんなに長い文章を書ききれるのだろうかと、物凄く不安でした。
修士論文の執筆にあたって、私は自分が持っている問題認識のその根源的な問題、つまり「問い」にたどり着くまで、すごく時間がかかりました。一度決まったように見えても、またなんだかモヤモヤして、ふりだしに戻り、そういったことを何度も繰り返して、掘り下げる時間が長く続きました。正直苦しい時間も長かったです。
だけど、ゼミのメンバーが何度も壁打ちをしてくれて、先生方にも最後まで熱いご指導をいただき、そしてゼミ以外のメンバーにも助けてもらいながら、なんとか書き上げることができました。また、執筆にあたっては自社の総合職社員にアンケートとインタビューを実施しましたが、本当に多くの方が協力してくれました。
これほど1つの問題認識に深く向き合ったのは恐らく人生で初めてで、そして一人では絶対に書き上げられなかった論文なので、その一連の経験は私の一生の財産です。
さらに、私の書いた論文に興味を持ってくれた自社の人から、関連するワークショップに呼ばれることもあり、小さなうねりは起こせたのではないかとも思っています。
7. 神戸大学での学生生活を通じてご自身の変化などはありましたか?
まず時間の使い方が格段に上手くなったと感じます。限られた時間で最大限のアウトプットを出すための取捨選択や順位の付け方など、仕事と学生生活を両立させるなかで自然に身に付いたのだと思います。記憶がない時期もありますが(笑)、全て無駄じゃなく力になっているなと感じています。
あとは、自分の仕事への考え方、見方、戦い方にも変化がありました。先の質問でも書きましたが、経営学という“共通言語”を得たことで議論がスムーズに進められるようになったことだけでなく、相手への伝え方も変わりました。勝負所の見極めというか、ただ真正面から飛び込むのではなく、戦略を練るようになりました。それは、問題の本質を追求する力が身に付き、それを伝える力も少し身に付いたからだと思います。
8. これから受験を考えているみなさんへのアドバイスをお願いします。
もし入学を迷っている方がいたら、是非受験することを心からお勧めします。
私は学生時代、別に勉強ができたタイプではないので、「私なんかがMBAなんて…」という気持ちがずっとありました。また、ここの修了生から、「神戸大学MBAは凄くハードだ」と聞いていたので、自分にできるわけがないとも思っていました。だけど最後は、とりあえず受験してみよう、受けなきゃ何も変わらないと思い、最終日に受験願を提出しました。今はその選択をした自分を褒めたいです。ここでの経験は、噂通りものすごくハードでしたが、確実に私のプラスになっています。
あとは、この1年半は死ぬ気で勉強するくらいの覚悟を決めることも重要だと思います。まず面接では、ここへ来て何がしたいのかを問われます。上手く言葉にしきれなくても、その覚悟は伝わるのではないかと思いました。入学後は、確かに課題だけでもハードですが、結局どれだけ深く向き合うかは、その人自身に委ねられている場でもあります。修了時の満足感・達成感は、自分次第であるとも思います。
最後に、言葉にするとありきたりになってしまうのですが、ここでの出会いはかけがえのないものになると思います。合格が決まった時、修了生から、「ここでの出会いは本当に財産だから」と言われたのですが、友達を作りに行くわけじゃないしな…と正直思っていました。だけど、今ではその言葉の意味がよく分かりますし、その方がそう言いたくなった気持ちも分かります。それくらい、私にとってかけがえのない場所でした。
いつか、これを読んでいただいた皆さんとも、修了生としてお会いできれば嬉しいです。