2026年度ポスターセッション MBA生のコメント
ポスターセッションについて 河守 俊夫さん(所属ゼミ:鈴木 竜太ゼミ)
Q1:MBA論文報告会(ポスターセッション)を終えてのご感想をお聞かせください。

ちょうど1年前、M1として初めてポスターセッションに参加した際、当時M2の先輩方がご自身の研究について、笑顔でとても楽しそうに語っておられたことが強く印象に残っています。研究内容の詳細以上に、「1年後には自分もこのように研究を語れるのだろうか」と感じたことを覚えています。また、聴き手に回った先輩方が、発表者の研究に対して、互いの健闘を称え合うかのような敬意のこもったまなざしを向けておられたことも印象的でした。
実際に発表する側になってみると、その理由が少し分かったように思います。それぞれの研究には、その方が実務家としてこれまで向き合ってきた問いが表れていました。「その人ならではの研究」、あるいは「顔がある研究」とでもいうのでしょうか。実際にお話を聞いてみると、やはりその方らしさがよく表れているなと思いつつ、それまで知らなかった考えや一面に触れることもあり、とても興味深く感じました。
一方で、自分自身については、自分が手掛けた介護や疾病と働き方にまつわる研究テーマに関心を持ってくださる方がいるのだろうか、という不安がありました。ところが実際にお話ししてみると、「面白い研究だ」と言っていただいたり、70歳近くまで働くのが当たり前になろうとしているなか、重要なテーマではないかという反応をいただいたりしました。このように、自分では想定していなかった受け止め方があったことも印象に残りました。また、発表している間は、インタビューにご協力くださった皆さまの顔が何度も浮かびました。働き方や生き方そのものから多くを学ばせていただいた研究でもあり、あらためて感謝の気持ちでいっぱいになりました。
いざ始まってみると、90分という持ち時間はあっという間でした。聞いてくださる方との自然な対話の中で話が広がっていき、ポスターの前で何度かお話しするうちに、後半になるほど自分の研究を自然に説明できるようになったように思います。今回の発表を通じて、研究は自分の中だけで完結させるのではなく、人の目に触れ、問い返されることで新たな意味が見えてくるものなのだと感じました。
Q2:論文の執筆やポスターの準備にあたり、難しかった点をお聞かせください。
難しかったことは大きく三つあります。
一つ目は、自分自身の経験から生まれた問題意識を、研究上の問いとして形にしていくことでした。私は入学直前に予期しない事情が生じ、1年間の休学を選択しました。その経験は自分自身の働き方にも影響し、結果として、入学試験時に提出した研究計画書とは大きく異なるテーマに取り組むことになりました。また、自分自身が研究対象とする現象の渦中にいる当事者でもあったため、個人的な経験から生まれた問題意識を研究上の問いとして扱ってよいのか迷いもありました。そうした中で、指導教員の鈴木竜太先生から、研究として掘り下げる価値があると早い段階から背中を押していただいたことは、大きな支えになりました。
さらに、「問い」の大きさにも苦労しました。ゼミでは「両手に乗る問い」を考えることが大切だと教わりましたが、12月の報告で最初に持ち込んだ問いについては、鈴木先生から「これは両手どころか小指に乗せる感じだなあ」とご指摘をいただきました。一般には、大きな問題意識を研究可能な大きさまで絞り込むことに悩むことが多いと思いますが、私の場合は逆でした。自分自身の経験に密着した具体的な問いを、他の人にも通じる研究上の問いへどう引き上げるかが課題でした。
二つ目は、研究が論文の章立てどおり一直線には進まなかったことです。調査、分析、考察、結論、執筆と順番に進むように見えても、実際には執筆を進める中で、それまでの議論や分析との辻褄が合わない点に気づき、問いや分析、解釈にまで立ち戻ることが何度もありました。研究は蛇行し、行ったり来たりを繰り返しながら進むものだと実感しました。ゼミで教わった「考えて、分析して、また考える」という研究の進め方や、当初の見立てと異なる結果にも向き合う姿勢を、実際の経験を通じて理解したように思います。
また、分析においては、インタビューにご協力いただいた方々の経験を時間の流れの中で丁寧に追い、事例を何度も読み直しながら比較しました。分析が進まないように感じる時期もありましたが、振り返ると、その迷いも含めて、自分の研究に合う見方を探す過程だったのだと思います。
三つ目は、ポスターセッションの準備そのものでした。研究内容をA0サイズのポスター1枚にまとめるにあたり、すべての情報を盛り込むことはできないため、何に焦点を当て、何を口頭で補うのかを考える必要がありました。加えて、ポスターセッション当日は仕事の都合で朝に新幹線で大学へ向かう予定だったうえ、週間天気予報では台風の影響による大雨の可能性があり、出席そのものが難しくなることも考えられました。そこで、万一自分が大学に到着できなくてもポスターだけは会場に届くよう、早めに大学への直送を手配しました。そのため、完成版を初めて目にしたのは、報告直前にポスターを掲示したときでした。最後は「その場でお話ししながら補えばよい」と、ある程度割り切って準備することになりましたが、結果的には、そのくらいの余白があった方が対話しやすかったように思います。
振り返ると、入学時の問いが大きく変わったことも、研究が予定どおり一直線に進まなかったことも、今回の研究を形づくる過程の一部だったように思います。個人的な経験から生まれた問題意識を、他の人にも通じる研究上の問いへと形にしていくプロセス自体が、MBAで研究に取り組んだ大きな学びとなりました。また、ここまで進めることができたのは、先生方、インタビューにご協力くださった皆さま、そしてともに学んだ仲間の支えがあったからだと思います。あらためて、心より感謝申しあげます。