2016年度テーマプロジェクト発表会 金賞インタビュー

2017年1月7日(土)、神戸大学社会科学系アカデミア館504教室で行われたテーマプロジェクト発表会において、激戦の末、見事優勝を勝ち取られたチームにインタビューを行いました。

金賞

メンバー:大原一将、中野信一、野々村一志、森聡、山田大人
(※五十音順、敬称略)

Q1. 準備にはどれくらいかかりましたか?

(大原) 私たちのチームは8月初旬にメンバーが確定し、8月中旬に初めて打ち合わせをしました。そして1月の初旬が発表でした。4ヶ月間の戦いでした。打合せは土曜日の講義の後、時には平日の仕事の後にも打ち合わせをしました。私たちは、焦らずよく考えるという共通認識で活動しました。打合せを重ねるうちに私たちは共通して「ユーザーイノベーション」に興味があることが分かってきました。なかでもインターネットによって顧客と企業の関係が変わってきているところに注目しました。その中で、メンバーの職場の課題を一般化し、リサーチクエスチョン・仮説を設定しました。リサーチクエスチョンも最後の発表まで何度も考え直しました。私たちは、合計4社についてインタビューを行いました。1社目のインタビューが10月初旬でした。4つ目が12月下旬で発表の15日程前でギリギリでした。その4つのケースについてよく考え議論しました。他のチームに比べると出だしが遅く、ケースの数も少ない、大器晩成型省エネチーム(準備が後手後手に回ったのでギリギリでした)だったと思います。

(中野) 8月頃からチームメンバに声を掛けてチーム編成を行いました。異業種、異業務のメンバの集まりで、特定の目的を持たない中でスタートでした。プロジェクトが始まると、まずはメンバ各自が思い思いにテーマのアイデアを出してフリーディスカッション。議論を重ねる中で、ぼんやりしたテーマがだんだんと骨格で出来上がっていきました。しかし、中間報告では手厳しい指摘を受け、そこから更に4社ほど企業インタビューを行い、テーマへの肉付けを行なって行きました。

(野々村) ケースプロジェクトが終わった直後の8月上旬にチームを結成しましたが、実際にはそれ以前から、テーマプロジェクトに向けたチームビルディングが始まっていました。チームが決まってから、すぐにテーマの選定に取り掛かりましたが、決定するまでにはかなり時間を要しました。メンバーの業種がバラエティ豊かでしたから、なおさら全員の課題認識を一致させるのに苦労しました。ユーザーイノベーションという方向性を共有してからも、具体的な切り口とか、対象企業など、ずいぶん迷いました。テーマを発表した際に先生から厳しいご指摘もいただき、そこからも試行錯誤を繰り返しました。結局、最終発表の朝まで5ヶ月間みっちりかかって準備することになりました。

(森) 最初のテーマ決めの段階では様々な案が出ましたが、レジュメにも記入されているように「職務上直面する課題、或いは、問題意識を教室に持ち寄って」という観点から、発表者を務めた野々村さんの職務上の課題意識からスタートして、徐々に研究の方向性を絞り込んでいきました。多少の紆余曲折はありましたが、他のチームや過去の話を聞いていると、比較的順調に研究が進んだように感じます。

(山田) 8月後半から1月7日の報告会までの4ヶ月強。この間は、メンバーで集まって話す時間以外にも、出勤途中や「睡眠学習」を含め、頭のどこかで何かを考え続けていたように思います。
「心の準備」という意味では、実は入学前から始まっていたとも言えます。神戸大MBAで3プロジェクトの一角という位置づけであり、中でもこのテーマプロジェクトは、修論研究を本格化させる前段の共同プロジェクトとして一大イベントだからです。入学前には漠然たるワクワク感と不安がありました。それが入学後にテーマプロジェクトを取り組み、研究の難しさと面白さがわかってくると、次なる試練であるテーマプロジェクトに対する興味は更に深まっていきました。そうして8月の段階で「優勝するぞ」という気持ちをメンバーみんなで共有し、「暫定チャンピオン」というチーム名をつけたことが、多忙な毎日の中でも皆が頑張れた原動力になったのではないかと感じています。

Q2. 入学から振り返って、実際のMBAの授業はいかがですか?

(大原) とてもハードです。レポート(課題)の多さにびっくりしました。レポートに追われ睡眠不足なのですが、授業では不思議と眠くならないほど緊張感があります。授業中もその他でも様々な職種・分野の同級生にかなりの刺激を受けています。これまでの人生の中で貴重な時間を過ごしていると実感しています。

(中野) 多彩な先生方からさまざまな分野の授業が、嵐のように襲いかかってきた感じです。
すぐには消化するのは困難ですが、今後物事を考える上で、「そう言えばあの時習ったな」というような思い出しができ、会得して行くのではと感じています。

(野々村) 仕事をしながら学べるというところが神戸大学MBAの魅力の一つですが、実際に仕事との両立を実現することは、思っていたほど容易くありませんでした。複数の授業の事前・事後課題レポートや、中間発表などプロジェクトの節目などが重なる時は、もうアップアップです。睡眠時間を割くことはもちろん、出張の際の移動時間など寸暇を惜しんでレポートや教科書、参考文献と格闘しました。
1年経過した今は、入学当初とは違って授業にも慣れ、だんだん自分のペースができてきたように思います。授業での学びとプロジェクト活動で、思考を行き来させ高めていくというプロセスが身についてきていると感じています。取り組んでみてはじめて、MBAのプログラムがよく考えられていることに気付かされました。これからの自分にとって、苦労するだけの値打ちが十分にあると思っています。

(森) 盛りだくさんの内容で、正直どこまで消化できているか不安がないわけではないですが、授業内容はもちろん、同級性との議論からも大いに刺激を受けています。特に神大MBAの特色であるプロジェクト研究は、バックグラウンドの異なるメンバーが集まって、知恵を出し合いながら切磋琢磨できる大変有意義なプログラムだと感じています。われわれのチームは、業種や立場もバラバラで、非常にダイバーシティに富んだチーム構成になりましたが、そうした構成であるからこその気づきも多かったと思います。

(山田) 素晴らしいです。平均年齢40歳弱の70数名が、職場ではそれぞれの課題を持ちながら、教室では「学生」として共に学び議論する場として、よく設計されています。授業のバリエーションは他大学に比べ少ないのですが、洗練された授業が集中配置されているため、迷うことなく授業に専念できる環境であるといえます。そしてなんといっても、プロジェクト研究の設計が秀逸です。ケースプロジェクトからテーマプロジェクト、そして修論研究へと途絶えることなく続いていきます。プロジェクト研究は自ら考え、それをメンバーと議論し、軌道修正する作業を繰り返し続けなければいけません。結果として、夢の中でもプロジェクトに取り組んでいたりするわけですが。こうしたグループワークはMBAならではの醍醐味であり、確実に自らを成長させてくれていると感じます。

 

Q3. 発表会の準備で大変だったことは何ですか?優勝の感想と併せてお答え下さい。

(大原) どうしてもインタビューしたい企業に行けるわけではないので、インタビューさせてもらえた企業のケースを如何に社会科学的に面白く発表するかが重要になります。インタビューしたケースでは不足する点もあるのですが、聞き手にスーッと入ってくるように考えるのが大変でした。それを考えるのが長けたメンバーが多かったのは勝因だと思います。また、考えるあまり資料作成の時間が取れない、いや、その時間を取らないスタンスのメンバーで構成されていたこともあり、中間発表、最終発表ともに発表資料作りに苦労しました。プレゼン資料だけで判断されると金賞どころか下位だったと思います。それをカバーできるストーリーとプレゼンテーションカがあったのだと思います。正直なところ、興味深い内容のチームも多かったので、優勝できるとは思っていませんでした。ともに戦えたメンバーに感謝です。

(中野) 今年度は、正月休み明けの授業で発表会が開催されたので、資料時づくりのため、メンバが集まる時間確保が難しかったです。最後は、突貫工事のように報告まとめを行なった。が、その結果として、金賞を受賞することができ、大変嬉しいです。

(野々村) 20分間のプレゼンテーションで、自分たちが取り組んできたことの全てを物語ることが一番大変でした。先生方をはじめ審査員の皆様や聴いていただく方々に、自分たちがどこに興味をもち、どのように思考し、どのように結論づけたのかをわかりやすく、印象深くお届けすることに腐心しました。その方法が“ケースに語らせる”ことなんだと後になって気づきました。
どうすれば松尾先生がおっしゃる“ケースに語らせる”ことになるのか、その意味はどういうことなのかが、当初からずっとメンバーの頭の中にありました。ともすると、ケースから離れて一般論を語ってしまったり、自分たちが語りすぎたり、まとめてしまったり、いろんなものを詰め込み過ぎたりしました。このあたりの匙加減がとても大変でした。
中間発表はまずまずの4位で通過しましたが、他チームのテーマが圧倒的に面白かったので、巻き返すのはとても難しいなぁという印象でした。そこから最終発表会まであきらめずにメンバーとしつこく議論を重ね、精一杯取り組んだ結果、幸運にも金賞の栄誉にあずかることができました。振り返ると、やはり最後まで“ケースに語らせる”ことを念頭において取り組んだことが、今回の結果につながったのではないかと思っています。

(森) 発表のストーリーラインは野々村さんが中心になって作成を担当してくれましたので、あとのメンバーはそのラインに沿って、パワポの肉付けをしていきました。もともとのラインがしっかりしていたので、それほど肉付けにも苦労はしませんでしたが、それでも発表前日は徹夜に近い状態になりました。余談ですが、発表当日は審査員用のペーパーを定刻までに持参しなければならないのですが、当日朝にコンビニで印刷しようとしたところ上手くいかず、他のメンバーの自宅プリンターもまさかのインク切れと、ペーパーが時間までに提出できずに失格、という前代未聞の事態が頭をよぎりました。結果的に、朝からやっている三宮のキンコーズに駆け込んで印刷し、定刻までに提出して事なきを得ましたが、当日朝まで推敲を重ねるチームは、その後の印刷プロセスまで確認しておいた方がいいですね(笑)。
優勝の感想ですが、発表の際の会場の反応から、入賞できるのではないかとの感触はありましたが、まさか金賞に選ばれるとは思ってはいなかったというのが正直なところです。中間報告の段階から絶対的な本命視されていたチームが銀賞と発表があった際には、ひょっとしたら、とは思いましたが、金賞の発表を聴いたときには「まさか」との思いが強かったです。チーム名の「暫定チャンピオン」は、最初は冗談めかした名前でしたが、“暫定”が外れて、とても晴れがましい気持ちです。

(山田) 「自分たちは何を知りたいのか?」そのことを業界も関心も異なる5人のメンバーで議論しながら言語化していく作業が大変でした。そして、このプロセスを大事にしたことこそが金賞を頂いた成功要因だったと考えています。
我々は「企業と顧客の境界」の問題に取り組んだのですが、それぞれが持っている漠然とした問題意識を話しながら、黒板に絵をかきながら少しずつ見えてきたのが、このテーマでした。議論をしていると大発見があるのですが、調べてみると、先行研究がすでにあることを知り、自らの無知に落ち込みました。しかし、さらに自分たちの興味を深堀すると、まだ研究が進んでいない分野を発見。そうするなかで次第に自分たちが本当に知りたいことは何なのか、分かってきました。
それと、もうひとつ大切なことは、如何に聴衆をひきつけるか? その伝え方を丁寧に考えること。フレーミングとストーリーの大切さを、二つのプロジェクトを通じて学びました。これはどんなプレゼンテーションにも通じる、とても大切なことだと思います。
ダイバーシティにこだわり集まった5人で、議論を重ねた結果頂いた金賞。本当に嬉しかったです。でも、本当に感謝しないといけないのは、インタビューでお話を聞かせてくださった皆様であり、そうした企業と出会えたのは本当に運がよかったのだと思います。

Q4. 今後の抱負をお聞かせ下さい。

(大原) 苦しく楽しい2つのプロジェクトが終了しました。これからはその2つのプロジェクトやその他の授業で学んだことを参考に修士論文に向けて頑張りたいと思います。
神戸大MBAの授業や同級生から学んだこととこれから学ぶことを如何に活かし、会社を通して社会に貢献することに取り組みたいと思っています。また、これまでの縁を大切にし、さらに学び続けることで貴重な時間を増やしていきたいと思います。

(中野) 残り数ヶ月、修士論文を作成するという最大のプロジェクトが待ち構えています。なんとか乗り切って、みんなとともにゴールに到達したいと思います。

(野々村) これで神戸大学MBAの大きなプロジェクトを二つ終えたわけですが、テーマとケース両プロジェクトにおいて本当にたくさんのことを学びました。自分たちが取り組んだことで直接得られるものはもちろんですが、他のチームの取り組みには、自分たちにはない視点やアプローチのものもたくさんあり、とても勉強になりました。これからは、修士論文を中心にしっかりと取り組み、ここまでで学んだことを実践しながら、さらに磨き、深め、本当の自分のものにしていきたいと思います。それを自分の業務の中でもしっかりと発揮していきたいと思います。