2011年度テーマプロジェクト発表会 金賞チームインタビュー

2012年1月7日(土)、神戸大学本館332教室で行われたテーマプロジェクト発表会において、激戦の末、見事優勝を勝ち取られたチームにインタビューを行いました。

金賞

メンバー:築部卓郎、西垣幸、廣地克典、細谷昌礼、真砂和英、都良太郎、保田快
(※五十音順、敬称略)

Q1. 準備にはどれくらいかかりましたか?

(築部) チームメンバー決定から5ヶ月、テーマ決定から4ヶ月、最初のインタビューからは3ヵ月半、中間発表の反省から2ヶ月、インタビューのための東北遠征から3週間で本番の発表会でした。

(西垣) 8月のチーム結成後、比較的早い段階でテーマが決定した後はすぐに準備に取り掛かり、4カ月半の間、平日・休日、昼・夜、場所を問わず、ほぼ毎日準備を行いました。メンバーの多くが実際に阪神・淡路大震災を経験していることもあり、「天災等の不可抗力にも立ち向かうためには何が重要なのか」「実際に困難に直面している東北の経営者の方々へ、神戸からエールを送りたい」という熱い気持ちが、最後までチームの原動力となっていたように思います。

(廣地) 準備には約5ヶ月かかりました。2011年8月:テーマ、リサーチクエスチョン、インタビュー先などの方向性について、チームで議論を戦わせました。9月:加護野先生、金井先生へのインタビュー、先行研究レビューでテーマ等の方向性が決まりました。10月-11月:神戸企業へのインタビューにより、阪神大震災から得られた企業が復興・成長するために必要な3つのキーポイントを得ました。12月:東北企業に訪問し、神戸企業から得たキーポイントを伝達し、また現在の復興の状況をお聞きしました。年末年始:年末年始の休みを返上して、年末も年始もチームで集まり、結論を導くために激しくディスカッションをして発表会に向けた追い込みをしました。

(細谷) 8月のチーム結成から翌年1月の発表会直前までメンバー全員で活動を行いました。テーマプロジェクト研究では3社以上へのインタビューが課されていますが、我々のチームは神戸で5社、東北で5社、それと3名の研究者をメンバーが分担して訪問しました。プロジェクトマネジメントの手法に精通しているメンバーが中心となって、早いうちからおよそのスケジュールを作成し、各々に割り振られたタスクの進捗管理をして、FacebookとDropbox、Skypeを活用して共有・議論を行って効率化を図りました。しかし最も生産的であったのは、みなで集合してFace to faceでの打ち合わせをしている時であったと思います。土曜日はゼミの日を除いてほぼ毎回授業のあとに集合して打合せをもち、それ以外にも頻回にメンバーの勤務先に集合しました。特にクリスマスと年末年始には休日を利用して集中して綿密な打ち合わせを行いました。

(真砂) テーマプロジェクトが始まった9月以降、基本的には毎週土曜日の授業後集まって何らかの打ち合わせをしていたように思います。また、それ以外に平日もFacebook上にテーマプロジェクト用のグループを作成し、そこで深夜までチャットでディスカッションを行なっていました。特に私は勤務地が東京ということもあり、平日にY社で行われるミーティングには直接参加できなかったのですが、Skypeで極力参加するようにして進捗に遅れないように気を付けていました。

(都) テーマプロジェクトが始動した9月から最終発表日間際まで、チームメンバーとは、当該期間に開講されていた授業でも同じチームで作業に取組んでいたこともあり、出張が入ったり、仕事等で取組み具合に濃淡はありつつも、週に数回はFacebook上でやり取りしたり、集まったり、何かしらコネクションは取っていたように思います。
集合場所(親しみを込めて、我々は“アヂト”と呼んでいました)は梅田にあるY社会議室でしたが、夜半に日参するためか、同社警備員の方に覚えられ、気軽に(?)出入りできるようになったことが印象に残っています。因みに、この建物については1月で建替えとなってしまいましたが、古い建物がこの上なく好きな自分にとっては、非常に良い思い出になっています。(関係ない話で済みません)

(保田) 8月上旬のケースプロジェクトの発表会の後から始まり、約4か月半の研究でした。テーマプロジェクトでは、研究テーマの選定から始まりますが、我々は、まずここでしっかりと議論を重ね、メンバー全員の合意形成を行いました。実際に研究が大きく前進したのは、やはり神戸と東北の経営者の皆様にインタビューを行った10~12月であったと認識しています。また年末には、兵庫県立大学政策科学研究所にも訪問し、加藤所長より、震災復興に関する研究アプローチの面で、大きな示唆を頂きました。それらの豊富な資料・データを基に、年末年始で議論を重ね、なんとかシナリオを組み立てることができましたが、これは何といっても、調査やインタビューに快くご協力くださった皆様のおかげであったと、感謝の思いで一杯です。

Q2. 入学から4ヶ月を振り返って、実際のMBAの授業はいかがですか?

(築部) 想定を超える素晴らしさにつきます。私は51歳で、先生方と同世代のことが多く、授業に対する印象も若い同級生たちとは少し違うと思います。でも皆と共通していると思いますのは、4月にあった三品教授の授業のインパクトですね。バックグラウンドや年齢などが全く違う70数名の同級生を圧倒し魅了させる先生の知識と授業のスキルに感動いたしました。お陰でその後の神戸大学のMBA生活がわくわくするものとなりました。5月からも楽しい講義が続きましたが、どの授業もよく準備がなされていて、先生方の気合のようなものも感じ、たいへんありがたく思っています。日常の仕事の合間をみつけて授業での課題、レポート、必読図書をカバーするのはたいへんですが、先生方の熱意と同級生のお陰で何とかこなせています。

(西垣) 想像以上に楽しく、充実しています。一流の教授陣による熱心な講義展開を通じて、クラスは熱気に満ちており、またインタラクティブな講義やチームプロジェクトが多いことから、様々な分野で活躍している同級生から生の声をリアルタイムで聴くこともでき、これらはこの社会人MBAプログラムの醍醐味の一つではないかと感じています。
とはいえ、時間的にも体力的にもタフです。家族や同級生、上司や同僚等、周囲の方々から温かいご理解とサポートをいただきながら、家事、育児、仕事、MBAをバランス良く両立させる方法を模索しているうちに、自然と優先順位の付け方や効率的な時間の使い方が身に付いたように思います。この環境と日々サポートしてくださる周りの方々に、改めて感謝しております。

(廣地) とにかくハードで入学から走り続けている感覚でしたが、不思議と辛さは感じていません。その秘密は、各授業で実施されるグループワークだと思います。様々な授業のグループワークで同級生と刺激をし合って、助け合いながらプロジェクトを進める経験を積めることは、楽しいですし、実践的で仕事にも大いに役立っており有意義です。
経営学の体系的な知識を座学で学び、それをグループワークで演習するという、素晴らしい組み合わせにより、実践的な知識とスキルを養えているように思います。

(細谷) 勉強をさせられる量と質が半端でないことは多くの方が書かれているとおりと思います。また、常に複数の授業で別々のグループワークが、次から次へと同時に進行するようにカリキュラムが設計されており、個人の考えや作業をどのように統合してグループのアウトカムを出すかを、常に考えて実行し続けることを経験してきました。業務が多忙でドロップ・アウトしたい誘惑に駆られたことも幾度かありましたが、グループワークではメンバーに迷惑をかけられないため何とか踏みとどまることができるという絶妙な仕組みになっていると感じます。猛烈なパワーと明晰な頭脳を合わせもち、互いに助け合い、励まし合う素晴らしい同級生達は尊敬の対象であり人生の宝物です。

(真砂) 非常に勉強になります。実は入学前はプロジェクトベースのカリキュラムよりも、他大学のような座学中心の方がタメになるのではないかと思っていたのですが、ケース、テーマと2つのプロジェクトを終えた今は、自分たちで議論して学ぶプロジェクトベースのカリキュラムが本当に身につく知識と経験を与えてくれたと大変感謝しております。一人では到底作り上げることができなかったものが、チームの力を結集すれば出来るのだと学ぶことができました。
講義に関しては品質の差が大きいと感じています。素晴らしい授業がある一方で、納得できない内容の授業もあり、こらから入学される方のためにも授業のアンケート結果を踏まえて改善して欲しいと思います。

(都) 「刺激的」の一言です。学生は皆、経験と見識、実力を兼ね備えた、一定のキャリアを有す社会人学生であり、講師から学生への一方通行ではなく、講師と学生の双方向のやり取りで授業が展開されることが多々あります。授業はまさに教授陣と学生陣のコラボレーションの様相を呈しており、非常に充実した時間を味わえることができます。世代やバックグラウンドが異なる者同士が、何かのテーマに対して熱く語り合う、という機会は本当に貴重で有意義、と改めて思い至る次第です。

(保田) 働きながら学ぶという時間的制約の中では、書籍・文献による学習もさることながら、その時にしかできないインタラクティブな学習経験が、極めて重要な価値を持つと私は考えます。その意味では、授業で先生とのやり取りを通して学ぶ理論や概念に加え、クラスメイトとのワークの中で加わる異なる視点やものの考え方、第一線の経営者の方々に触れて感じる経営の現実等々、まさに目から鱗が落ちる経験の連続でした。企業人としての今後の人生において、大いに活用していきたいと考えています。

Q3. 発表会の準備で大変だったことは何ですか?優勝の感想と併せてお答え下さい。

(築部) テーマプロジェクト研究はメンバー構成もテーマの選定も私たちに任されているのですから、結果に関しては言い訳ができない厳しさがあります。その点でメンバーにたいへん恵まれました。チームメンバーの総意として、「神戸大学MBAにふさわしい骨太のテーマで金賞を取る」でしたので、阪神淡路大震災の経験をふまえて東日本大震災からの企業再生となりました。中間発表が4位だったことで、チームで反省し一丸となってフレームワークの見直し、東北企業へのインタビューなど行いましたがスケジュール調整がたいへんではありました。熱い思いを込めて作りこみましたので、優勝は素直にうれしいですね。また、神戸新聞の記事にもなり、わずかですが社会貢献になるのではと考えています。ただ、発表会での金賞だけでは被災企業のお役に立てるとはいえませんので、ディスカッションペーパー等に仕上げて行きたいと考えております。

(西垣) インタビュー先へのアクセスに関しては、チームメンバーのみならず、他チームの同級生からもサポートをいただきました。ご多忙中、快くインタビューに応じて下さった経営者の皆様、またご協力頂いた同級生の方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。
準備を振り返ると、一番の転機は11月の中間発表の後だったように思います。「このままではいけない」「最後まで骨太の研究を行う」というメンバー全員の危機感と熱い想いの下、新たに気持ちを一つにし、その後は以前にも増して、お互いの意見を尊重しながらも納得できるまで議論を行う日々が続きました。中でも、数多くのインタビューで伺うことができた貴重なお話を、如何にまとめ、限られた時間内で発表するか、という部分で最も苦労したように思います。最終発表まで残された時間は僅かでしたが、各メンバーが持つ強みを活かしつつ素晴らしいチームワークを発揮できたことが、結果的に優勝に繋がったのではと感じています。優勝が発表されたときは本当に嬉しく、メンバー全員から思わず喜びの声が上がりました。

(廣地) 最後のまとめが大変でした。チームメンバーと徹底的にやり抜くことを決めて、それを実現させたのは本当に苦労しました。途中ある程度完成できた段階で終えるという誘惑もありましたが、チームメンバーと士気を高めあい、とことん考え抜くことをしましたし、終了間際に追加で識者の先生にインタビューを敢行したりしました。その最後の粘りの中で、自分たちが本当に伝えたいことが見えてきて、それを形に表すことができたように思います。
つい自分で引いてしまいがちな限界線を超えたような、このテーマプロジェクトでの経験は、優勝とともに得られた大事なものだと思いました。

(細谷) 東日本大震災で人命が失われる等の甚大な被害を受けて、復旧・復興の最中にある企業を訪問して果たして役に立つことができるのか、かえって迷惑になるのではないかという点で、メンバーそれぞれに葛藤があったと思います。しかし、中間発表で自分たちの研究が不十分であることに気付かされ、自分達に何ができるのか、何をしなければならないのかをメンバーが自問自答し、話し合い、研究のための研究に終わらせてはいけないとの決意をもったことが大きな転機となったと思います。大変な中あるいは多忙な中にも関わらず、快くインタビューに応じて下さった方々に感謝をするのと同時に、被災した企業が復旧・復興を果たす際に、今回の研究成果が少しでも参考になることを願います。

(真砂) 今回の準備で最も大変だったことは、日本は地震大国であるにもかかわらず震災からの復興という先行研究がほとんどなかった点です。他チームのように先行研究を土台にすることができなかったため、阪神大震災から復興に役立つ要素を抽出するのに多くの経営者の話をお聞きする必要がありました。それを東日本大震災で困っている経営者の方々にお伝えするのが12月3週目と、発表まで2週間あるかないかというギリギリのペースで、最悪間に合わないのではないかとヒヤヒヤしておりました。
優勝の感想ですが、結果は審査員によって変わりますので単に運が良かっただけと思っています。実際中間発表では4位とぱっとしませんでした。特に先行研究がほとんど無い点が他チームに比べて弱かったと思います。

(都) 中間発表で芳しくない評価であったことが、その後の取組を大きく変えたように思います。特に皆の意識面が大きく変わったように感じました。
地震国である日本においてすら、自然災害に関して、経営学的に考察したものがそれ程蓄積されておらず、どのようなモデルで解析するとより分かり易く伝える事ができるのか、どのように結論付けるか、といった構成に大変苦心しました。しかし、最後にアクセスした訪問先で、その悩みを解消するきっかけを得る事で、課題の打開に大きく寄与しました。東北訪問時も同じ思いを抱きましたが、直接会って人と会話する事がいかに重要か痛感した次第です。(インタビュー先とのアクセスについては、MBA同期で最も忙しいと言われている築部さんに負う所が大きかったです。ありがとうございました。)
なお、MBAに入ってから大小様々な失策を重ねていますが、個人的には12月に実施した東北訪問時の失態(詳細は勘弁下さい)が、この中でも最大の失策の一つとして記憶に刻まれています。

(保田) 阪神大震災の時に、実際に現場をリードした方が、引退等により減りつつあること、東日本で被災された企業へのアクセスなど、いくつか物理的に難しいことはありました。しかし、全体の研究を通してみると、むしろ、この分野における先行理論や概念が少なく、各事例の位置付けを理論的フレームワークの中で捉え難いという点に、ギリギリまで悩まされました。実際、他のチームの発表では、精力的なフィールドワークに加え、理論面でも深く多面的に研究されているものがたくさんありました。我々の研究が優勝できたのは、たまたま審査員の先生方の考え方や価値観に響きやすい内容であっただけのことであり、どのチームが優勝してもおかしくない内容だったと思っています。

Q4. 今後の抱負をお聞かせ下さい。

(築部) 私は年間約200例の心臓外科手術をしている勤務医です。MBAにこようと思った動機は、日本の医療の行く末に不安を感じるからです。90年代にはボストンで心臓外科医をしていたのですが、その経験から日本の医療がアメリカのような医療になってはまずいのではと思っており、神戸大学MBAで学んだことを基礎に「医療の質と経営効率は両立できるのか」について研究して行きたいと考えております。

(西垣) 現在はプロジェクト研究を卒業し、個々人が持つ問題意識のもと、ゼミで教授やTAの方々のご指導を仰ぎながら修士論文作成に取り組んでいます。今後も仲間と励まし合い、助け合いながら修士論文を完成させると共に、MBAでの学びを実務及びキャリアに活かしていきたいと思っています。

(廣地) このテーマプロジェクトでメンバーから学んだ、とことん考え抜き、やり抜いた経験を、今後自分自身の修士論文作成において、研究テーマをとことん追求していくことに活かしたいと思います。また、実務にも活用していきたいと思います。
大学生活も徐々に残り少なくなってきましたが、残りの期間、先生方や同級生の方々から、引き続きたくさん学ばせていただき、実りある大学生活を送りたいと考えております。

(細谷) 私は現在、医療機器を輸入販売する企業で仕事をしています。医療の領域では、“企業が一端を担うことができる社会貢献“が多くある一方で、しかしまだまだ不十分であると強く感じています。社会へ貢献することがより一層の企業成長につながる、そういった仕組みを備えた組織を構築することに貢献したいと考えています。そのために必要な知識とスキルを知り、ネットワークを広げていきたいと思います。

(真砂) 修士論文を会社に提出して会社(特に研究所)の組織体制を良くするための提案を行いたいと考えていますので、まずは修士論文をしっかりと書き上げることが当面の課題と考えています。
そして神戸大学で学んだ数多くの経験や知識を社会にしっかりと還元できるように、普段の業務から意識して取り組んでいきたいと思います。会社が正しく発展し、その利益を社会に還元すれば社会は健全に発展できると思います。そのために今後力を尽くしていきたいと思います。

(都) 差し迫ってきた修士論文とどう立ち向かうか、これが目下の課題です。
そして、残された「大学で学ぶ」という有難く、貴重な機会を、いかに有意義に使うかが、意識している点の一つです。同時に、これまで学んだことを業務で活かすよう、そしてその取組みの延長の先が、関西や日本経済回復のきっかけとして機能するよう、初心を忘れずに、改めて気を入れ直して真摯に取組んで参りたいと思います。
最後に、このチームで活動できたことを、メンバーの方に改めて御礼申し上げる次第です。
そして、インタビュー先の企業の皆様、先生の皆様方、教務の廣瀬さん、貴重なご示唆やご支援を戴き、本当にありがとうございました。

(保田) これからの半年で取り組む修士論文では、個人の問題意識に基づくテーマについて、自ら研究を進めることになります。限られた時間の中ですが、テーマプロジェクトで培った進め方をベースに、中身の濃い事例研究を行い、価値ある研究成果を残したいと考えています。また、卒業の後も、自ら学び、高め続ける姿勢を堅持し、世界の社会の発展に貢献できる人物を目指して参りたいと考えています。

 

優勝チームの皆様、ご協力ありがとうございました。そして、おめでとうございました!