2010年度加護野論文賞 最終審査結果

◇第三回加護野忠男論文賞選考結果について◇

 
受賞論文
金賞
 光森進氏
 
『知識創造要因のマネジメントに関する実証研究
  -研究プロジェクトにおける役割機能の分担と「場」の構築-』
(PDF1.49MB)
 
銀賞
 池田隆博氏
 
『リーダーシップのストーリーテリング(語り部)機能に関する研究』
 

銅賞

 高村健一氏
 
『食品製造業の競争優位に関する実証研究 ?国際優良企業の事例分析に基づいて?』
 
 *要約は2011年7月発行の『ビジネス・インサイト』に掲載される予定です。

 

■講評

三つの最優秀論文をこれから発表しますが、審査委員会では、意見が分かれました。正直なところ、三つの論文とも素晴らしいのですが、三つとも欠点があるというのが実際の議論で、どれが金賞になってもよかった、逆に言うとどれが銅賞になってもよかったという論文です。
このように評価が分かれるということは良い論文の証拠なのです。皆が良いという論文にろくな論文はありません。本当に良い本はベストセラーにはなりません。私の本が売れないのはそのためです。意見が分かれるのが社会科学や経営学の場合は当然かもしれないと思いますので、皆さんの論文はそれだけ素晴らしかったということですが、審査の講評ですので、私の方から一言ずつ、これから入ってこられる皆さん方の参考になるようなコメントをしたいと思います。

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第2番目の論文は、池田氏の「リーダーシップのストーリーテリング(語り部)機能に関する研究」です。最近『ストーリーとしての競争戦略』という本を学者が書いて注目を集めていますが、その本よりは良いことが書いてあります。素晴らしい修士論文です。目のつけどころが大変面白く、実際の調査にどれほどのエネルギーをかけられたかということもよくわかります。経営者はどんなストーリーを語るかということを経営者との長時間のインタビューを通じて収集し、そのストーリーはどういう意味でインパクトを持つのかを分析された素晴らしい論文です。
ただ、言葉は上手に使わなければいけません。経営者が「語り部」だったら困るのですよね。語り部とは、語ることを商売にしていらっしゃる方です。経営者は語るという手段しか持っていませんが、語ることだけが仕事ではなく、それ以外にもあるということを考えれば、「語り部」という言葉を「story teller」の日本語訳として使うのは適切ではなかったのではないかという感じがします。ここをもうちょっと考えていただきたかったというのが第1点です。
もうひとつの不満は、この分野について面白いことを言っている日本の学者が随分たくさんいます。それから、今までのMBAの論文の中でも、このことについて書かれた論文がいくつかあると思います。皆さんには、ぜひ先輩たちの修士論文をよく読んでほしいという感じがします。今までの論文でどこまでがわかっていて、どこがわかっていないのかを調べていく、学者の論文をしっかりと読んで本を勉強するということも大事なのですが、皆さんたちの先輩の方が、学者よりもよほど物事を深く考えています。ですから、皆さんたちの先輩の論文をきっちり読んでいくということです。
大学の図書館というのは本当に知識の宝庫なのです。皆さんたちの先輩が実務をもとにしながら深く考えた修士論文が毎年蓄積されていっています。出光佐三氏は、この大学が生んだ最大の企業家だと思うのですが、出光氏は、この大学で論文を書かれました。若松港(現・北九州港)で実際に調査をし、若松港における石炭取引についての卒業論文です。この論文の最後で、出光氏は、石炭の時代は終わったということで、石油に注目されているのです。それをそのまま実際に事業として作り出されていったのが出光氏のすごさだと思います。皆さんも修士論文で、新しい時代を見据えてそれを基にしながら実践していっていただくという、この大学のもうひとつのモデルを新たに作っていっていただきたいと思います。

(文責:加護野忠男)

 

■審査委員

株式会社東洋経済新報社 出版局シニアエディター 大貫英範氏
シャープ株式会社 相談役 辻晴雄氏  (五十音順)
神戸大学大学院経営学研究科 加護野忠男
神戸大学大学院経営学研究科スタッフ

 

 

◆授賞式の様子

        

 

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