2018年度加護野論文賞 最終審査結果

第11回加護野忠男論文賞選考結果について

2018年度加護野忠男論文賞の最終選考会と表彰式は、2019年3月23日に神戸大学にて開催されました。

今回の選考については、神戸大学名誉教授であり、現在株式会社碩学舎代表取締役の石井淳蔵氏、同じく神戸大学名誉教授であり、国士舘大学の中野常男教授、バンドー化学株式会社代表取締役社長の吉井満隆氏、加護野忠男教授(現 神戸大学特命教授)を交えて、和やかな雰囲気のもと審議が進みました。本年度の選考委員には、学術界、産業界、出版界の3つの領域から、オリジナリティの高い活動で日本をリードしておられる方々に参加いただいています。

最終選考では、候補の3つの論文を順位付けし、金賞、銀賞、銅賞の受賞論文を決定します。本年度の3論文については、重要な経営的イシューを取り上げているとともに、研究論文としてもしっかりしているという評価がありました。ただいずれの論文もこの2つの点について一長一短があり、甲乙つけがたいことから、本年度は金賞と銀賞2つということになりました。

議論を通じて、改めて「経営の現場で起こっている課題(実際の経営にインパクトのあるイシュー)を六甲台で(経営学の知識と手法を用いて)解決する」という神戸大学MBA論文の姿勢の重要さが指摘されました。重要な経営イシューとその解決策を研究論文という形で結実させることは非常に高度なことではありますが、だからこそ学生も教員もやりがいを求めることができるのではないか、という気持ちにもさせられました。これからも質の高い神戸独自のMBA論文が数多く生まれることを期待したいと思います。

文責:2018年度MBA教務委員 鈴木 竜太

受賞論文
  • 金賞:舟本 恵氏(松尾博文ゼミ)
    『都市型駅ビルが主導するアパレル・エコシステムの変革:デパ地下風ファッションフロアの創作』
  • 銀賞:小川 博英氏(上林憲雄ゼミ)
    『組織適応プロセスを踏まえた人事戦略のあり方』
  • 銀賞:南 裕二氏( 原拓志ゼミ)
    『医薬品開発におけるアウトソーシングのリスク発生メカニズムの究明』
審査委員

甲南大学特別客員教授 加護野忠男氏
株式会社碩学舎 代表取締役 石井淳蔵氏
国士舘大学教授 中野常男氏
バンドー化学株式会社 代表取締役社長 吉井満隆氏
神戸大学大学院経営学研究科スタッフ

審査委員長(加護野忠男教授)からの講評

神戸大学のビジネススクールは、MBA教育に独自の考え方を持って設立し、設立当初から修士論文が必要であるという意思のもと継続してきました。今日の審査委員会では、(推薦のあった)3本の論文のうち、どれが金賞、銀賞、銅賞に値するか議論しました。

舟本さんの論文「都市型駅ビルが主導するアパレル・エコシステムの変革:デパ地下風ファッションフロアの創作」は、審査委員の中でほぼコンセンサスがあって、金賞に決まりました。この論文がMBAの修士論文として面白いと思ったのは、この方が会社に提案するプロジェクトのためにいろいろ調査したものが修士論文の中身になっているという点です。しかも、その中にアカデミックな研究の成果も取り入れられているということで評価されました。提案されているコンテンツは非常に面白いものの、会社を説得するにはさらに議論を展開する必要があるのではという意見もありました。

銀賞の、南さんの「医薬品開発におけるアウトソーシングのリスク発生メカニズムの究明」論文では、今はCROというのですか、臨床検査を請け負う専門の会社がありますが、そこのアウトソーシングを会社としてどううまく使うかという話が議論されています。

アウトソーシングする会社の能力についての議論が多い状況で、本論文では会社側がこういう組織を使うための対外的管理システムを社内にうまく持っていることの重要性を指摘したことが審査委員会で評価されました。

同じくもう一つの銀賞になった小川さんの「組織適応プロセスを踏まえた人事戦略のあり方」という論文は、極めてきっちりとした論文で、アカデミックな世界での論文としても、かなり認められるのではないかと思いました。修士論文では、できるだけテーマは身近なところから選ぶけれども、それについての論じ方というのは、会社の中で説得可能なような形で論じるだけではなくて、アカデミックにも成り立つような議論をしてほしい。小川さんの議論は、アカデミックにも十分成り立つ素晴らしい議論の組み立てであるということが評価されて銀賞になりました。

三つとも素晴らしい論文で、逆に言えば甲乙付けがたく、論文のそれぞれが優れていて、どれを金賞にしても不思議はないというふうにわれわれは感じました。

この大学は創立以来、論文を大切にするということをしてきまして、創立直後、調査の神戸高商といわれた。学生に調査させて、それを論文にまとめてもらうと。こうやってまとめた論文が今、歴史家の間で非常に重宝されています。当時の日本の現状を知るには、神戸大学に来て、当時の卒業論文を見てみるのがベストだというふうに、多くの人々、歴史家は見ています。

皆さんも自分自身の修士論文をベースにしながら、それを基に会社の新しい事業の展開、戦略の展開ができるように、修士論文をもっと作っていっていただければと思います。

文責:南 知惠子

 
受賞おめでとうございます!