2017年度入学生の研究状況(担当:三矢 裕)

「現代経営学演習」

担当:三矢 裕

目的、テーマ

私自身の専門は管理会計です。それに対して、ゼミメンバーが選んだ研究テーマは新興国メーカーの投資意思決定スピード,中小企業のロボット戦略,知財ネゴシエーション,海外進出の意思決定,経営理念の浸透,地域創生のための民間資金活用,事業承継と組織変革など,まったくバラバラなものです。しかし,共通するのは,各人あるいは彼らが所属する企業にとっては,逃げることの出来ない重要な課題であるという点です。

ゼミの目的は,そのような課題に対して,問う価値のあるクエスチョンを設定すること、適切な方法でロジカルに分析してアンサーを導出すること,それをもとに大義ある提言を含んだ論文を作成することです。逆に言えば,どれほどアカデミックな意義があっても,実務にインパクトの無い,いわゆる研究のための研究になるような論文を書くのはやめようと,ゼミ生には伝えています。
指導教員としてはもちろん加護野賞などを誰かに取ってもらいたいとも思うのですが,それ以上に全員が1.5年で修了して,終わって一緒に美味い酒を飲むことを目指しています。

ゼミの雰囲気

実は,このゼミは男性のみ15名,そして平均年齢は約40歳で,他のゼミよりは高めだと思います。一言で言えばオッサンゼミです。

所属企業も多岐にわたり,職種もバラバラ,経営者や会計士もいますが,全員がビジネス社会で揉まれ,ユニークな経験をしてきています。上記のとおり,ゼミの研究テーマはバラバラですが,オッサンたちはお互いの研究に対して,遠慮すること無く,的確な意見を自由に言い合っています。時には,私に代わって叱責してくれることもあり,助かります。

ゼミ中に,発表者は自分の発表をしっかりやること,他の人の質問などに答えることに集中します。その代りに,発表者のために,ゼミ中のやり取りについて,メモを取ります。事後レポートではそのやり取りの記録だけでなく,自分なりのコメントやアドバイスを加えて,発表者にフィードバックします。一人一人がこれをちゃんとやれれば,発表者は自分の研究に対して,指導教員やアシスタントに加えて14人からの多様な意見をもらえることになります。事後レポートを作るのはそれなりに大変ですが,そのメリットはもらう側になるとわかります。

リサーチプロポーザルは毎回のゼミのタイミングでアップデートされ,スラックというビジネスチャットで共有されます。他のメンバーの進行具合がガラス張りで否応なく見えてきますので,ゼミの中で緊張感が高まります。遅れている人,迷っている人には相当なストレスかとも思います。それでも,あえてこれをやるのは,一人も脱落せずに,みんなでフィニッシュするためです。ゼミ内で互いに競い合うことも必要と考えています。

ゼミが終わった後はだいたい六甲の居酒屋で飲みます。また,12月には姫路,5月には京都でゼミ合宿を行いました。ぶっ通しの議論の後で,みんなで宴会やって,風呂に入ります。その後はどこかの部屋に集まって,ワイワイいろんな話をしました。同じ目標に向かう同士として,オッサンたちの結束が高まってきていると感じます。

現在までの進捗状況

研究方法は,その研究目的を果たすのに適切と判断されれば,何を選択しても構いません。インタビューを使った定性的方法が多く,それ以外では,サーベイに取り組んでいる人や,自社を対象としてアクションリサーチをしている人もいます。

研究はテンプレートでやるものではないのですが,論文の形式や研究の型なんかでモヤモヤしてもらいたくはありません。ですので,デフォルトの研究フレームワークとして,「①研究関心→②リサーチクエスチョン→③研究方法→④データ→⑤アンサー→⑥含意・残された課題」というものを共有しています。これら6つの箱がちゃんと埋まっているか,それらが適切につながっているかを確認できます。研究の型の検討を簡便化した分,フィールドでユニークな調査をすること,ロジックや論文の意義を深く,多面的に考えることに時間を使ってもらいたいと考えています。

この原稿を書いている6月下旬では,多くの人がデータを集め終わっていますので,これからは論文の最終形をイメージして設計図を描き,それに基づいて論文執筆に入ってもらいます。

なお,このゼミでは,松山大学の佐久間先生、大学院生(D3)の早川さんが,私の不得意なテーマや研究手法を中心にゼミ生の研究を手厚くサポートをしてくれています。彼らの献身的な働きにはなんとお礼を言っていいのか,感謝の言葉もありません。

残り2ヶ月,三矢ゼミの15名のオッサン全員が,MBA生活の集大成として,また支えてくれている家族や会社の仲間に見せても恥ずかしくない大義ある論文作れるよう,全力で研究に取り組むだろうと確信しています。