2023年度入学生の研究状況(担当: 松嶋 登)
「現代経営学演習」
担当: 松嶋 登
目的、テーマ
ゼミでは、経営組織論を理論的基礎にして、イノベーション、科学技術社会論、組織変革論、社会的課題の解決など、普段の業務で扱うには少し大きなテーマに対して、少し背伸びして挑んでもらっています。この背伸びのために必要となるのが、経営学の理論であって、テーマを研ぎ澄ましていくことで、それぞれのコアになる理論に辿り着きます。みなさんの関心や進捗に合わせて、オンラインの学会や講演会に参加していただいたり、一般大学院生向けの特論科目を受講していただくなど、多様な学びを取り入れています。
ゼミの雰囲気
私は、ゼミは楽しんだもの勝ち、だと思っています。最初から最後まで滞りなく研究が進む人は滅多にいません。しかし、煮詰まったときに相談できるのがゼミであり、指導教員の私も一緒になって考えていきます。その過程を楽しんでいる人の報告はとても盛り上がりますし、ゼミ全体としてお互いの研究に心底興味を持って議論する雰囲気作りがとても大事になります。そのために、今年度のゼミ生は、初回に夜景がよく見える六甲台キャンパスの前庭で、焚き火を囲む会を行いました。みんなで学内の枯れ枝を拾い、薪の長さに切断し、巨大鍋でパエリアを作りました。学生同士は授業を通じて既知の仲ですが、普段の授業とは別の顔があることを知ることができました。過去には、学術会議で修士論文を報告するために沖縄で集まったこともあります。今年は、夏の追い込み時期に、OBの方にも参加していただいて大合宿を組みたいと思います。六甲川のせせらぎで涼みながらの野外ディスカッションや、有名先生の講演などもアレンジする予定です。
現在までの進捗状況
ゼミは、M1後期から始まりますが、「とにかく書く」ことによって、自分自身の思考を整理していきます。悩んでいるときは、実は考えているつもりで考えてないことが多いからです。また、書きながら学術論文のスタイルを学ぶことも重要です。問題意識を明確化した論理的な章立ての組み方から始まり、学術的な引用文献の書き方などについても、実際に手を動かしながら、徹底的に指導していきます。
具体的なスケジュールとしては、問題意識を定めるために学会報告要旨のテンプレートに基づいた4ページ(第2回)を、次には研究方法論とリサーチサイトの記述を付け加えた8ページ(第3回)の短編論文を仕上げて報告します。ビジュアル的にごまかしが効かない論文形式を重視しますので、ゼミ報告もスライド資料は不要です。そして、M1が終わる頃には、一般的な学術論文の紙幅である2万字の学術論文を、参考文献まで含んで通してきっちり仕上げてみます。必ずしも仕上げられる進捗になくとも、仕上げられないことが自覚できることが大事です。そして、その2万字ものの学術論文をもって、M2のゴールデンウィーク後に始まる副査の先生方にコメントをいただきに行くことになります。
副査セッションは、時に厳しいコメントになりますが、どんなコメントでも鵜呑みにせず、自分自身に何が足りていないのかを咀嚼することが肝心であり、そのことを考えるためのゼミとして「副査コメント・セッション」を行います。その場では、副査以上に厳しいコメントになることもありますし、逆に副査の先生の指摘を批判することもあります。このような議論を通じて感じてほしいことは、どんな意見があろうが、最後は自分自身の意見を考え抜くことの大切さです。こうした芯の通った研究を進められている研究(少なくともその段階では)は卓越論文候補者に選抜され、目下、集中的な議論を行っております。