eureka EXPRESS【2019年度07月02日号】

MBA教育の実際

◇令和2年度専門職大学院現代経営学演習担当者のご紹介

令和2年度専門職大学院現代経営学演習担当者が決定しました。各担当教員から、現在関心のある研究、MBA生に期待すること、現代経営学演習の進め方について紹介致します。 

忽那憲治 教授

(1) 現在関心のある研究
アントレプレナーシップ、イノベーション、アントレプレナーファイナンスの3つが私の主な研究対象領域です。具体的には、スタートアップやファミリービジネスの事業創造や企業家精神、破壊的イノベーションへの挑戦、地方創生のための事業創造への取り組み、それらを支える上で重要な役割を果たすシード・アクセラレーター、ベンチャーキャピタル、IPOやM&Aなどのファイナンスに関心があります。

(2) MBA生に期待すること
理論と実践を相互に行き来しながら、自身の掲げる研究課題に果敢にチャレンジし、アントレプレナーシップ(企業家精神)を持って何事にも取り組み、社会的・経済的な価値の創出、日本経済の活性化や地方創生のためのイノベーションの創出に貢献する人材になってもらいたいと思います。

(3) 現代経営学演習の進め方
なぜ自分はその研究課題に取り組みたいのか、という問いに向き合うことをまず重視します。その課題に自身が取り組まないことは許されないと思えるぐらいの研究課題なのかを問いかけます。次に、そのテーマは学術研究としてどのような視点からどのような分析が行われ、何が明らかになり、何が明らかになっていないかを考えてもらいます。さらに実践面や現状分析としては、データの収集や分析を通じて、解決すべき重要な課題がどこにあるのかを明らかにしてもらいます。こうした一連のプロセスは、各人による分析が基本ですが、ゼミ生全体で共有し議論しながら高いレベルの成果を目指していきます。

原田勉 教授

(1) 現在関心のある研究
イノベーション全般に関心があります。現在、特に注力しているのは、イノベーションの発生論理について、認知心理学・脳神経科学的アプローチによって明らかにすることです。具体的には、個人・集団での意思決定をQ学習の枠組みで分析し、それが創造性にどのように影響しているのか、脳のどの部位が関連しているのかを特定することに関心をもっています。それ以外には、最近、OODAループに関する書籍を翻訳しましたが、そのOODAループを組織内でどのように回していくべきかについてヒアリングなどを行っています。

(2) MBA生に期待すること
新しい知の発見、創造を行うことが本プログラムの目的です。そのためには、一人の力では不十分で、ゼミ生同士の切磋琢磨が必要です。自分の研究だけでなく、他のゼミ生の研究にも関心をもって可能なかぎりアドバイスし合うことが大事だと思っています。そのためには信頼関係が大事です。場合によっては各ゼミ生の「ここだけの話」を交えることになりますし、それがゼミの醍醐味です。しかし、「ここだけの話」ができるのは、それを守ってもらえるという信頼関係があればこそです。こうした協調的信頼関係を築いていけることを期待しています。

(3) 現代経営学演習の進め方
毎回発表を原則とします。リサーチクエスチョン、研究の方法、仮説、分析、インプリケーションなどについて簡単に報告してもらい、それをもとにゼミ生全員で議論していくかたちをとります。

松尾貴巳 教授

(1) 現在関心のある研究
業績管理などの「仕組み」が、組織や個人の意識やパフォーマンスにどのように影響しているかについて、とくに、財務的業績測定の困難な組織をいかに合理的にコントロールできるかという点に焦点を当て、次のような課題に取り組んでいます。

  • 医療組織、研究機関などの高度専門職組織の業績管理、コントロール
  • 行政サービスの業績評価
  • 行政組織のアウトソーシング・マネジメント

専門職組織の業績管理では、医師や研究者などの専門職人材の特徴を理解することが重要であることから、専門職人材のモチベーションやコミットメントの特徴など「ひと」の特性にも焦点を当てて研究をしています。また、行政サービスの研究は、財政学や公会計制度などにも関わっており、学際的なアプローチで研究しています。

(2) MBA生に期待すること
MBAの授業で修得した経営管理に関わる様々な知識を統合し、ひとや組織を効果的に動かすための経営管理デザインを設計できる能力を高めてほしいと思います。そのためには、ものの見方や考え方の道具箱を持つことも重要ですので、理論の勉強にも積極的に取り組むことを期待しています。

(3) 現代経営学演習の進め方
1年次後期の前半は、論文を書くための基礎を養います。理論、研究アプローチの学習を並行して行い、学術論文を批判的に検討できるようにします。後半は、研究計画書の作成です。各自の研究関心や問題意識を「研究」に仕立てていきます。この作業は一人で行うのではなく、皆で力を合わせて各自の研究計画をより良いものにしていきます。2年次は研究計画にしたがって、調査・研究、論文執筆をします。途中で何度か報告を行い、批判的検討を受けながら論文を仕上げていきます。

三品和広 教授

(1) 現在関心のある研究

『経営戦略の実戦』シリーズ第1巻と第3巻を出したので、いまは第2巻の執筆に専念していますが、それが終わったあとは経営戦略の標準教科書を書き換えにいくつもりです。経営戦略以外では、経営者論、オペレーションズマネジメント、日米経営史、リベラルアーツなどに関心を抱いています。

(2) MBA生に期待すること
自社で経営戦略を左右する階層に食い込むこと、いまは財布を開いても買えないモノやサービスを買えるようにすること、雇用を創出すること、たくさん税金を納めること。

(3) 現代経営学演習の進め方
私のゼミでは、原則として修士論文を自社経営陣に読んでもらう建議書と位置付けて、この読み手に高く評価されることを唯一無二のゴールとします。所属企業の発展、ひいては皆さんのキャリアの前進に貢献しないものは、書くに値しないと割り切ります。 M1のあいだは経営戦略の実戦(立案と遂行)に関する共通理解を構築しにいきます。 M2に入ったら個別指導に切り替えて、自社経営陣に対する建議書の要点を固め、説得材料を集め、予想される反論に対して強力な反論を用意し、熱の伝わる文章にまとめていくプロセスを、側面からアシストしていきます。

森村文一 准教授

(1) 現在関心のある研究

主に、サービスデザイン、サービスマネジメント、情報技術、消費者意思決定について研究をしています。具体的には、消費者側・企業側それぞれの視点で、以下の疑問についての実証研究に取り組んでいます。

  • 情報技術を核としたサービス(技術仲介サービス)について、消費者の態度と採用行動が一致しないのはなぜか?また、企業と消費者双方の資源制約がますます強まり、多くの技術仲介サービスが失敗に終わっている日本において、frugal innovationというイノベーションデザインは、サービス開発と普及の成功に貢献するか?
  • サービス提供企業の情報技術導入は、どのようなサービスの構成要素の標準化/個別化を促し、競争優位の獲得に貢献するのか?
  • 日本的なサプライチェーン上流企業との長期的関係志向は、小売企業の小売効率性の追求・革新的アイディアの発見を阻害する場合があるが、それはなぜか?マルチチャネル(オムニチャネル)化を進める小売企業に対して、店舗小売が競争優位を獲得し生き残るためにはどのような戦略や組織が必要か?

(2) MBA生に期待すること

神戸大学MBAの魅力は、皆さんが抱える課題を理論的に捉え、より本質的なレベルの問いに落とし込んでいくことにあります。現代経営学演習では、専門職学位論文を作成するために、まずは幅広いエリア・年代の理論に触れながら、ディスカッションを通して自分の問いを探し求めます。そして、その問いを解くためにはどのようなデータが必要になるかを考え、自らデータを収集・分析し、課題を解決することを目指します。問いを解決することやデータを集めることは簡単ではなく、多くの場合で、演習に参加する全員の異なる知識や経験が必要になります。ディスカッションには積極的かつ誠実に参加し、得られた気づきを積極的にシェアするようにしてほしいです。

(3) 現代経営学演習の進め方
皆さんが取り組みたい研究テーマについて発表してもらい、ディスカッションを通して以下の点を段階的に達成していきます。そして、企業の持続的成長に関する意思決定をサポートできるような、例えば“シンプルだが意味のある問いと実務的提案”を提供する修士論文の作成を目指します。

  1. 関心がある現象と理論を結びつけて考える
    まずはマーケティング、サービス・マーケティング、消費者行動、経営戦略などの代表的理論を幅広く学習しながら、皆さんの課題がどの研究エリアから深掘りできるかを探ります。その後、皆さん個々人の課題に関連する先行研究を読み、課題の背後には“本質的にどのような問いがあるのか?”を探し求めます。
  2. 問いの精緻化
    皆さんの課題を「どのような概念間関係(概念モデル)で説明できるか」、「課題を理論的に掘り下げても、理論では説明しきれないこと/まだ残っている疑問/調べなければならないことは何か」、という点から掘り下げていきます。
  3. 方法論の決定、データ分析・解釈、修士論文の作成
    皆さんの問いに合わせて、定性的/統計的分析手法を選択し、調査設計を行います。必要があれば講義形式で方法論について学び、データ分析の実習も行います。そして、データを分析し、得られた結果から、企業成長のために何を提案できるかを考えます。論文の書き方も、この段階で学びます。