徳村優 さん

大阪市役所勤務 2013年度入学生 平野光俊ゼミ

はじめに

私が神戸大学MBAの受験を決意したのは研究計画書の提出期限の1ヶ月半前です。試験準備の期間としてはあまり余裕がありませんでしたが、無事合格することができたのは、ひとえに諸先輩方の「合格者の声」のおかげだと言っても過言ではありません。もし、受験を決意されたなら、「合格者の声」をすべて熟読し、多くの先輩が勧めている参考図書をご覧になることを強くお勧めします。私自身が「合格者の声」のおかげで無事合格することができましたので、今後受験される方に少しでも有益な情報をご提供できれば、との思いからこの体験記の執筆を引き受けた次第です。

受験のきっかけ

私は2000年に大学を卒業し、大阪市役所に就職しました。2012年8月に人事給与制度を企画する部署に異動になり、他の自治体や民間企業の先進的な人事制度を調べることになりました。他の組織の人事制度を調べるだけでなく、なぜそのような人事制度を導入しているのか掘り下げて調べていくうちに、「人事」というものが人的資源管理(HR)や組織行動(OB)という、経営学の学問領域の一部に基づき制度設計されていることを知りました。

法学部出身の公務員である私は経営学について学んだことがなく、それまで「経営」という言葉は縁遠い存在でした。しかし、大阪市役所は変革期にあり、あらゆる業務の見直しを進めているところです。そこで、都市の経営という観点から、人事に関連する領域だけでなく経営学を体系的に学びたいと思うようになりました。

ビジネススクールについて調べてみると神戸大学MBAの評判が良いことを知り、皆さんがご覧になっているこのホームページにたどり着いたのが2012年10月でした。仕事と学業の両立により、家族との時間が確実に減るのにもかかわらず、幸いにも家族の強い後押しを得ることができましたので、受験を決意しました。

研究計画書

試験準備のうち、研究計画書の作成に最も苦労しました。研究計画書の出来ばえが合否を大きく左右する、と言われます。職場での課題や問題意識に基づき研究計画書を作成しますが、大学で卒業論文を書く機会がなく、研究計画書も作成した経験がなかったので、ひとまず参考図書を読み、研究計画書の書き方を学ぶことにしました。

次に、研究計画の先行研究として『変革型ミドルの探求』を読みましたが、法学部出身の私には社会科学における学術的な研究方法が十分理解できませんでした。そこで、参考図書で仮説検証の方法を理解してから、研究の進め方を書きました。

重要なことは研究計画書の各項目で問われていることに的確に答えることです。余計なことを書いても根拠のないことを書いてもいけません。自分の取り組みたい研究について、その意義や実現可能性を自問自答しながら、提出締切りまで何度も推敲しました。

【参考図書】
  • 妹尾堅一郎『研究計画書の考え方』(ダイヤモンド社)
    研究計画書を書いたことがなければ、研究計画書のイメージをつかむことができます。
  • 金井壽宏『変革型ミドルの探求』(白桃書房)
    自分の研究計画の先行研究となる学術書を1冊は読み、社会科学の研究とはどのようなものか把握することをお勧めします。
  • 高根正昭『創造の方法学』(講談社現代新書)
    社会科学の研究に必要な方法論を学ぶことができます。この本がなければまともな研究計画書を書くことはできませんでした。

一次試験(英語)

まずは大学生協で3年分の過去問を取りよせ、本番と同じ時間で解きました。年度によって難易度が異なりますが、試験の傾向をつかむことができます。私が受けた年は簡単でしたが、過去問によっては1時間で解くのは難しい年がありました。

私は大学卒業後、英語を使う機会がありませんでしたが、2011年から自己啓発で1年間英語を勉強していました。そのため、特別な試験対策は行いませんでしたが、試験では経営に関する長文が出題されるため、通勤時間に経営学の英単語だけ覚えるようにしました。ある程度英語の読解力に自信のある方は、下記の参考図書よりドラッカーなど平易な単語で書かれた経営学の図書の方がお勧めです。

【参考図書】
  • グローバルタスクフォース『MBA速読英語』(大和書房)
    経営学の英単語を覚えるために利用しました。ただし、誤字が多いのが難点です。

一次試験(小論文)

英語と同様に、大学生協で3年分の過去問を取りよせ、出題の傾向をつかみました。試験には明確な答えがあるわけではなく、自身の掲げた結論に至るまでの論理展開力が問われていると思います。

私は大学入試以降、小論文を書く機会がなかったため、まずは小論文の書き方を復習しました。次に、日経ビジネスの過去1年分の特集記事を題材に自分でテーマを設定し、1時間で論理的に自分の意見を書く練習を繰り返しました。最近は文章を手で書く機会がないため、最初のうちは他の人が読める字で書くことができませんでした。採点者に読んでもらえるよう、丁寧な字で、かつ手早く書くことに慣れておく必要があります。

【参考図書】
  • 吉岡友治『社会人入試の小論文』(実務教育出版)
    小論文の書き方を復習するため利用しました。

二次試験(面接)

まずは「合格者の声」で過去にどのような質問がされているか把握しました。質問は研究計画書に基づいて行われますので、研究計画書の各項目に沿って聞かれそうな質問を事前に想定し、準備しておきました。私の場合は、研究テーマの概要を説明したのち、面接官から「研究の資源(情報源)を入手することできるのか」などの質問を受けました。私の場合はあまり多くの質問を受けませんでしたが、研究計画書の内容が十分でなく、研究の意義や実現可能性が乏しいと面接官に思われると、多くの鋭い質問を受けるようです。この点からも、研究計画書の内容は合否に大きく影響します。

最後に

入学してから半年が過ぎました。入学当初は仕事柄、人的資源管理や組織行動に関心が強かったのですが、テクノロジーやファイナンスなど、直接仕事に関連しない分野も学んでみると非常に興味深い分野であることに気づきます。仕事をしていると特定の専門性を高めることはできますが、経営全般について学ぶことは難しいです。神戸大学MBAでは、1年半という短期間で体系的かつ効率的に経営学を学ぶことができます。

また、神戸大学MBAの同級生は優秀な方ばかりで、教授からだけでなく他の学生からも学ぶことが多いです。1年半一緒に、苦しくも充実した時間を過ごすことで得られる人脈は、経営学の知識とともに一生の財産になります。

ただし、授業では大量の課題図書やレポート作成のため、日常生活は激変します。日々、事前課題の準備に追われます。そして、一つの科目が終わるとレポートや試験が課され、その準備にも追われます。レポートや試験はそれまでに習ったことを振り返り、習熟を深めることができる良い機会なのですが、次の科目の事前準備もする必要があります。さらにプロジェクト研究も並行して行わなければなりません。そのため、どうしても睡眠時間や家族との時間を削らざるを得ません。

しかし、投資(時間、労力、お金)を上回るだけの成果(考え方、知識、人脈)は十分得られます。実際に神戸大学MBAに通ってみて、その前評判の高さに納得しました。土曜日の授業が終わり、大学の高台から神戸の夜景を眺めるときの心地よい疲労感と満足感は何物にも代えがたいです。

最後に、このホームページをご覧になり、MBAに興味を持たれた方、関心が高まった方はぜひ挑戦してください。そして、受験準備をされる際にこの体験記が少しでもお役に立てれば幸いです。

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