鈴木 紀子 さん

塩野義製薬株式会社勤務 2015年度入学生 上林憲雄ゼミ

はじめに

実は私は、この「合格への道」の執筆のご指名を受け、いささか戸惑いを感じました。私は本学MBAを受験するにあたって、受験勉強らしい受験勉強をしていません。MBAに関する知識も十分には持たないまま、自分の問題意識を体系的に研究している学問分野があることを知り(それまではそのような学問分野が存在することすら知らなかったのです)、学んでみたいと強く思いました。そして、出願から一次試験、二次試験と、一つ一つ進めて、無事に合格することができました。実際に入学してみると、学ぶことは想像以上に楽しく、本当に受験してよかったと思っています。

そのような私の体験をご紹介することで、これからMBAを目指そうとしている方たちに少しでもお役に立てたら幸いです。

そもそものきっかけ

私が本学MBAを知るきっかけになったのは、同じ会社の本学MBAの先輩から、修士論文作成にあたってインタビューを依頼されたことです。私の所属する会社からはすでに何名も本学MBAを修了しているのですが、当時の私はそのこともよく知らないような状況でした。インタビューの際も、MBAってどんなこと勉強するの?どんなところ?など、逆にこちらからたくさん質問したように思います。

彼からは、本学MBAのHP、特に、彼のゼミの担当教授でいらっしゃった先生のサイトを教えられ、そこで初めて、「人的資源管理」「多様な人材のマネジメント」などという言葉や学問領域があることを知り、とてもワクワクした気持ちになったことを今でも覚えています。

私の中の問題意識

その頃の私は、研究所のマネージャーになって何年か経っており、研究者に対する評価制度や人材育成などに関して、様々な問題意識を抱えていました。現場で研究員として過ごした時間が長かったこともあってか、いつも上司からは、「現場目線だけではダメ、経営的な視点で物事を考えることも必要」と指導されていました。しかしそういわれても、専門の創薬研究に関しては大学でも入社後の職場においても継続して学ぶ機会がありましたが、マネジメントや人材育成、ましてや経営については学んだことがありません。そのようなときに、経営学には「人的資源管理」という学問分野があること、また、経営に関する知識を系統立てて学べる場が、社会人にも提供されていることを知りました。ここで学べば、私の問題意識を解決できるかもしれない。そんな理由で、MBAを受講することを、ちょっと本気で考えてみよう、と思いました。

受験を決めるまで

とはいっても、大学を卒業してからすでに30年近く経っています。体力や、集中力も、年々弱くなっていることを実感しており、仕事だけでも結構大変なのに、それに加えて大学院に行くなんて、やっていけるだろうかという不安は正直ありました。

私にMBAを知る機会を与えてくれた先輩からは、講義は梅田でもあるので負担が少ないことや、予習復習もかなりの分量があるけど文章を書くことに慣れているならそんなに心配しなくて大丈夫じゃないかな、など、いくつかアドバイスを貰いました。

受験科目は、英語と小論文。英語は辞書持ち込み可とあります。日ごろから英文を読む機会はあるので、辞書持ち込み可なら何とかなるかもしれない。来年の自分を取り巻く状況はどうなっているかわからないし、もし受けるのなら1年でも早く、今年受けたほうがよい。そう思うに至りました。

当時、業務の都合上、月に一度土曜日に開催される会議に出席する必要があったため、上司に相談したところ、その業務は何とでもすると励まされ、その言葉にも後押しされて受験に向かって気持ちを定めることができました。

出願、受験準備

それからは、一つ一つ、次の課題をクリアすることだけ考えるようにしました。先々のことまであれこれ考えると、くじけそうになってしまうので。

まず、出願に必要な書類を取り寄せること。過去の入試問題を取り寄せること。それらを一つずつこなすことで、少しずつ、受験することを実感できるようになっていったように思います。特に、出願に必要な研究計画書を作成する作業は、日ごろ職場で抱えていた問題意識があらためて明確になるとともに、また、それを解決するために学ぶのだという、自分の気持ちを確認するよい機会にもなりました。

受験勉強としては、先にも触れたように、過去の入試問題を実際の試験と同じ制限時間でやってみた、くらいの準備しかしていません。英語は、年によって難易度に大きな差があるように感じました。あとは、普段、自分で字を書く機会がほとんどないので、関係しそうな漢字を確認したくらいでしょうか。「雇用」とか「報酬」とか、ひらがなで書くのはちょっと恥ずかしいな、と。

今こうして振り返ってみると、私にとっては、MBAで勉強することに向けて自分の気持ちや周囲の環境を整えることが、最も重要な受験準備であったように思います。

受験当日

一次試験、二次試験とも、まず受験生のみなさんにお伝えしたいのは、「教室はとても寒い」ということです。六甲台キャンパスは下界より寒いですし、おそらく試験会場となる本館の建物は、底冷えがします。ダウンなどの上着を着たまま受験している人も少なくなかったように思います。

二次試験では、私は2時間以上待ち時間がありました。最初のうちは研究計画書などを見直しながら想定質問を考えて答えを用意していましたが、そのうち飽きてしまいました。一番後ろの席で順番に面接試験に出ていく人たちを眺めながら、こんな試験会場で試験を受けるなんて、何年ぶりだろう。ドキドキするようなこんな機会を持てただけでも、よかったなぁなどと思っていました。周りの人と話すこともなく、ふと気づくと、いつの間にか外は雪になっていたことを思い出します。

入学して

入学してみると、いろいろと想定外なことがたくさんありました。授業の大変さや面白さもありますが、何より予想以上だったのは、様々な職業・年齢の、個性豊かでエネルギーに溢れた同級生たちと出会えたことです。最初のうちは、文字通り講義とレポートに追われて駆け抜けるように過ぎていきましたが、テーマ研究が終わり春を迎えるころになると、全員が揃うような講義もなくなり、あと半年しかないという寂しさをしきりに感じます。

それと入れ替わりに、今はゼミにおいて、研究の面白さを実感しています。おそらくそれは、受験のきっかけとなった自分の強い問題意識について、第一線の先生方のご指導のもとで、目から鱗が落ちるような先行研究に出会いながら研究できることと、さらにそれを職場に持ち帰って、自分をここまで育ててくれた会社や、会社の人たちに返すことができる、そんな喜びも感じているのだと思います。

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